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TSMCは日本の救世主?

TSMCは日本の企業の半導体不足を救わない

2021年10月、決算説明会でソニーグループ副社長兼CFOの十時裕樹氏は、「長期にわたる世界的な半導体不足の中で、TSMCの日本工場は安定調達のための解決策になり得る」と説明した。

また、ソニーセミコンダクタソリューションズ社長兼CEOの清水照士氏は、「今回のパートナーシップが産業界全体のロジックウエハーの安定調達に寄与することを期待する」としていた。

つまり、この一連の熊本県菊陽町のTSMCの誘致は、世界的な半導体不足によって減産に追い込まれている日本の自動車産業に、車載用の半導体チップの安定供給を目指すために行われたと、誰もが考えていた

しかしながら、令和5年4 月7日に参政党の神谷宗幣議員によって提出された質問主意書に対する、日本政府の回答は驚くべきものであった。

参政党の車載半導体不足のGDPへの影響に対する質問に対し、経産省は、「車載用半導体の供給不足は近年の自動車生産の減産要因の一つと承知しておりますが、(中略)車載用半導体の供給不足による影響を定量的にお答えすることは困難」と回答した。

この回答を受け、神谷宗幣議員は、米国政府は「車載用半導体不足がGDPに与える影響を定量的に分析し、米国内の半導体産業支援について戦略的に検討し、CHIPS法案を含む半導体政策を立案し推進している」ことを指摘し、日本政府と経産省が「半導体不足の影響を数値で分析して示し、政策を戦略的に検討」できないのは何故か問うた。

これに対し政府は、「半導体の供給不足が自動車の生産に及ぼす影響については定量的にお示しすることは困難」と繰り返し、自動車の減産の原因が半導体不足によるものだと一概に言えない、とする見解を示した。

また、5G 促進法の目的が「国内で安定的に半導体を生産すること」ならば、「生産技術が保持でき、次世代技術開発が可能である国内企業」に補助金を出すべきなのではないか、「外資系企業に支援することは、競合する国内の半導体企業の競争力を阻害する」のではないか、という質問に対して政府は、「『国内企業』の意味するところが明らかでない」「法は、認定を受ける事業者がいずれの国の事業者であるかを問うものではない」とし、要件に適合するので外資系企業は排除できない、とした。


 さらに、神谷議員が「国内企業への優先的な供給に対し拘束力を持ったスキーム」が必要だとし、政府の見解を問うたところ、「法は、認定を受けた事業者に国内向けに優先的に出荷する義務は課していない」「需要が逼迫した場合における増産を含む国内における安定的な生産に資する取り組みが行われると見込まれること等を認定の要件としている」と回答した。

加えて、神谷議員は、今回の政府の5G促進法の支援対象であるTSMCなどが国内工場で生産する特定半導体は、「世界的に需給バランスが逼迫」しており、「今後も長期的に逼迫が予想されるものでなければならない」とし、経産省に対して「半導体の日本国内と世界の需給バランスのデータ」について問い合わせた。すると経産省は、データを保有していないと回答、政府は特定半導体の需給状況を把握していない、というのだ。

神谷議員は、2022年に半導体は供給過剰に転じていると指摘し、特定半導体が供給過剰になった場合の対応策を問うた。政府の見解は、「『供給過剰』の意味するところが必ずしも明らかでない」とし、「『対応策』に関しては、仮定の質問であり、お答えすることは差し控えたい」と回答した。

要するに、政府は生産技術が保持でき、次世代技術開発が可能な国内企業ではなく、外資系企業に5000億円という補助金を国民の税金から差し出し、TSMCが国内企業に優先的に半導体を供給することも強制できない、そして、半導体が過剰供給状態になっても対応策を特に持っていない、ということなのである。

TSMCの目的は日本の半導体産業を潰すこと

台湾の『中時新聞網』によると、台湾の金融の専門家であるZhang Zhongmou氏は、TSMCがアメリカや日本に工場を建設する真の目的は、ライバルであるインテル社を一掃し、日本の半導体産業を抑圧するためである、と分析しているという。

同氏は、TSMCは、アメリカや日本の半導体政策の補助金を獲得することで、敵の企業に回る補助金を減らし、世界の半導体シェアを独占し、TSMC一強の構図を目的としていると述べた。

つまり、この分析が事実ならば、日本政府は日本の半導体企業を潰そうとしている企業を、わざわざ第一工場に5000億円、さらには第二工場に9000億円もの国民の税金を払って誘致したことになる。


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