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Heiteres und Nachdenkliches

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【詩の翻訳】重量超過/ヨアヒム・リンゲルナッツ

【詩の翻訳】重量超過/ヨアヒム・リンゲルナッツ

重量超過

船が沈没したあとに
郵便物計量器が海底に沈んでいた。
一匹のクジラがそれを不安げに観察し、
それから長いこと嗅ぎまわり、
健康に悪いとみなして、
最大限の注意を払って体から空気を出し、
計量皿の上へと降りていき、
そして——下の方をちらっと見て——訝しげに眺めた。
計量器は百以上を指していた。

Joachim Ringelnatz: „Übergewicht“, In: „Deuts

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【詩の翻訳】田舎を走る車の中で/エーリヒ・ケストナー

【詩の翻訳】田舎を走る車の中で/エーリヒ・ケストナー

田舎を走る車の中で

とびきりすてきな日には
空が言ってみれば
青い磁器でできてるみたいだ。
絹雲は
白い、柔らかにインクで描いたしるしに似ていて、
僕らはまるで雲が皿に乗っているのを見ているかのよう。

全世界が浮き上がるのを感じ、
嬉しそうに斜め上の方へとまばたきして、
自然を讃えている。
父は大胆にも率直にこう叫ぶ、
「素晴らしい上天気じゃないか!」
(やれやれ、父は気持ちよく大げさなことを

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【詩の翻訳】旅/ゴットフリート・ベン

【詩の翻訳】旅/ゴットフリート・ベン



こう考えたことはありますか、例えばチューリヒは、
人が奇跡と厳粛さを
常に内実として有する
より低地の街の一つだと。

こう考えたことはありますか、ハバナから、
白とハイビスカスの赤をした
永遠のマナが
あなたの砂漠の苦しみを癒すために湧き出てくるかのようだと。

BahnhofstraßeにRue、
Boulevard、Lidos、Laan——
Fifth Avenueにいるときでさえ

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【詩の翻訳】ありえない事実/クリスティアン・モルゲンシュテルン

【詩の翻訳】ありえない事実/クリスティアン・モルゲンシュテルン

ありえない事実

パルムシュトレームは、すでにいくらか歳をとっていたのだが、
道のカーブしたところで
車に
轢かれた。

「どうして、」と彼は言う(立ち上がり
決然と生きながらえて)、
「ありえただろうか、どうしてこの不幸が——いや、
そもそもこんなことが起こったということが?

政策は
自動車の件で弾劾されるだろうか?
警察の規定では
運転手にここの自由通行権を与えていたのだろうか?

あるいは

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【詩の翻訳】もし/ルートヴィヒ・フルダ

【詩の翻訳】もし/ルートヴィヒ・フルダ

もし

そう、もしはじめから俺に
あまり欠けているものがなかったら、
ただ異なる感覚で
異なる道のりを選んでいれば、
適切な道で
適切な助けを受けていたなら、
俺がしたことのかわりに
その反対のことをしていたなら、
上の命令で
多くのことをする必要がなかったなら、
今の俺が知っていることの
半分だけでも先に知っていたなら、
かつて真剣にただ意思していたなら、
いや今なおただ意思していたなら、
幸運

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