88 ハチハチ

クレーマーなオバサン。

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あれから10年

10年前の3月11日14時46分、わたしは長男と自転車で市内を走っていた。 4日後に予定されていた長男が高校の卒業式で着るスーツを買うためだった。外にいたせいか、さほど大きな揺れを感じなかった。 その後も揺れは頻発し、町中に人があふれ出し、スマホで情報を収集していた店員が青ざめて「今日は帰れないかもしれない」と言い始めた。 でも脳天気なわたしは、「息子のスーツを買う」とことしか考えていなかった。揺れる店内で、息子は試着をし、初めてのスーツとネクタイを手に、自宅に戻った。 室

    • 郵便局から見えてきた社会

      昨日今日と郵便局に行っては、ムカついている。 「今回は目をつむるけど次回から気をつけて」といった、「大目に見る社会」が消えてしまったことに気づいた出来事だった。 昨日、台湾に送るカレンダーの発送準備をした。プチプチ封筒に入れて家のキッチンスケールで測ったら800gを少し超えた(800gを超えると900g料金が適用される)ので、中の緩衝材を減らして797gにして、郵便局へ持って行った。 郵便局の秤では、799gだった。局員のAさんに「封筒の両サイドのぷかぷかしている部分を留

      • わたしの家計簿遍歴

        結婚したときからかれこれ30年以上家計簿をつけている。こう言うと、「スゴイね-」と反応される。でもわたしの場合、家計簿をつけること=しっかりお金の管理をしているということではない。なぜなら、毎日の出費は記録しても、集計したことがないから。家計簿をつけているのに収支を把握していないという、恥ずかしい実態が隠されている。わたしにとって家計簿は、単なる「毎日の出費記録」。ちっともスゴイことじゃありません。 自慢できることがあるとすれば、カスタムメイドしていたこと。 無印の6mm横

        • 『ある男』

          平野啓一郎の『ある男』を読了。 この本でも、作家のベースにあるのは「分人主義」だと思った。 自分の境遇や過去が嫌で、もう一度人生をやり直したいと思ったとき、過去を捨てて、別人として愛のある暮らしを営むことができたらいいのにと思うひとは多いのではないか。 幸せに生きたいと思っても、出自や家庭環境、過去に犯した罪が足かせになって偏見や差別を受けたら、将来に希望を抱くことは難しい。ひっそりと、目立たないように、身をすくめて生きるほかない。 わたし自身は、別人になりたいと思ったこと

        あれから10年

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        • 日々雑感
          12本
        • 読書雑感
          3本
        • 映画雑感
          1本

        記事

          「コハク」と「ピエロ」

          小川洋子の『琥珀のまばたき』(2015年刊)を読了。昨夜はゴダールの『気狂いピエロ』(1965年作)を観た。 同列に並べることはできないけれど、どちらも異色の「超日常」を描いているという点では共通している。 『琥珀〜』は、温泉地の別荘の敷地内から出ることを母親に禁じられた三姉弟が、社会から切り離された雑音のない静かな世界で、優しく愛をはぐくみながら成長する物語。 三姉弟は本当の名前を捨て、鉱物の図鑑から取った名前でささやくように語り合う。家族愛と想像力に守られた彼らの世界に

          「コハク」と「ピエロ」

          香港が香港じゃなくなる

          一昨日、香港安全維持法が施行された。一国二制度が50年間保証されていたはずの香港は、23年間でその約束を反故にされ、香港の民主化は法の下に押さえつけれた。 初めて香港に行ったのは、1983年。新卒で就職した会社が発行する旅行雑誌の取材だった。転職した次の会社でも、旅行ガイドブックの編集に携わっていたので、20代のころ仕事とプライベートで4回ほど香港を訪れた。 通りにせり出した看板、八角や胡麻油の匂い、おもちゃ箱をひっくり返したような雑然さ、、、街の活気と香港人のパワーに圧倒

          香港が香港じゃなくなる

          こんなときだからこそ。【誠意を示そう】

          そこそこ長く生きてきた。人生思うようにはいかない、は、これまでの経験から承知済みだったはずなのに。。。 医療の研究も技術も進歩した現代に、人知で太刀打ちできない新型のウイルスが出現して猛威をふるい、世界中をあたふたさせ、多くの人を死に至らしめているという事実。 追い討ちをかけるように、無理やり作り上げた「美しいニッポン」に亀裂が生じ、嘘で固めた隠蔽工作が出現。こちらも嵐が吹き荒れ先行きが見えない状況になってきた。 腐敗した政治と、エリートたちの「貌」のない発言。ああもうウン

          こんなときだからこそ。【誠意を示そう】

          報道から【やまゆり園事件】

          やまゆり園事件の被告に死刑判決が下された。 当然だと思うが、何かひっかかる。 「浅い裁判だった」とコメントがあったように、この事件は、凶悪犯の死刑で終わりにできるものではない。 2016年7月に起きた、障害者施設での非道きわまりない事件。犯人がその施設で働いていた元職員の若者だったことも衝撃的だった。「優生思想」という言葉が取り上げられ、ナチス・ドイツと関連づけられた。 意思疎通ができない人、生産性がない人は生きている価値がない。障害者は不幸。だからいないほうがいい。恐ろし

          報道から【やまゆり園事件】

          こんなときだからこそ。【ジョギング】

          久しぶりにジョギングを再開した。 コロナウィルスの情報収集で、家にいても気持ちがザワザワして落ち着かない。こんなときはからだを動かすことで、怒りや不安を発散したほうがいいと思い、、、 夕方のジョギングを始めたのは、2002年のこと。雑誌の仕事でスイス行きが決まり、若いスタッフについて行けるように体力増強を図ろうと思ってのことだった。 自己投資も事前準備もなしで始められるのが、ジョギングのメリット。家の近くに、桜並木が続く川沿いの遊歩道があり、格好のジョギングコースになっ

          こんなときだからこそ。【ジョギング】

          こんなときだからこそ。【マスクを作る】

          新型コロナウィルスの感染拡大が止まらない。 PCR検査の保険適用で感染者数はますます増えるのだろう。 緊急事態宣言が発令される可能性も現実味を帯びてきた。 日本中がぴりぴりしている。 電車でマスクをせずに咳をしようものなら、非難の目が一斉に飛んでくる。感染ルートの調査は犯人捜しのようでもあり、感染して「悪者」にならないように、みんなびくびくしている。 感染したくないし、感染源にもなりたくない。でも今の日本に、ここだけは安心という場所はない。収束の見通しもまったく立たな

          こんなときだからこそ。【マスクを作る】

          「住まいである地球」を考える

          10月も末になってようやくお天気が戻ってきた。 本来なら行楽やスポーツに最適とされる月だけど、今年は度重なる台風の襲来で、自然の脅威と気候変動の深刻さ、そして偏った報道を実感することに。 徐々に明らかになる台風被害のニュースを見ながら、川沿いの低地にあるわが家も他人事ではないなぁ、対策をしておかなきゃと思うと同時に、地球に何が起きているのだろう、と不安を感じ始めた。 異常気象は年々顕著に。 今年は長引く梅雨に夏が来ないのではと心配していたら、いきなり真夏が到来し、9月に

          「住まいである地球」を考える

          『僕はベーコン 』

          息子が置いていった『僕はベーコン 芸術家たちの素顔』を読んでいる。 フランシス・ベーコンに興味があったわけではない。本のイラストと装丁がよかったから。 白状すれば、フランシス・ベーコンについてほとんど知らなかった。哲学者で絵描きなのかと思っていたくらい(哲学者・ベーコンは芸術家・ベーコンの先祖に当たるらしい)。 醜くデフォルメされた、もしくは内面の苦悩を隠喩した、はっきり言うと気味の悪い彼の作品は好きになれない。でも、何か惹きつけられる。 彼が描く絵と同様、その人生

          『僕はベーコン 』

          昨夜見た夢

          ときどき、リアルな夢を見る。 リアルというのは、現実に即しているということではなく、色彩があったり、触った時の感触や匂いを感じたり、外国語を話していたり、、、という具合。 昨日は、初めて二重夢(?)を見た。 夢の中でわたしは夢を見ていて、空港でパスポートを忘れたことに気づいてパニックになった。すぐに夢だと気づいて安堵し、今度の旅行ではパスポートを忘れないようにしなくちゃ、と夢の中で自分を戒め、夢で教えられたことに感謝した。 夢の中のわたしは友人と空港にいる。またしてもパ

          昨夜見た夢

          すべてのことは自分が原因を持っている

          「死に向かっていく動揺が絶対にあったはずです。でもそれを制御していた。自分の中で求めすぎない。今わずかでもできることに感謝する。その気持ちを忘れそうになった時は自分に言い聞かせる。そういう日々の循環だったのではないかと思います」 内田也哉子が、昨年9月に亡くなった母・樹木希林との日々を回想し、インタビューに応えていた。 「すべてのことは自分が原因を持っている」。これが母の口癖でした。そう思えば、相手のせいにすることができなくなる。でも、そこから悲嘆するのではなく、常にできるこ

          すべてのことは自分が原因を持っている

          おばさん考

          大学生のとき、同級生が出産をした。彼女の子どもと会話ができるようになったとき、20代のわたしは、わたしのことを「せーこちゃん」と名前で呼ぶように諭した(けっして「おばさん」とは呼ばないように)。 友人の子どもたちは30代になり、わたしは50代になったけれど、わたしに躾けられた彼らは今もわたしとの約束を守り続けている。 おばさん (おばちゃん含む)だけでなく、「お母さん」という呼ばれ方にも何か抵抗があった。だから自分の子どもが生まれたとき、「せーこちゃん 」と呼ぶように

          おばさん考

          【天気の子】weatherの意味

          新海誠の最新作『天気の子』の英語タイトル(副題)は、『Weathering with you』。 映画のオープニングシーンでこの英文を見たときは「ん? 」と思ったけど、weather には天気(名詞)のほか、 「切り抜ける」や「乗り越える」(動詞)という意味があることを知り、納得。 weatherは、この物語の肝である。 前作『君の名は。』は「救いの物語」だったけれど、今作は「救われない物語」。 もう誰かの力で世界を変えることなどできない。そんなところまで、この世界は狂って

          【天気の子】weatherの意味