マガジンのカバー画像

コロナウイルス連作短編

219
運営しているクリエイター

2021年7月の記事一覧

コロナウイルス連作短編その104「傍観者の場所」

 クリーム色の量塊として聳え立つ小学校、その校舎よりもそこに寄り添う校庭の方が更に巨大で…

コロナウイルス連作短編その103「自称“ベラルーシ系Youtuber”」

「この前、ある男とヤったんだけども、まあセックス自体は普通、悪くはない感じだった。でもそ…

コロナウイルス連作短編その102「United by Emo」

 勝俣空はコロナ陽性と診断されたが無症状だったので、デートに行く。待ち合わせ場所で日傘を…

コロナウイルス連作短編その101「皿を洗う、トマトを切る」

 妻の料理は今日も不味い、浅子友はそう思う。最近は少し調子の悪い友に変わり妻の心乃が夕食…

コロナウイルス連作短編その100「海は赤い業火」

 宮下カナリは今年の戦隊ヒーローであるゼンカイジャーが好きだ。今年はコロナのせいなのか、…

コロナウイルス連作短編その99「反日浄化」

 昨日深夜から今まで、中原堅固は踊りまくっている。周囲には“コロナなんかクソ喰らえ”とい…

コロナウイルス連作短編その98「ルーマニアの大工」

 右の人差し指と中指の付け根がいやに乾いている、ヨアキム・ソンステヴォルはそう思う。指を広げると皮膚が、漠砂でできたゴムのように伸びる感覚を味わう。皮膚に目を向けると、マグロの刺身に刻まれる類いの白い筋がうっすらと浮かんでいるように見えた。事あるごとにボディクリームを入念に擦りこむのだが、乾きは癒し難く、ここから去ることはない。命に別状などある訳もなく、範囲は本当に小さなものでありながら、この乾きをふとした瞬間に認識する時、グリッチのような不快感を脳裡によぎる。そんな時、ヨア

コロナウイルス連作短編その97「オスガキ、メスガキ」

「ワクチン2回打ったよお」  目の前の老婆が、レジを打つ店員にそう言うのを、安納礼香は聞い…

コロナウイルス連作短編その96「聖戦」

「実は、結婚とかしてて、夫がいる……」  キスをした後に増田逢がそう言ったので、ペレルマ…