見出し画像

グリム童話を読む配信。『いばら姫』〈5〉

ドイツ語の復習のために、グリム童話を原文で読み配信する試みをしています。

今は、ディズニー映画『眠れる森の美女』でおなじみの『いばら姫』を13回に分けて読んでいます。今回はその5回目です。

画像1

「15歳になったら錘(つむ)に刺さって命を落とす」と、呪いの言葉をかけられたお姫様でしたが、(聡明で不思議な力のある)12人目の女の機転により、死ではなく「百年もの深い眠りに落ちる」と言い換えてもらえました。また父の王様が、領地にある錘をすべて焼き払ってくれたので、ひとまず安心といったところ、というのが、前回の配信の内容です。詳しくは、ひとつ前の記事にて。

それでは、『いばら姫』5回目の配信で読んだ部分を見ていきます。まずは原文を引用します。その下にある日本語は拙訳です。

◇ グリム兄弟の童話集|Dornröschen(5/13)

An dem Tag, an dem es gerade fünfzehn Jahre alt wurde, waren der König und die Königin nicht zu Hause, und das Mädchen blieb ganz allein im Schloß zurück. Da ging es allerorten herum, besah Stuben und Kammern, wie es Lust hatte, und kam endlich auch an einen alten Turm. Es stieg die enge Wendeltreppe hinauf und gelangte zu einer kleinen Tür. In dem Schloß steckte ein verrosteter Schlüssel. Als es ihn umdrehte, sprang die Tür auf, und da saß einem kleinen Stübchen eine alte Frau mit einer Spindel und spann emsig ihren Flachs.
お姫様が15歳を迎えた、まさにその日、王様と王妃様は留守にしており、お姫様はたった一人、お城に残されていました。そこでお姫様は、面白がってあちこち歩いては、お城の中の部屋という部屋を見て回りましたが、そうするうちに、やがて古い塔にもやってきました。狭い螺旋階段があったので、上がっていくと、小さな扉に行き着きました。扉には、鍵穴に錆びた鍵が一つ、ささったままになっていました。お姫様がその鍵を回すと、扉は勢いよく開きました。扉の向こうの小さな部屋には、老婆が一人座っており、錘(つむ)を手にして、せっせと亜麻の糸を紡いでいるところでした。(意訳)

気がかりだった15歳の誕生日に、父も母も、娘を一人残すなんて、安心しきっている証し。ああ、それなのに。城の中に錘が一つ残っていたとは……。灯台下暗しとは、まさにこのことですね。

◇ ◇ ◇

それでは、初めて知った単語、知っていても表現が気になる単語を見ていきます。

zurückbleiben |動詞
[ここでの意味]あとに残る、居残る、あとに残される、置き去りにされる、(痕跡などが)あとに残る
allerorten|副詞
いたるところで(に)
herumgehen|動詞
[ここでの意味]あちこち歩き回る、〈転じて〉散歩する
besehen|動詞
[ここでの意味](注意深く)見る、見入る、調査する、吟味する
die Stube|女性名詞
① 部屋〈この意味では一般的にZimmerを用いる〉
② (兵営・学生寮のような居間兼寝室の)共同個室
das Stübchen die Stubeの縮小形
das Kammer|中性名詞
[ここでの意味](暖房設備などのない比較的小さな)部屋、納戸、物置部屋、貯蔵室
die Wendeltreppe|女性名詞
螺旋階段
gelangen|動詞
[ここでの意味]〈方向を示す語句と〉(〜に)達する、行き着く、到達する、届く
verrosten|動詞
錆びる、錆がつく、錆びて使い物にならなくなる
spinnen|動詞
[ここでの意味](糸を)紡ぐ、紡いで糸にする、紡績する
emsig|形容詞
(仕事などに)せっせと励む、熱心な、営々たる、たゆまぬ
der Flachs|男性名詞
[ここでの意味]a.(植物の)亜麻 b.亜麻の繊維

◇ ◇ ◇

ところで、原文と拙訳の太字にした部分ですが、はじめ素読みしたときは、意味がよく分かりませんでした……。

「錆びた鍵が城(の中)に突っ込まれている??(転じて、隠されている??)」

だけど、それでは意味が通らないので、steckten(シュテッケン)という動詞を辞典で確かめたら、例として下の一文が載っていました。それで、ああそうか!と。

steckten|動詞
[ここでの意味]ささっている、はまっている
Der Schlüssel steckt im Schloß. 鍵は(鍵穴に)さした〈突っ込んだ〉ままである.

念のため、Schloß(シュロス)という単語も確かめてみましょう。

das Schloß|中性名詞
①(とくに王侯貴族の)宮殿、王宮、城館、(りっぱな)邸宅
② a.錠、錠前 b.留め金、スナップ、バックル
③(貝殻の)蝶番

そうそう、そうでした。笑。

閉じるとか、閉めるという意味の動詞、schließen(シュリーセン)の過去形がschloß(シュロス)ですから、「閉じた状態にするもの」として、錠や錠前の意味の名詞が、Schloß(シュロス)というのは、然もありなん。

それでは、ちなみに、schließenも……。

schließen|動詞
[ここでの意味](戸などを)閉じる、しめる、ふたをする、封をする、鍵をかける、錠をおろす、(服などの)ボタンをはめる
schloß schließenの過去形

はい。これで、すっきり。笑
今回もよい復習になりました。来週も頑張ろう。

*参考*
アプリ版『独和大辞典 第2版』(小学館)
池田香代子訳『完訳クラシック グリム童話』(講談社)

◆ stand.fm グリム童話を読んでみるラジオ

◆ Instagram QULICO|寓天堂 guten.doo


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?