見出し画像

24億4000万年前と今と未来 - 光合成と炭素循環のハナシ


「『山いこら♪』2021年01月26日 | 樹木の基礎知識に関するお話『光合成に適した温度』」を許可を得てリライトしています。

夏と言えば太陽!太陽と言えば光合成!(?)
中学校で習った以来、久しぶりにお目にかかるであろう「光合成」についてです。


光合成は、地球を変えた。

ぼやぁ、と光合成について覚えているのは、葉っぱが太陽光を浴びると、二酸化炭素を使って酸素を作ることができる、くらいの知識です。私。
教科書で書かれているのは、こんな感じ・・・
水 + 二酸化炭素 → 太陽光エネルギー → 酸素 + 有機物

または「無機物から有機物を作る代謝」とか言われたりしますね。これ学校で習った時、「錬金術みたいだなぁ」と思ったことを覚えています。字の通り、無から有を生み出している(そうじゃないんだけど)。これ、共感してくれる人がいるんじゃないかな。

さてさて、話を戻します。
今や海にも陸にも生物がいて、私たち人間も生きていますが、大昔はそうではなかったわけです。地球のルールを変えたのが、まさに光合成。

現在の大気には20パーセントの酸素が含まれていますが、誕生したばかりの地球には酸素はほとんどありませんでした。24億4000万年前に「シアノバクテリア」という、光合成をするバクテリアが海の中で誕生し、せっせと酸素を作り出したことで大気中の酸素の割合が増えていったのです。さらに大気中の酸素からオゾン層が作られ、太陽から降り注ぐ有害な紫外線がシャットアウトされるようになりました。

JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)
https://www.jamstec.go.jp/sp2/column/04/
(スプラトゥーン2とコラボしてて、サイトがめちゃくちゃかわいい。知らなかった。覗いてみてほしい。)

それまで海の中でしか生活できなかった生物が陸地に進出し、さらに生物が多様になっていきます。今や、人間のように海の中では生きられないつくりの生物もいます。地球のルールを変えたのは、植物であり「光合成」なのです。

画像3

地球を変えた酸素を感じる季節がやってきます。

日本に自生する植物の多くは、気温5℃以上で光合成を開始します。そして、もっとも盛んに光合成を行う最適温度は「25℃前後」と言われています。
25℃以上になると光合成速度の低下が始まり、40℃を超えると急激に光合成速度が遅くなる傾向にあります。一方、気温が低温の場合、光合成速度は低くなるのです。

つまり、温かい時期になると、光合成の活動が活発になります。24億4000万年前から変わらない活動から生成された酸素が味わえる!!ロマンしかない。山行くしかない。

ちなみに、樹木も呼吸しています。酸素を吸収し、二酸化炭素を排出する、私たちと同じ呼吸です。呼吸は葉だけではなく、幹・根・枝など樹体すべてで呼吸をします。
この光合成と呼吸で、木は成長をします。

成長と炭素

画像4

冒頭に書いた通り、光合成によって二酸化炭素を吸収し、酸素を放出するとともに、有機物が作られます。有機物を具体的に言うと、ブドウ糖やでんぷんです。
木はこの合成したブドウ糖やでんぷんをもとに、幹・根・枝葉をつくって樹体を大きくしていきます。成長に使うためにもう一段階あり、これら糖類を分解・吸収する必要があるのですが、その時に必要なのが「酸素」。なので、樹木も呼吸をして酸素を取り込みます。

ここで重要なのが、外から取り込んだ二酸化炭素を使って有機物(ブドウ糖やでんぷん)をつくり、それを使って成長する、のところ。
有機物(ブドウ糖やでんぷん)を言い換えた方がわかりやすいですね。それらは「炭水化物」です。つまり、樹木は有機物が含む炭素を蓄積していきます。

木も人も同じく、「成長期」みたいなのがあります。10代がとにかく量!のご飯を食べるように、若い樹木は多くの二酸化炭素を吸収し、有機物を使って成長し、炭素を蓄積していきます。そしてピーク後は、段々と吸収量は低下していくことがわかっています。(樹木の成長と炭素量の詳細は長くなるので割愛。)

炭素循環と、私たちの選択。

地球では炭素が吸収されたり排出されたり蓄積されたりしていて、それを炭素循環と言います。良い図がないかなーと思って調べていたら、とてもわかりやすい記事がNTT宇宙環境エネルギー研究所さんの「Beyond Our Planet」というメディアにありました。ぜひ見てほしい。
炭素循環とは? 温室効果ガスとの関連や窒素循環との違いも解説

Beyond Our Planetさんから、地球規模での炭素循環の図をお借りします。

画像1

図にあるとおり、炭素は「大気」「森林」「土壌」「海洋」「人間活動」のあいだを、さまざまに形を変えながら循環しています。たとえば、大気と森林なら、大気の二酸化炭素が植物の光合成により、有機物の形で生物に取り込まれる一方、生物の呼吸などに由来する二酸化炭素が大気に排出されます。また、土壌の化石燃料などは、産業革命以降の人為的活動により、二酸化炭素などとして大気に排出されます。(Beyond Our Planet 記事より引用)https://www.rd.ntt/se/media/article/0001.html

いやあ、ほんと、地球ってすごい。
さて、循環してるならいいじゃん、と思ったあなた。次の図を見てください。こちらもBeyond Our Planetさんからお借りしました。

画像2

上の図にあるとおり、二酸化炭素は海洋、人間活動、および土壌・森林から大気中に排出される一方、海洋と土壌・森林は大気中の二酸化炭素を吸収します。排出と吸収の収支は161.6億t /年となり、これだけの二酸化炭素が大気中に毎年残留していくことになっています。(Beyond Our Planet 記事より引用)https://www.rd.ntt/se/media/article/0001.html

私はこの数字を初めて見たのですが、単純に人間活動が余分な二酸化炭素を出してるなぁと思いました。一方、人も生物なので、これは地球上に生きている生物活動の一環として、自然なことなのかもしれません。

ただ、私たちは地球のモノを使わせてもらっていて、そして循環の一端を担っています。人間活動が、「排出」だけでなく「吸収」への貢献を考えること、そして行動をすることは、次世代にこの美しい地球を残していくために誰かがやらなきゃいけないことだと思います。

さいごに。

炭素循環の中で、森林の吸収は大きな役割を担っています。人間活動の二酸化炭素排出量を抑えることはもちろんやらなければならないことですが、切った後に植え育てることも重要です。木を切りっぱなしで、そのまま放置している山林ばかりになったら・・?

24億4000万年前、植物が誕生し光合成により大気中の酸素濃度が高まり、オゾン層ができました。
今、人間の活動により大気中に二酸化炭素が残留することで、地球温暖化が進んでいます。海面上昇により陸地が減り、寒い地域に生息する生物は生きていけなくなり、さらには熱帯地域の感染症が拡大しやすくなる可能性が高まるのです。

私たちは、次の世代が生きる世界が二酸化炭素まみれにならないように、「美味しい空気」を味わえるように、多様な生物と触れ合える地球を維持するために、今日も木を植えています。

\ 森をつくる仲間 フォレストメイカー募集中!/
全ての社員が、地域で豊かに暮らし、ずっと仕事を続けられる環境をつくることを大事にしています。日本全国の森づくりを一緒に実現する、熱いメンバーを求めています。
採用情報はこちら

参考文献
一般社団法人日本植物整理学会 植物Q&A 光合成
森林・林業学習館 森林生態系の原動力「光合成」
JST Channe 岡山大学 沈建仁先生 光合成の仕組みに迫る
JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)地球46億年の歴史と生命進化のストーリー
国立研究開発法人 森林総合研究所 樹木の二酸化炭素吸収量と炭素量、バイオマスの関係
NTT宇宙環境エネルギー研究所 Beyond Our Planet 炭素循環とは? 温室効果ガスとの関連や窒素循環との違いも解説
国立環境研究所 森林の減少と二酸化炭素吸収量
WWF 地球温暖化が進むとどうなる?その影響は?

ライター情報
■氏名:岩田遥
■所属:みどり荘長(総務・人事担当)
■紹介文:林業未経験で青葉組に参画。フォレストメイカーが働きやすい環境の実現すべく、東京本社にてバックオフィスを担当。木のこと、山のこと、自然のこと、林業のことを日々勉強中。山の中でぼーっとするのが好き。山に行きたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?