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ぐん税ニュースレター vol.36 page01 -ご挨拶-

 8月に入り、ひときわ厳しい日差しが照りつけておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

 今年は、猛暑が続き記録的な暑さというだけでは言葉足らずとばかりに災害級の暑さという表現が目につきます。さらに世界は観測史上記録的な暑さだそうです。
天気予報ではこの厳しい暑さは10月まで続くとのことですが、どうでしょうか?

 さて、先日、税理士としての初体験を済ましてきました。関東信越国税局の国税不服審判所に行ってきて、審判官と面談をしてきたのです。国税不服審判所についてここで簡単にご紹介したいと思います。
 日本では申告納税制度を採用しており、申告書を基に税金を計算し自ら納税するのが原則です。税務署は申告書が適正に作成されているかどうかについての調査をする権限を持っており、法人の場合3年から5年のサイクルで税務調査があるのは周知の通りです。
 税務調査の結果、単純な計算ミスだとか、故意に所得を低くする処理をしている場合には、税務署は申告書を修正して、提出するように勧奨します。Weblio辞書によると勧奨とは、そのことをするようすすめ励ますこと。「貯蓄を勧奨する」「退職勧奨」という意味だそうです。勧奨に応じて修正申告をして、加算税等を含めて納税するというのが通常です。しかし、処理についての解釈が税務署と納税者で異なる場合があります。納税者が税務署の指摘した内容について納得がいかない場合には修正申告をする必要はありません。そのまま議論が平行線となると税務署長は職権で更正処分をして税務署の解釈の通りに納税を命じることができます。その処分に不服な納税者は、更正処分の通りに納税をした上で、国税不服審判所に審査を請求することができ、国税不服審判所では処分の内容について3人の審判官による審理を行います。結論は判決でなく裁決と呼びますが、それで処分を取り消すか請求を棄却するかが決定されます。もしもこの裁決に不満であれば、裁判所に行って税務裁判を行うこともできます。
国税不服審判所のHPによると審査請求の状況は次の通りです。

(注)表の税目以外の審査請求を含む。

審査請求の処理状況は次の通りです。

認容というのが納税者の勝訴ですが、大体1割前後ということで勝率はかなり低いと言えます。

私の所属する関東信越国税局の統計データでは次の通りです。

(注)表の税目以外の審査請求を含む。

 319件中123件が納税者勝訴なので、38.3%です。全国が上表にあるように13%ですから、関東信越国税局はこの年は敗訴が多かったということですね。これは年によって上下しますので、いつも勝率が高いわけではないです。関東信越国税局の平成30年度は317件中8件と勝率2.5%の狭き門でした。
 毎年、300件前後の審査請求が納税者から起こされているのですが、高崎税務署の税務署員から聞いた話ですが高崎税務署で審査請求は1年に1件前後しかないとのことです。関東信越国税局で年に300件ある審査請求のうち高崎税務署管内が1件ってあまりに少ないと思いました。税務署と折り合いをつける税理士が多いのかもしれません。また、高崎税務署管内の税理士は約300人いますが、大部分の税理士が審査請求をしたことがないであろうと想像がつきます。かくいう私も、今回が初めてでした。

 審判官等による調査・審理はほとんどが書面によるものです。審査請求を出すと処分を行った税務署から答弁書というのが不服審判所に送られてきます。その中には更正通知書とかのコピーや更正処分の理由などが書かれています。それに対して納税者(税理士)は反論書を不服審判所に提出します。両者の言い分を書面上で検討したり、直接関係者に面談したりして、3人の審判官が合議で議決をとり、最終的に不服審判所長が裁決を出します。

 この話を東京の大規模税理士法人の代表と話をしました。国税の審理出身の税理士が4人も顧問にいるそうですが、彼らが言うには審査請求をすると時間も費用もかかるので、そうならないように未然に防いだ方が効率的だということでした。どのように未然に防ぐのかを聞いたところ、税務調査時や申告書の提出時に説明をきちんとしておくことで税務署からあらぬ誤解をかけられないようにするようなことを言っていました。でも、中には変わった税務調査員もいるから、そういう人に当たってしまって納得のいかない修正勧奨をされたり、更正処分を受けた場合にはどうするのと質問したら、関東信越国税局はヤバいからね、と笑っていました。噂話レベルですが関東信越国税局は少し変わった税務判断をするということで有名??なようです。
 また、一方で税務署と争えば争うほど、税務当局に対するけん制が効いて日本の税務行政は良くなるので、積極的に不服審判を請求しましょうというポリシーの弁護士さんもいます。どちらの考えも一長一短があると思いますが、納得のいかない税務調査には租税正義の実現のために断固として戦いたいと思います。
 もしも税務調査で納得のいかないことがありましたら、弊社までご相談ください。

ぐんま税理士法人
代表社員 小林浩一


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