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はじめに

私は良い妻ではなかった。良いパートナーでもなかった。
家事はできないし、お金も稼げないろくでもない存在だった。
結婚生活は思っていたより大変で、我慢も多かった。私は感情的で飽き性だし、これが最初で最後の結婚生活になるとは自分でも思っていなかったけれど、まさか夫が本当は女に生まれたかったという理由で結婚生活が終わるとは思ってもいなかった。

私はこの出来事が起こる前からトランスジェンダリズムには懐疑的だった。
いくら性器を切り落とそうが、ホルモン治療をしようが、性別は変えられない。それが元からの自分の思想であり、事実だと信じている。けれど、正直自分とは関係ない思想だし、その人が生きたいようにすればいいと思っていた。私が日本を離れてから数年経つと、元男子や元女子などの言葉が出現し始め、「性自認」に寛容になろうという動きが日本国内でも高まり始めたと思う。そのころ私はイギリスの田舎に住んでいたこともあって、世間の喧騒とは物理的にも離れていた。しかし、女性を自認する男性が女子スポーツに出場したり、女性のスペースを使い始めるなどの出来事が世間で騒がれ始め、しまいには女として生まれた生物学的根拠まで否定され、私もようやく目が覚めた。これは文化なんて甘ったるいものじゃない。女という性の乗っ取りであり、虐待だ。

日本で女性になった夫を支える妻、子どもで構成されたファミリーにまつわるドキュメンタリーが放送されていると知り、内容は見なくてもだいたい見当がついていたけれど、見てもいないのに決めつけるのはよくないと意地で視聴した。化粧をして女性用の服を着る夫に戸惑いながらも共同生活を続ける妻と子どもは、大半のひとにとっては美しいファミリーに映るのだろうか?個人的体験を切り離して考えても、私はそうは思わなかった。家事や育児は性自認に変化がある前から奥さんが担当しているようだったし、この人にとっての女は女っぽく着飾ることとしか思えなかった。

近年では大企業はプライド月間中にロゴをレインボーに変え、「性的マイノリティに理解を示すことは知的」というイデオロギーが確立している。性的マイノリティに懐疑的な発言などしたら、社会的制裁をうける。だからこそ、女性限定の身体的・精神的スペースにトランスジェンダー女性が侵入しても、犯罪を犯しても大きなニュースにはならない期間があった。

私は元夫からカムアウトされたとき、理解を示そうと思った。
性別が変わっても私を愛していると言ってくれたし、性別なんてどうってことないと思っていた。しかし、彼が必死に女性風のメイクをし、着飾り、私の言動の真似をし始め、しまいには子宮もないのに生理がきた、女になったから料理も掃除も好きになったと主張する狂った行動言動を目の当たりにして、私は目が覚めた。この人が欲しいのは女という性ではなく、うまくいかない人生をやり直すきっかけであり、男であるがために手に入らなかった「女の特権」だ。彼の乗っ取り行為はもちろん気味が悪かったが、何より私を怒らせたのは女になったら何もかも上手くいく、言い訳ができると思っている彼の思想だった。男として生まれたのに、女として生まれること、生きることの何が分かるのか。
彼は超えてはいけないラインを超えたと感じた。
これ以上、侮辱されるのは限界だと思った。

もしも夫に女になりたいと言われたら、受け入れるしかないのか?受け入れることができなければ、自分には知性がないのか?理解が足りないのか?そう思わせる今のメディアの伝え方は間違っている。本来の女性をシス女性と名称を変え、文化的な価値観で現実問題を誤魔化そうとしている狂った活動の目的は女性の定義を変え、女性たちの尊厳をなくし、女性の身体的・精神的居場所を占領することであって、多様性なんかではない。多様性を目指すのであれば、何故女性のスペースに入りたがるのか?トランス女性では女として実感できないのか?私はこの真実に気づくのに時間がかかったし、元夫がトランスジェンダー女性と言い出さなければ、死ぬまで気付けなかったかもしれない。JKローリング氏が言ったように、真実を伝えることはヘイトではないし、彼女のような影響力のある女性が声をあげなければ、差別者のレッテルを貼られることを恐れて沈黙を選ぶ女性も多かったと思う。

もしも私と似たような経験をしても、ひとりで悩まないでほしい。
己の尊厳や価値観を犠牲にしてまで、他人の人生に付き合う必要はない。
私は昔から協調性がなく、浮いている存在だったので、大半のひとが気にしないことにも人一倍の怒りを感じてきた。日本を離れて、自分の考えが異端ではないとわかってから自尊心が回復し、それまで怒りや悲しみで言葉が出てこない状態だったけれど、トランスジェンダリズムやフェミニズムに関する話題もだいぶ理性的に考えられるようになってきた。

一山越えたからといって偉そうなことは言えないが、あなたの感じているもやもやはきっと多くの女性が共有できるもので、ひとりじゃないということを伝えたく、noteを始める。

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