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【折々のギフト 令和6年7月号】カスハラ・困ったお客さまたち①

昭和の時代、どこの百貨店でも最初に教えることは『お客様第一』だ。
新宿の老舗百貨店もご多分に漏れず、『信用第一』と『顧客第一』を教えた。
新入社員は、実技の教育としてお辞儀の角度、接客用語、伝票の書き方、包装の仕方などを教わる。座学としては、会社の歴史、方針、そして何よりも重要なのは理念である。
お客さまに対しては『まごころの奉仕』という精神が叩き込められた。

百貨店の新入社員は、先ずは店頭に立って販売を経験することになる。
とはいっても、直ぐに販売が出来るわけもないので、スポンサーと呼ばれる先輩の後ろで接客技術を習うのである。本来は半年間の販売トレーニング期間だが、次から次へと付帯業務が飛んでくる。最初に教わるのが、ごみ捨てだ。いかにタイミングよく、早く、通路を歩かれるお客さまに邪魔にならないようにごみ捨てすることが求められる。決してキレイとは言えない白い木製のごみ箱を、売場からバックヤードのダストシュートまで一日に何回も運ぶのが仕事である。学生時代の友人が活躍ぶりを見に来たときに遭遇するとバツが悪い。

ただ二週間もしないうちに期待(指示)されることは、売場の裏にあるバックヤードの商品整理に代わる。商品整理とは納品された商品を倉庫の所定の位置に置き、状況において品出しをすることである。ただし、倉庫の棚に入る商品は限られており、踊り場と呼ばれるフリースペースは各売場間の争奪の戦場となる。10のキャパに15、20の商品量が入荷してくる時代である。入社時に買った真新しい背広のズボンは擦り切れ、ネクタイは汗であっという間に雑巾と化す。

そんな状況の毎日を送っている時、バックヤードに一人の紳士が入ってきた。
三つ揃えのスーツにステッキか傘かを持った、吉田茂のような紳士である。50年前の記憶だがなぜか鮮明に覚えている。

「君、店長のところまで案内してくれ。」

同じフロアに販売サービス担当があり、奥に店長室があった。もちろん、丁重にご案内する。
販売サービス担当の人たちも全員起立して出迎える。新入社員はちょっといい気分である。
踊り場に戻って商品整理を続けていると、販売サービス担当の係長が来て、新入社員は叱責された。その紳士風な人は有名なクレーマーだったのだ。「なぜ奥の店長のところまでお前は連れてきたか」とこっぴどく叱られた。ぽかんとしつつも「すみません」と謝った。

これが百貨店における私の最初のクレーマーとの出会いであった。
後年には「ご用件は?」「どちら様ですか?」など、お客さまの対応を覚えてきたのだが…

それから40年。百貨店に襲い掛かる多くのクレーマーとのエピソードがある。

同じころの1979年に『クレーマー、クレーマー』というアメリカ映画が放映され、題名だけで響くところがあった。クレーマーを悩むのではなく、クレーマーとどのように対峙していくのか。私は、クレームが発生するとテンションを上げる。Queenのボヘミアン・ラプソディにある『マンマミーア♬マンマミーア!』と叫ぶ。マンマミーアはイタリア語で『私のお母さん』という意味だが、『オーマイゴッド!(なんてこった)』の意味がある。

『マンマ・ミーア!』という映画もあって、こちらもメリル・ストリープが出演している。こじつけではないが、彼女はアカデミー賞ノミネート回数の記録をつくった演技派である。
主人公のヒーローが敵役であるクレーマーと、虚構の世界ではどのように戦うのか、そこにカスハラへの対応策、解決策のヒントがあるのではないだろうか。

誠意ある正しく毅然とした対応で、クレーマーから部下を守りましょう!


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