『最後のマスカラ』 (改)413字


朝。
鏡の前に、一見、気弱そうな女が座っている。

女は慣れた手つきで変身(化粧)してゆく。
これは戦士の「闘いの儀式」なのだ。


この社会では女は男並みに、いや、男以上に仕事が出来て、始めて認められるのだ。一方で、同時に「女」であることも求められる。

曰く「お前さあ、社会人なんだからさ、化粧くらいしろよ。失礼だぜ」

(私の顔は失礼なのか(苦笑))

上等だ。

それがルールなら、その土俵で戦ってやろうじゃないか。
以来、化粧は儀式となった。

だが、それも今日で終いだ。
17時半。
使用していたデスクを拭き清め、独りごちる。

「私は、きっと大丈夫だ……」

総務に社章を返却し、洗面室で化粧を落とす。
「最後のマスカラ」は特に念入りに。



外に出ると、残暑の夕陽が肌を刺す。
熱風に向かって歩き出す足取りは、意外に軽く、そして力強い。

これからは、私は他の誰でも無い「私」として生きていく。

背筋を正し、深く息を吸い込んで、今一度ゆっくりと呟く。

「私は、大丈夫だ」



<了>

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皆様へ

最後までお読み下さりまして、誠に有り難うございました。

今回も「たらはかに」さんの企画に参加させていただきます。
(今回はヒネリもオチも無い、ベタなドストレートで挑みました(汗))

皆様には、拙作に少しでも何かしら感じていただけましたら、この上なく嬉しいです。

心から感謝を込め
アッシュ拝

追伸・お詫び
投稿後に読み返したら、無駄な重複を発見にしてしまい、、、
その部分を削って、言葉を少し変えました。
既に読んで下さった方々には恐縮至極ですが、何卒ご容赦下さいませ🙇‍♀️

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