マガジンのカバー画像

思想(哲学と宗教)

187
価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
運営しているクリエイター

#ギリシア哲学

なぜ哲学を勉強しているのですか?

■他者:なぜ哲学を勉強しているのですか? ■自分:自分は、どう生きるべきか、どう生きるべきでないか?根本的に考えた上で生きたい=行動したいからです。 ■他者:その答えは出たのですか?あるいは出そうですか? ■自分:出ました。 ■他者:答えは? ■自分:「答えはありません」というのが答えです。 ■他者:それでは、哲学の勉強は無駄でしたね。 ■自分:無駄ではありません。「答えはありません」という答えが出たので、とてもスッキリしています。 ■自分:もうちょっと詳しく

『形而上学』アリストテレス著 書評

<概要>世界の原理とそのありようをどのような形で理解すればよいか、アリストテレスがプラトン含めた過去の説とその課題も紹介した上で自説を展開。 【上巻】世界の構成要素(質料&形相)とその動的姿(生成と消滅&可能態→現実態)について解説。 【下巻】「神学論(第十二巻)」が主要課題。これに加え「天体の運行」「数」「イデア」などの諸概念に関する、アリストテレスの存在論(目的論に基づく存在論)との関係性などの関しての解説。 <コメント>アリストテレスのもっとも重要な著作と言われて

「政治学」 アリストテレス著 読了

<概要>古代ギリシア時代のあらゆる国制(外国含む)を調査し、分類し、強みと弱みを明確にしたうえで、現実的な「善い国制とは何か」を探ったアリストテレスの代表的古典。 <コメント>いくつかある翻訳書のうち「本書が一番読みやすい」とどこかで聞きつつ残念ながら図書館にもないし電子版もないので、紀伊國屋ウェブストアで4,620円払って購入→読了。 読み終わった最初の感想は、先に読んだ『二コマコス倫理学』同様、アリストテレスの律義な性格がよく出ていて面白いなということ。芸術家肌の師匠

アリストテレスの愛「フィリア」とは?

アリストテレス著「ニコマコス倫理学」では「フィリア」という概念に多くのページを割いています。 ニコマコス倫理学は、よくよく吟味すると、 ①個人としての善→幸福を紹介してのち ②その幸福の実現のための能力(アレテー)について解説し ③これを実践するための前提となる「意志の強さ」を取り上げ ④意志と実践の結果としての快楽と幸福の関係について論じ ⑤そのうえで他者との間に生じるフィリアについて解説した上で ⑥最終的な幸福論を展開する そして倫理学は政治学に繋がっていく、という

アリストテレス「ニコマコス倫理学」を読む:菅豊彦著 書評

<概要> アリストテレスの講義録を息子のニコマコスが編集した「ニコマコス倫理学」の内容をソクラテス・プラトンから続く古代ギリシア哲学の流れの中に位置づけた上で、その詳細について哲学に馴染んでいない人にも分かりやすく解説した著作。 <コメント> 「ニコマコス倫理学」通読後に、その理解の一助として読ませていただきましたが、非常に分かりやすく、かつ内容も整理されているので原典を読むのが億劫な方は本書の通読をお勧めします(時間のある方は原典にトライすべきですが)。 以下ニコマコス

アリストテレスの幸福論「ニコマコス倫理学(下)」 書評

<ニコマコス倫理学(下巻)の概要>幸福(エウダイモニア)に至るための知的なアレテーの解説含めた人柄のアレテーとの関係、そして社会的動物としての人間関係のあり方としての友愛(フィリア)と、人間の欲望を制御するための意志の持ち方をを踏まえたうえで「幸福とはどのような状態を指すのか?」を提示した著作。 <ニコマコス倫理学に関するコメント>下巻に至り、はじめてアリストテレスの著作を通読しましたが、講義録という性格上か、はたまた息子さんの二コマコスが講義録を編集した影響かは不明ですが

アリストテレスの幸福論「二コマコス倫理学(上) 書評

<概要>幸福(エウダイモニア)とは何か、より深く理解することで善き人になり、この結果として幸福になるためのアリストテレスによる指南書。このうち上巻は、幸福とは何か?性格の良さとは何か?正義とは何か?について。 <コメント>プラトン著作は、ほぼ終えたので、今後はアリストテレスに移行。今後本書に加え「形而上学」「政治学」を通読予定。 プラトン著作は、読み物そのものとしての面白さがあるので、飽きずに長時間読むことが可能ですが、アリストテレスの本著作は、読者向けではなく「自分の講

「哲学の誕生ーソクラテスとは何者か」納富信留著 書評

<概要> ソクラテスの生きた時代は、ソクラテス・プラトンだけが突出していたのではなく、同時代に生きる思想家たちの大きな潮流の一環としての位置付けとして再認識すべきとして紹介しつつ、後代における主にソクラテス思想の受容の仕方を紹介した著作。 <コメント> 中盤は考証学みたいで「史実的・文言的に何が正しくて何が誤っているかの検証」は、専門家に任せておけばいい内容で、我々のような素人にとっては正直言ってあまり面白くないのではと思いますが、「無知の知」など、終盤の日本における誤った

プラトン解釈の類型 西研著「哲学は対話する」

プラトン勉強にあたって、西研最新の大作「哲学は対話する」通読中。 西研哲学は、竹田青嗣哲学と近いので「哲学的思考」はじめ、何冊か過去に読んでいます。本書は2019年に出版された最新作で結構なボリュームの大作です。いずれ全体も展開したいと思いますが、まずはプラトン関連について。 本書の第1部で、哲学対話の先例としてソクラテス・プラトンを紹介。プラトン著作は、対話による著作がメインなので、ルーツオブ哲学対話たるプラトンの思想「魂の世話」について扱っています。 その前に著者の

「国家(下)」プラトン著 ー民主制が独裁を生むー

<民主制が僭主独裁制を生むという政治思想> 「国家」は、やはり政治思想が中心テーマ。第八巻で論じられています。 最も理想的な政治体制は、本質を見極める力を持つ卓越者=哲人による独裁政治(最善者支配制)。そして民主制は、もう一つの独裁=僭主独裁制を生む土壌になる、と評価は高くありません。プラトンいわく僭主独裁制は「国家の病として最たるもの」。 独裁者が生まれるときはいつも、そういう民衆指導者を根として芽生えてくるのであって、ほかのところからではないのだ 「そういう民衆指導

「プラトン入門」竹田青嗣著 イデア論について

今回は、イデア論についてです。イデア論はわかりにくいのですが、以下整理してみました。 ■著者によるイデアの定義 イデアとは「本質」のこと。「言葉の本質」を事例にフッサールを引用し ある言葉の本質とは、その概念を定義するような何らかの「実体的」な意味内容ではなくて、むしろ、その言葉によって人々が世界を呼び分けて秩序を作り出している、その仕方だと考えるのがいい(157頁)。 そして、 プラトンが「善のイデア」という概念で差し当たり示しているのは「何が事物の根本原因か」とい

「プラトン入門」竹田青嗣著 ープラトニズムー

<概要> 著者の考えるプラトン思想の本質を、アリストテレス、カント、ヘーゲル、ニーチェ、ハイデガーから現代思想に至る、あらゆる哲学を引用しつつ著者独自の解釈を展開した著作。 <コメント> だいぶ前に読んでいたのですが、プラトン主要著作の通読に至り、改めて著者竹田青嗣によるプラトン解説読みましたが、やはり、その理解の「深さ」と時代をクロスオーバーしつつ引用される哲学者や古今東西の作家(ドストエフスキーなど)の引用と解釈に基づく理解の「広さ」は、驚嘆せざるを得ません。 「単純

「プラトン 理想国の現在」納富信留著 書評

<概要> プラトン著「国家(ポリティア)」というタイトルは正確には「理想国」の意だとし、プラトンの唱える理想国家論が歴史上、内外でどのように受容されてきたのか、そしてその本意は何か、現代に生きる我々にとって、どのように受容すれば良いのか解説・紹介した著作。 <コメント> プラトン専門家の著者、納富信留さんの翻訳したプラトン著作を数冊読んでいたのに加えて、納富さんが1965年生まれで私と同世代なので感性的にも近いのではないかと思い、今回3,080円出して購入して読んでみました

鏡のなかのギリシア哲学 小坂国継著 書評

<概要> ギリシア哲学をタレスなどのソクラテス以前の哲学から、プラトン、アリストテレスを経て、ストア派から新プラトン主義のプロティノスに至るギリシア哲学を西田幾太郎的・東洋的視点から俯瞰した著作。 <コメント> 西田幾太郎研究の第一人者、小坂国継先生によるギリシア哲学概観。オープンカレッジでも小坂先生の講義を受講しているのでギリシア哲学勉強の一環として読んでみました。 ギリシア哲学といえば、ソクラテス・プラトン・アリストテレスになりますが、ソクラテス除く2名に加え、ストア