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グリム童話を読む配信。『いばら姫』〈6〉

ドイツ語の復習のために、グリム童話を原文で読み配信する試みをしています。

今は、ディズニー映画『眠れる森の美女』でおなじみの『いばら姫』を13回に分けて読んでいます。今回はその6回目です。

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朗らかに育ったお姫様は、15歳の誕生日を迎えました。まさにその日、王様も王妃様も誰もいない城の中を探索して回ったお姫様は、古い塔の上にある小さな部屋の扉を開けて、なかで錘で糸を紡いでいる老婆に出会ってしまいました。というのが、前回の配信の内容です。詳しくは、ひとつ前の記事にて。

それでは、『いばら姫』6回目の配信で読んだ部分を見ていきます。まずは原文を引用します。その下にある日本語は拙訳です。

◇ グリム兄弟の童話集|Dornröschen(6/13)

>>Guten Tag, du altes Mütterchen<<, sprach die Königstochter, >>was machst du da ?<<
>>Ich spinne<<, sagte die Alte und nickte mit dem Kopf.
>>Was ist das für ein Ding, das so lustig herumspringt ?<< fragte das Mädchen, nahm die Spindel und wollte auch spinnen. Kaum hatte sie aber die Spindel angerührt, so ging der Zauberspruch in Erfüllung, und sie stach sich damit den Finger.
In dem Augenblick aber, wo sie den stich empfand, fiel sie auf das Bett nieder, das dort stand, und lag in einem tiefen Schlaf. Und dieser Schlaf verbreitete sich über ganze Schloß.
「ごきげんよう。おばあさん」と、お姫様は老婆に声をかけました。「そこで何をしているの?」。老婆は「糸を紡いでいるのだよ」と言って、会釈しました。

「その、あちこちゆかいに跳ね回っているものは、いったい何のための道具?」と、お姫様は尋ね、自分でも錘(つむ)を手にとり紡いでみようとしました。けれど、それまで一度も錘に触れたことがありませんでしたから、あの宴の日にかけられた呪文のごとく、手にした錘でもって指を刺してしまいました。

指を刺す感覚がした瞬間、お姫様は部屋のベッドに倒れ込み、深い深い眠りに落ちました。そして、その眠りのふちは広がっていき、お城の隅々にまで行き渡りました。(意訳)

お姫様はついに落ちてしまいましたね。百年の眠りに…。

そうしてお城の時も止まったわけですが、物語のほうはようやく動き始めた感があります。その直前に、読み手のわれわれは、お姫様の肉声(?)に触れたわけですが、人見知りしない、天真爛漫な物言いだったのではないかと。女性というよりは、まだまだ子どもっぽさの残る女の子でしたが、はたして……。

◇ ◇ ◇

それでは、初めて知った単語、知っていても表現が気になる単語を見ていきます。

das Mütterchen|中性名詞
① Mutterの縮小形
②(縮んで小さくなった)老婆、おばあさん
nicken|動詞
①(肯定・合図・あいさつのために)うなずく、首を縦に振る
mit dem Kopf nicken うなずむ(会釈する)
②(座ったまま)こっくりこっくりする、居眠りする
herumspringen|動詞
① あちこち跳ね回る
② 〈mit jm.〉(…を)こき使う
anrühren|動詞
①〈jn./et.〉(…にちょっと)触れる、(…に)手をつける
②〈jn.〉(…を)感動させる、感銘を与える
③ かき混ぜる、混ぜ合わせる
der Zauberspruch|男性名詞
呪文
die Erfüllung|女性名詞
[ふつう単数で]〈sich〉erfüllenすること
in Erfüllung gehen (願望などが)満たされる、実現する
erfüllen|動詞
① a.満たす、いっぱいにする、埋め尽くす b.(想念・感情が〜の)心を占める、心をいっぱいにする
② (義務・任務などを)果たす、(要求・願いなどを)満たす、叶える、実現させる
empfinden|動詞
(肉体的・精神的に)感じる、知覚(意識)する
hinfallen|動詞
① 倒れる、転倒する
② vor jm.(〜の前に)ひざまずく、さっとひれ伏す
③ 思いつく
niederfallen|動詞
落下する、倒れる
auf die Knie niederfallen ひざまずく
verbreiten|動詞
(世間に)広める、広く伝わる、流布させる、普及させる、(文書などを)配布する、伝播させる、(恐怖などを)まき散らす、(熱・においなどを)放射する
sich über et. verbreiten (…を)広くおおう

◇ ◇ ◇

ところで、今回読んだ部分を訳していて、気がついたのですが、主人公のお姫様の人称代名詞(三人称単数女性)が、sie(ジィー)に変わりました。前回までは、中性の es(エス)だったのですが……。

これはどういうことかというと、たとえば英語ですと、少女(Girl)の人称代名詞は she(女性)ですよね。it(中性)ではなく。ですが、ドイツ語の場合は、少女(Mädchen|メートヒェン)は中性名詞、ゆえに定冠詞は中性の das(ダス)なので、人称代名詞も中性の es になります。

前回読んだ部分の、面白がってお城の中をあちこち歩き回っていたときや、狭い螺旋階段を上がっていったときや、鍵穴にささったままの錆びた鍵を回して扉を開けたときまでは、お姫様の人称代名詞は、中性の es でした。ところが、今回読んだ部分で、扉の先の部屋に入り錘(つむ)を手にしたとたん、お姫様を指す代名詞は、女性の sie に変わったのです。

ここで改めて、錘(つむ)の単語をみてみましょう。ちなみに、3回目の配信で読んだ部分に出てきたので、そこで一度、確認しました。

Spindel|女性名詞
a.(手紡ぎ用の)つむ、糸巻き棒、紡錘、スピンドル、ボビン
b.(象徴的に)女性

錘(Spindel)は、女性を象徴する言葉として使われるようです。

錘(つむ)を手にするどころか、存在すら知らなかったときのお姫様は、少女(中性)なのですが、錘のある部屋に入ってそれに触れたことで、若い娘(女性)に成長したということでしょうかね。つまり、深い眠りに落ちる前にもう、子どもではなくなっていたと。うーむ、なるほど……。

今回もよい復習になりました。来週も頑張ります。

*参考*
アプリ版『独和大辞典 第2版』(小学館)
池田香代子訳『完訳クラシック グリム童話』(講談社)

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