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東京上京物語 第一話

東京に来てまだ1ヵ月
転職が決まったのでその関連書を買おうと
携帯で本屋を調べる
スタイリッシュで有名なチェーンの本屋が
ここから歩いて10分にある

夕方の5時もすぎ、お腹が減る
パワーと歩く気力を失いつつも
目的の場所へと赴く

二階建てのガラス張り
確か京都にこんなお店が多くあるなぁと
改めて品の良さを感じる

10月の寒い夕方に
わざわざテラスで仕事や本を読む人がいて
風邪をひかないのかなど他人の心配をしている

大きな自動ドアをくぐり 
アルコールを3プッシュする
奥行きがあり自分の目的の本を探すのには
時間がかかりそうなため
真っ先に検索機を探す

キーワードに関連語を入れるが
店内に在庫はほとんどないみたいだ。

仕事が福祉関係だもんで
そりゃぁこんなスタイリッシュな図書館に
置いているわけもないかと
うすうす分かっていたのにやっぱりか感が
否めずに少しへこむ

せっかくお腹を減らせてまで来た本屋だし
一周して帰るか

本屋の奥には雑誌や語学図書、あとは自己啓発やビジネス本
ありきたりすぎて
適当に本を手にとってはパラーっとみて飽きて戻す

1階はすぐおわった
2階にいこう

エスカレーターですれ違う人までもが
スタイリッシュだ
足の長いイケメンなサラリーマンが
スーツを着こなしてまっすぐ前をみている

雰囲気が出来上がってるなぁと感じつつ2階へ向かう
そこには洋書コーナーが
実は海外の人が新書を買っているところをあまり目にしたことがない
本当に本を読む人は
図書館の本か中古の本を読んでいる気がするのだ
それがゆえに3500円もする英文の小説を買う気になんかならなかった

おっ

それ以上に気になったのが
2階奥のギャラリーと一緒になったアート関連図書
まるで美術館に来た感覚になる

こういうの嫌いじゃない

写真家による写真集やアート文学がたくさんあって
1ヵ所1ヵ所念入りに見ていく
芸術作品を見る時の感覚で

osakaと書かれた白黒写真集を見つけてしまった
中を開けると、渋い

戦後から2007年くらいまでの大阪の写真がのっている
時代をよく記録している美しい写真集だったもので
これは一目ぼれしたと
財布にある3000円チョッキを確認した。

さすが東京…と感じながらゆっくりギャラリーを回る

何気なく見上げたその瞬間だった

155センチ位のスタイルの良い女性が
ドイツのアーティスト作品集に見入っている
大きめのSONYのヘッドホンを付けた彼女
何を聞いているのかまでも気になってしまう

その横顔といい、肌のきめ細かさといい
私は目を離すことができなかった。

しばらく時が止まったかのように彼女に見入ってしまう

彼女はカバンから財布を出すと
その中を確認し
何もなかったかのように
細長い指で丁寧に作品集を元に戻す

胸の鼓動をどうにか抑えながら冷静に次のアクションを考える

…今勇気を出さないと二度と会えない

彼女がその場から去った後
すぐさま同じ本を取って
自分の持っていた写真集をその場に戻した

2800円になります
…お釣りになります
ありがとうございました。

私はよく知らないドイツのアート作品集を持ったまま
サラサラ黒髪ロングの彼女を追った



東京上京物語
第一話

途中サラメシみたいになってしまって
あと心の声を書く時って
自然と韓国ドラマを思い浮かべてしまう
チャンガ…
って言いそうになる
それくらい心の声って正直なんだから
心の声を聞けるアプリとか作ったら
世界の秩序が大変なことになりそう(笑)
案外トランプとかいい人だったりして。

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