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熊本の井戸水に有機フッ素化合物

熊本市が3月30日に、市内の2か所の井戸の水から国の基準を超える濃度の有機フッ素化合物「ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)」と「ペルフルオロオクタン酸(PFOA)」が初めて検出されたと発表した。

市によると、昨年10月と今年3月に39か所を初めて独自に測定した結果、国の基準(1リットルあたり50ナノ・グラム)に対し、中央区九品寺の白川沿いの井戸で最大77ナノ・グラム、北区植木町轟の井戸で110ナノ・グラムが検出されたという。

植木町では半径250メートル以内で16世帯が利用しており、市は飲まないよう求めている。

白川沿いは周辺がオフィス、植木町は農地で、排出源になる工場などは近くにないため、流入の原因はわかっていない。

この有機フッ素化合物といえば、アメリカの研究などでは発がん性や子どもの成長への影響などが報告されている。分解されにくく健康や生態系に影響がある有害化合物であるが、半導体の製造には不可欠である。
当然、2024年に熊本県菊陽町で工場を稼働予定の、台湾の半導体製造大手TSMCの熊本工場JASMでも使用される可能性が高い。

もちろんJASMはまだ建設中であるため、今回の件には関連がないと思われるが、この有機フッ素化合物に関しては、その有害性のため各国で規制の動きがあるにも関わらず、半導体の主要生産地であるアジアが規制に二の足を踏んでいる。

欧州連合(EU)や米国のメーン州では環境や生態系に悪影響を及ぼすとして、2025年にも、有機フッ素化合物(PFAS)の規制に向けた検討が進んでいる。

しかし、代替品の開発や調達はまだ進んでおらず、韓国や台湾、中国など半導体の主要生産地であるアジアでは未だ規制に関しては未定である。

半導体関連の業界団体であるSEMIは「半導体の製造過程で有機フッ素化合物(PFAS)は多岐にわたって使われている」とし、有機フッ素化合物(PFAS)を代替物のない重要部材として、各国の規制当局に規制対象から免除するよう働きかけている。

つまり、熊本のJASMの有機フッ素化合物(PFAS)の使用にも、当分の間は規制はかからないと思われるため、熊本県の健康被害や環境、生態系への影響が懸念される。

半導体製造の工場が建つということは、この様な、欧州連合(EU)や米国が規制を検討する様なレベルの有害な化合物が環境を汚染することを意味する。

現代の技術を持ってしても、有害物質や汚染物質を全て徐害することは不可能であり、健康や環境に影響を及ぼすことが不可避なのである。

JASMは膨大な量の地下水を汲み上げ、同時に莫大な量の排水をする。有害物質を大量に含む排水が河川を汚染し、土壌や地下水を汚染すれば、近い将来、有機フッ素化合物のみならず、様々な有害物質が、私たちの生活を支える井戸から検出されることになるだろう。


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