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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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#キリスト教

なぜ哲学を勉強しているのですか?

■他者:なぜ哲学を勉強しているのですか? ■自分:自分は、どう生きるべきか、どう生きるべきでないか?根本的に考えた上で生きたい=行動したいからです。 ■他者:その答えは出たのですか?あるいは出そうですか? ■自分:出ました。 ■他者:答えは? ■自分:「答えはありません」というのが答えです。 ■他者:それでは、哲学の勉強は無駄でしたね。 ■自分:無駄ではありません。「答えはありません」という答えが出たので、とてもスッキリしています。 ■自分:もうちょっと詳しく

ユダヤの風土:ユダヤ人の故郷はエルサレムではない『物語としての旧約聖書』月本昭男著 読了

<概要> 膨大な量の旧約聖書を、現代考古学の成果や周辺文明(アッシリアやエジプトなど)の歴史もふまえながら、物語風にわかりやすく解説・解釈した著作。 <コメント> 本書は、池袋にある「古代オリエント博物館」の館長で楔形文字解読を主とした考古学から聖書学、宗教学まで広範な分野を専門にしている博学な著者「月本昭男」の著作。 月本がNHKラジオでの講義内容をベースに書き下ろした今年2024年1月出版という最新の著作です。 したがってこれまでの各種専門家による最新の研究成果も織

小学生に「キリスト教って何?」と聞かれて

今、小中学生を対象にした放課後教育みたいなもののボランティアをやってます。 学童保育みたいな感じで、学校が終わった後、ある場所に来てもらってボランティアがマンツーマンで小中学生の宿題や学力ごとの特定の教科書みたいなものを活用した勉強をサポートしつつ、一緒に夕飯のお弁当を食べて過ごす、という取り組みです。 その活動中、直接私に対してではないのですが、とあるボランティアに小学生が「キリスト教って何?」と聞かれて「はて困った」という状況に。たぶんその小学生のキリスト教徒の知り合

ユダヤの風土:『旧約聖書』中沢洽樹訳 読了

<概要> 全訳ではないが、重要な箇所について旧約聖書を現代人にもわかりやすく解説書付きで意訳に近い形で訳された著作。 <コメント> 旧約聖書を読むにあたって、最初のとっかかりとして本書を選択。旧約聖書自体が目茶苦茶長いので、まずは、おおよそのイメージをとらえるためにはよかったかな、と思います。 いずれにしても旧約聖書を忠実に守ったら現代ユダヤ教徒・キリスト教徒は生きられないでしょうから、当然イスラーム教のコーラン同様、現代宗教指導者等による現代的な解釈が必要だと改めて実感

ピダハン「言語本能を超える文化と世界観」書評

<概要> 言語学者でありプロテスタントの宣教師である著者が、アマゾンの狩猟採集民族ピダハンへの布教と新約聖書のピダハン語への翻訳を目的に長期間家族と共に滞在し、最終的には無神論者になった著者の記録。前半は著者の冒険記とピダハン族の文化紹介。後半はピダハン語の紹介と言語学的分析に加え著者自身の心境の変化についての記録。 <コメント>◼️ピダハンの価値観 これは数十年間にわたる著者の人生と信仰をかけた壮絶なる記録。本書はチョムスキーなど主流となっている言語学のセオリーとは異なる

「神は妄想である」リチャード・ドーキンス著 書評

「全ては遺伝子のなせる業」と謳ったリチャード・ドーキンスについて、ドゥ・ヴァールの書評の中で引用したので改めて彼の宗教関連本=無神論原理主義の著作紹介。 本書「神は妄想である」は、宗教、特にキリスト教について、科学的見地、特に進化論的見地から、ありとあらゆる方法で、キリスト教の「神」がフィクションであることを証明しようとしています。 結構分厚い本なんですが、本の半分ぐらいは真面目に、半分以降は斜め読みしました。というのも、自然科学的視点からは明らかにフィクションである「神

私の身近なキリスト教

私の親戚に、某プロテスタントの一派を信じるキリスト教徒がいます。 毎週熱心に教会に通い、クリスマスや感謝祭などのキリスト教の行事はもちろん、お正月などの日本独自の行事でさえも、日々の生活の歳時記も教会活動の一環として完全に生活の一部に組み入れられています。 彼らは私がキリスト教や哲学を勉強しようがしまいがそんなことは関係ないし、信仰にとってはどうでもいいことだろうし、実際その通りだと思います。私も会話の流れでキリスト教の話はしますが、キリスト教を「信仰する」ということは、

カソリックとプロテスタントの教義の違い

以前の「不思議なキリスト教」の紹介でユダヤ教・イスラム教との決定的な違いとして「キリスト教には法がない」ということでしたが、 さてでは、キリスト教のカトリック(ローマの方)とプロテスタントの思想の大きな違いは何か?といったら、それは 「知性で神の存在を認識できるかできないか」 以下、平原卓先生の講義に基づく思想的観点からの整理です。 カソリックは、ドメニコ会の聖人トマス・アクィナスの考えに基づき、神は、神からの恩恵によって人間にもたらされた知性・理性によって神の存在を

21世期の啓蒙 下巻 スティーブン・ピンカー著 書評

下巻に至って啓蒙主義の理念に基づき、世界中の我々自身が普遍的な共通理解として啓蒙主義の理念を持つべきだなと確信させてくれる内容でした。 「暴力の人類史」を「20世紀の啓蒙」とすれば、本書はまさに現代人と近未来人に向けた「21世紀の啓蒙」です。間違いなくお金を出して時間をかけて読むに値する名著だし、全ての人に読んでもらいたい。そんな感動的な読後感でした。 社会の虚構としての近代市民社会の原理とほぼ同じ概念である「啓蒙主義の理念」が世界共通の虚構として、いかにこの世界を進歩さ

不思議なキリスト教 橋爪大三郎著 書評

ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も同じ神様を信仰していて、その神様の信じ方が違うだけというのは知っていましたが、更に一神教のユダヤ教からキリスト教に至るまでの流れを、対話方式で解説していてこれでやっと「キリスト教とはなんぞや」というのがなんとなく理解できました。キリスト教関連の本を読んでも「すっと」頭に入ってこなかったのですが本書はその根本を理解するのにちょうど良い本だと思います。 面白かったのは、ユダヤ教・イスラム教とキリスト教の決定的な違いで、それは何と言ってもユダ