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カメがミイラになっていた

私が小学校低学年の頃、家で カメを飼っていた。
いつ、どうやって 飼い始めたかは覚えていない。

覚えているのは そのカメは小さくて可愛かったことと、
死に様が悲惨だったことだ。

カメの名前は ミニラ 当時の記憶をたどると おそらく5センチくらいの イシガメだ。

目が黒々していて エサを食べるときに ゆっくりエサの方を向いて パクっと口を開ける姿が可愛かった。

30年以上前の話、 インターネットなんて 存在も知らない 
そうかといって うちの家族は カメの飼育を本で調べようなんて人はおらず、 カメは水と石とエサがあれば 問題ないと思っていた。

ミニラの世話は 主に母と私の役割だった。
エサをやり 水槽の苔をおとし ミニラの甲羅を 歯ブラシで洗ってやった。
ひっくり返して 腹?のあたりを歯ブラシで洗うと 首を後ろにそり返して
手足をバタバタさせた。

「喜んでる。喜んでる」 と母は嬉しそうに言った。
(今思い返すと 嫌がっていたのかもしれない) 

ミニラがどのくらいの期間生きたか覚えていない

1~2年生きた気もするが、 数か月っだったのかもしれない。

しかし 忘れもしないのが 死に様だ。

冬か近づいてきた頃、 ミニラの動きが鈍くなっていった。

殆ど動かず、エサも食べない日が続いた。
どうなっちゃったんだ、と母と話していると

ミニラに無関心だと思っていた父が急に

「これは冬眠だ!」と 宣言してきた。

「冬眠だから、触っちゃいかん。暗いところに置いておくんだ。わかったな。動かすのは一番ダメなんだ。」

と 謎の知ったかぶりを披露し、私と母にミニラを触るなと指示してきた。
(おそらく父のひらめきか思いつきで根拠はなかったはず。)

カメの飼育に詳しいものもおらず 本で調べるなんて 思考にたどり着くこともなく
父の言われるがまま そういうものなんだと思い込んだ。

さっそく ミニラの水槽に新聞紙をかけ 玄関の上がり框の下に置いた。

エサも 水もあげなくていい と父に言われ 冬眠ってそういうものなのか…。と思った。

新聞紙の下で、冬眠中のミニラをみると 顔を甲羅にしまい、動かないままだった。

不安になり 父に内緒で 時々こっそり 水をいれた。 さすがに水が全くないと死ぬだろうと思ったからだ。

冬が過ぎ 春が来ても ミニラは動かない。

「お父さん 本当にミニラ大丈夫なの? 死んでないよね?」

この頃になると 私は不安で父を責めるように聞いた。

その度父は 「大丈夫だよ。カメってのは こういうもんだ。」と返してきた
今思うと 父も後に引けなくなってしまったのかもしれない。

春がすぎて 夏目前。

これは さすがに おかしいということになり 母と相談して

ミニラを冬眠から起こす ことになった。

生きていると信じたいが 心の底ではだめかもしれない気がしていた。

怖すぎて 水槽開封の儀は 母に頼んだ。 
私は母の背中の後ろから ミニラの無事を祈った。

母が水槽からミニラを取り出す瞬間  
私は目をぎゅっとつむった。

「うわぁーーー!! ミイラになってる!!」

母親の絶叫 で 血の気が引いた。

薄目をあけて ミニラをみると 甲羅からでた手が干からびていた。

ショックと悲しさと 罪悪感 と 申し訳なさで 泣いた。

 泣いたが 父を責める気力はなかった。

責めたら 父もかわいそうな気がしたのだ。 父も悪気はなかった。
父もショックなはず。。。

子供なりに折り合いを つけようとしていると

「あんたー!!冬眠してるって言ってたが ミイラになっとったよ!」

と どでかい声で 父を責め立てる母だった。

生き物を飼うときは 最低限 飼い方を調べてから買うべきだ。
 
本当に申し訳ないことをした。

本当にひどすぎるよな


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