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祝三周年!青葉組の現在地

木を植え育てる専門集団、青葉組代表の中井です。2023年7月15日で母体であるGREEN FORESTERS設立3周年を迎えました!

私たちは、林業、中でも伐採(いわゆる木こり)はせずに木を植えて森を育てる「造林」専門という業態で展開している林業系スタートアップです。森林のインパクトをたくさん作り出すことを自らの使命とし活動しております。

今回は、3年間造林やってみて実際、人集まってるの?とかやっていけるの?とか、そもそも実際どういうビジネスモデルなの?とか、リアルなところを出血大放出しようと思います!


青葉組の人

現在社員は16名、全員正社員(試用期間中含む)でアルバイトはいません。女性は事務入れて3名、男性が13名です。
社員(事務除く)は、経験者(林業現場3年以上)が5名、未経験者(林業現場3年未満含む)10名。経験者でも伐採を主にやっていたメンバーが多く、造林をずっとやってきた者はわずかです。最初の社員が入社した2年前の事業開始当初はほぼ素人集団でした。

しかし、良い人材が集まってきてくれた(ちょっと話を聞いてみたいといったレベルの方を含め応募者数は2年間で75名ありました)おかげで未経験者に対して充実した育成体制が構築されてきており、そのおかげでなんとか怪我無くここまでやってこれています。これは控えめに言って奇跡。

僕の師匠である中川センパイの会社も育成体制すごくて設立当初は研修で学びに行ったくらいなのですが、うちも去年くらいから造林人材の育成体制ができてきて、会社の財産になりつつあります。

年齢も22歳~60歳まで幅広いですが、20代と30代が多いですね。ほとんどのメンバーが他県から移住してきてくれました。

組織体制

青葉組の組織体制である団班制

役職・組織の構成

  • 人材育成部長:1名

  • 団長(栃木・新潟):2名

  • 班長:2名

  • 班員:10名

  • 事務:1名

実績

2022年度は1年間で地ごしらえ植付(植林のことです)はそれぞれ約30ha程度、下刈・除伐は計約160ha程度でした。22年度の年初は8人くらいだったので、そこから人数も増えつつ生産量もふえていきました。

実際には茨城や福島の現場にも呼ばれて行ったのでそれも含んだ数字ですが、栃木県北地域では大体毎年下刈りは800ha程度なので、約20%相当の事業量を設立2年目でこなしたことになります。東京ドーム35個分くらい。

書ききれないほど色んなことがありましたが、とりあえず誰一人大怪我無くここまでやってきたことは誇りです。みんなすごい!

当社が誇るメンバーの下刈り様子。撮影のため、肩に力が入っています。
(5月に撮影したので実際刈るときの草の量は3万倍くらいあります。嘘ですが30倍くらいはあります。)

昨年度はさらに故・坂本龍一さんが代表だったmore treesさんからスポンサリングを受け、造林未済地(伐採後植林せず放置された山)の森づくりも行いました。

数年放置され荒れ放題になっていた山
カヤネズミが棲みついていた
ただ刈って森にすればいいという訳ではないんですよね

ここは、伐採後に所有者が管理放棄し、数年間放置されてしまっていたところで、3mを超えるしのだけに覆われていました。研究者の方々と連携し、早期に人工的に広葉樹の森をつくるべく現地調査。

早期の林冠閉鎖による下草の抑制を狙ってあえて自生のカラスザンショウを残してみた
沢のそばにはサワグルミ、斜面底部にはトチノキとヤマザクラ、尾根筋にはホオノキ。

5本まとめて植栽する「巣植え」という手法でトチノキやヤマザクラ、ホオノキなど数種類の広葉樹を植えました。

巣植えしたホオノキちゃん。スクスク成長中

給料

青葉組は日給月払いの正社員制度を採用しており、新入社員(未経験)は1万円/日からスタートし、最も高い人で現在2万円/日くらい(ただし、役職者は別途手当、みなし残業代支給あり)です。
月収20~40万円。一人暮らしなら良いかもしれないけれど、家族がいたら、子供がいたらどうでしょうか。悔しいけれど、まだまだ決していい給料とは言えません。これが僕の今の成績表。

働き方

ちなみに週休二日を始めたのはフォード(1927年)らしい。

青葉組のこれまでの3年間を作ったといっても過言ではないのが、働き方。特に、肉体的にも連続勤務は3日が限界じゃね?というところから3日働いて1日休むという体制に徹底したのが社員にハマった感があります。また、1日8時間も働けないので、勤務時間もマックス6時間をベースにしました。ただ、こうすると日曜が休みじゃないとか、二連休がないとかなるのであえて日給制にして、いつでもline一本で自由に休める体制にしています。
これから造林始めようという方は是非ここは参考にしてほしいです。うちも中川さん(前述)からこのあたりは学びました。
ちなみに、8時間労働でも6時間労働でもあまり生産量は変わらなかったので、短い方が労使共にwin-winです(労災リスクも減るし)。

あと書いていないことで言えば、現場班長の裁量を大きくしていて、雨で休むとか、メンバー皆疲れているので早く切り上げるとか、そういうのは自由にやってもらっています。ただ、現場の売上情報も共有しているので、そことにらめっこはしてもらっています。経営&営業サイドは単価上げる(特に下請け現場とか)、現場サイドは安全かつ生産性高く仕事する、その役割分担ですよね。

東京から来てくれたカメラマンさんはここ数年で一番きつい現場だったと言っていた

ビジネスモデル

で、どうやって売上立ててるの?という疑問が特に業界外の方はおありだと思います。
木の伐採収益の一部と行政から出る造林補助金が収益源になって事業をやっています。ただ、近年木材価格が下落してて、もはやほぼほぼ補助金に依存するような事業モデルです(地域によると思われる)。毎年予算配分されており、1ヘクタールに2000本植えると100万円あげるよ!みたいなルールになっています。

造林に補助金が出ることになった歴史を調べてみると、発端は1927年第一次大戦後の木材不足に対する課題から始まったようです。その後、第二次大戦後に失業者救済目的で補助金が支給されていたこともあり、福祉的な側面もあったみたいです。

造林への補助金は2027年で100周年を迎えるらしい

そういった歴史的背景にも由来しているのか、地方で年配の方になればなるほど、造林をやっていると言うだけでなんとなく憐みを浮かべた表情をされます。(気のせい?)
田舎のじいちゃんばあちゃんは若いころ造林を手伝わされた経験があるので、そもそも大変な肉体労働だという認識があるのでしょう。
僕らは好きでやってるだけなんですけどね。

でもこうして調べてみると、歴史的に造林に補助金が出る理由は高度経済成長期の木材需要に応えるためでした。だから補助金はスギヒノキなど木材になる樹種を効率的に植えることを第一義に大枠が設計されています。
しかし90年代から日本の住宅着工数は減り続けているし、比例して木材需要は減っている。

現代社会のニーズは、もはや住宅建材の原料としての木材だけでなく、土砂災害を減らす(表面浸食の防止)、水質浄化、炭素の吸収量を増やす、花粉症減らす、生物多様性増やすとか、木材以外の要素が加わって、むしろその比重が増しているので、補助金ばかりに頼っていると社会のニーズとかけ離れたことをしていってしまう気がしてしまいそうです。

2023年6月30日環境省の部会で発表された安宅さん(ヤフーCSO)の資料より。
林業的価値(木材)の100倍の価値が森にはあるよ!というデータ
元ネタは2001年の日本学術会議の答申

結果的に、なんでこの作業しているんだろうとか、よくわからないことが現場に起きている気がします。誰も説明できないことが。きっと現場にいる人ならみんなわかるんじゃないかな。

森を育てる人は20年で6割減ったらしい。
補助金ルールが課題解決にもっと直結していればもっと若者も来てくれるんじゃないかな。

意味や目的がわからない仕事をやるほど、人間簡単じゃない。給与や待遇がもし高くないんだとしたらなおさらです。
だから、いばらの道かもしれないけど、自分たちが森をつくることでどんな価値を生んでいるのか、現場の社員にも、またスポンサーの方々に対してもしていくことがすごい大事だよなと思います。

もっと言うと、ただ木を植えた労働対価でお金を頂くのではなく、具体的にその作業がどんな環境的社会的な価値(≒インパクト)を生むのかを説明し、お金を頂けるようにしていきたい。
実際、青葉組では、企業からのスポンサー収入をもらって森づくりを行ったりもしているし、ENEOSさんとは目下実証的な森づくりも進行中です。

造林という仕事を単なるきつい「作業単発の肉体労働」から、創意工夫が評価される「森づくり」の仕事に変える。それは仕事にお金を出してくれるスポンサーが増えるかもしれないし、仕事の意味や定義が変わるかもしれない。それって1927年から約100年変わらなかった造林業の定義をアップデートする大きな変化だと思っています。ワクワクする!

友達に仕事を聞かれて「林業と言わず、森を作っている」と答えているらしい弊社社員

で、儲かってる?

ここまで、読んでくれた方ならおおよそ予想がついているだろうが、現状では儲かっていない。地縁もなく(中井は東京出身)、大して商売上手でもない(高校時代の文化祭では大赤字を出し、担任におまえ商売はやめとけよ、と言われたはずだった。)。何か一儲けできる算段などあるはずもない。

あったのは、今、日本で、森をつくる仕事をする人が圧倒的に不足しているという事実と、それに気づき、こんな儲からなさそうな事業を始めることができるのは、自分のような向こう見ずで、かつ家族や仲間に恵まれているラッキーボーイ(というかラッキーおじさん)だけ、ということだけ。

そうして始まったこれまでの3年間、応援してくれる人がたくさんでき、なかなかスケールも難しそうな造林業という事業形態に対して、融資や寄付、助成金などあの手この手使って1.7億円くらい調達してきた。それはシンプルに僕らが向き合っている林業への課題感と期待が大きいことに他ならない。

苗木を吊って運搬中のドローン。1回で25キロくらい運んでくれるよ。

さいごに

我々造林屋は日々照り付ける太陽を遮るものもない現場でひたすら厳しい傾斜の中で土と草と汗にまみれながら働くというのがリアルだ。圧倒的な自然。雨が降ったら休みになってしまうときも多い。日々、現場で奮闘する全メンバーには本当に頭が下がる思いだ。本当に感謝しかない。

今、戦後植林された森林(スギなど人が植えた森を人工林と言います)は大きく育ち伐採期に来ていて、次の時代にどんな森をつくっていくのか、問われる時代に生きていると思っている。50年、100年先の人々が、良い森残してくれたと、泣いて喜んでくれるのかどうか、僕たちにかかっている。

それは、決して全国一律で決められるようなものではないと思うし、一度こうだと決めたもので決まりな訳でもなく、アジャイルに変化しながら粘り強く姿勢が必要なのだろう。これからますます集中豪雨や想像を超える自然災害も増えるし、より多様な森づくりをしていこうとしたら難易度もどんどん上がる。自分ひとりでは青葉組だけではできないことすぎる。でもそれが林業のいいところだとも思う。みんなで協力しないと良いバリューチェーンできないし、良い森もつくれない。

ここまで走ってきた3年間、よくまぁここまできたよな、わりと奇跡起きたなと思いつつ、全然できていないことも多い。というかできていないことばかりだ。
興味をもってくださった皆さん、是非、一緒に森を作りましょう。なかなかキャパが追いついていないのですが、未経験者大歓迎です。
また、樹木や生き物のプロはもちろん、将来のCFO・CHRO候補となるようなバックオフィスのプロ、PRや広報人材など組織を底上げしてくださる方も含め、全方位採用中です。少し話を聞いてみるでも全然OKなので、お気軽にご連絡頂けたら嬉しいです。ご連絡をお待ちしています。

連絡先:
info@greenforesters.jp

または、ウェブサイトまで
https://greenforesters.jp/recruit/

未来の森を、今つくる!
読んでいただきありがとうございました!!

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