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パラシュートはどこですか?

知り合いからテキストメッセージが来ると、それを開くまでに数時間を要するASDの俺です。

昔にゲシュタルト心理学についての本を読んで印象的に頭に残っていたことがあります。なにか問題を抱えている人の脳は、無意識にその問題を解決しようとする。脳は遠ざけたいものを無意識に引き寄せてしまう、引き寄せることで問題に直面させて解決させようとする。そんな感じの事だったと思います。

最近俺はちょっとストレスが溜まっております。諸事情で急遽日本に行かなければならなくなり、しかも家族を全員連れて日本に行くことになりそうです。ASDだからかは定かではありませんが、全然乗り気ではなく先を考えれば考えるほどストレスが溜まります。それと同時に「とうとうこの日が来たか…」とも思っています。

仕事の関係上コロナ前は1年に一度か、2年に一度日本に帰国していました。なんだかんだと理由をつけて一人で帰国することが多いのですが、今回はそういうわけにもいかないみたいでHSPの嫁とお猿さん4匹を連れてお祭り状態になりそうです。

最後に家族を連れて日本に行ったのは7、8年前で双子のお猿さんが2歳くらいだったと思う。俺と嫁で大人2人、大猿A&Bで子供2人。軽く余裕を持ちながら家を出ました。カルガリーから日本へ行く(Air Canadaの)直行便に乗り、飛行時間は9時間とか10時間かかるという。まだ子供たちがASDだと欠片も考えてもいなかったし、まぁなんとかなるだろうと思っていた。そんな日本行きの飛行機の中で事件は起こる。

事件と言うほどでも無いのだが、俺のハートにトラウマを刻み込んだのは間違いない。飛行機が動き始めると双子のお猿さんたちが嫁の所に行きたがるが、一人は俺と一緒にいないといけないので大猿Bは俺のところに来る。そしてすぐ泣き出す。

HSPの嫁は乗り物が苦手ですぐに酔ってしまう。自分で運転する車以外では大体酔う。なんなら嫁が運転している助手席から、飛行機に乗っている話をするだけで気分が悪くなる。そんな嫁は飛行機の中で余裕なんか一切無い。酔い止めの薬を飲み、大猿Aを抱きかかえ目を瞑り大猿Aもそれに合わせて3時間か4時間ほど寝た。

その嫁が大猿Aと寝ている間の3,4時間、俺は座ることも出来ずにキャビンアテンダント(CA)さんたちが居る非常口の前らへんで子供を抱えて立ち尽くしていた。大猿Bはその間ずっと泣いていた。3,4時間ぶっ続けで泣く子供、何も出来ない俺。俺も嫁も多少は考えてお菓子とか、アニメとか用意はしてたけど、全く役に立たなかった。飛行機内はこんなに暑かったっけ?と思わせるような尋常じゃない量の汗が俺の体中から溢れ出す。

嫁は大猿Aが起きてトイレを催す。しかし子供を連れてトイレに行けるほど気分は良くない。どうしようもなく嫁は大猿Aを俺に渡してくる。飛行機酔いで俺を気遣う余裕もなかったのだ。さっきまで天使のように眠っていた大猿Aは、俺の右腕に収まると速攻で泣き出す。左腕で抱えていた大猿Bは変わらずずっと泣いている。俺の両腕で大泣きする双子のお猿さんたち。「泣きたいのは俺だよ?」という言葉を飲み込むものの、親として出来ることは何もなかった。自分の無力さに絶望。嫁がトイレに行っていた時間は5分にも満たないはずが、俺の両腕で泣かれてた間はその時間が1時間ほどに感じられた。

ここでバトンタッチ。ずっと泣いていた大猿Bを嫁に渡すと、ものの数分で泣き止んだ。おいおい、どういうことだ。ああ、そうだよね、数時間も泣いていたんだ。疲れてるよね。そんな事を考えていると、大猿Bはもう寝る態勢に入っている。嫁は大猿Bを連れ自分の座席に戻る。

だいたい予想は付くと思うが、そこから3,4時間ほど今度は大猿Aが泣きました。途中、そんな可哀そうなアジア人が居る、と気遣ったCAさんは大猿Aのためにオレンジジュースを持って来てくれた。感謝の気持ちもあるし、ありがとうとも伝えた。しかしASDの俺は心の底で、『放っておいてくれ』とも思っていた。それほど俺も疲れていたし、精神的に限界だった。そんな他人の好意を踏みにじる考えが頭によぎった俺には、もちろん天誅が下る。CAさんが紙コップに入ったオレンジジュースを差し出すと同時に大猿Aはそれを付き飛ばし、CAさんにヒット。CAさんはオレンジ色に染まり、俺の脳内は真っ白に染まった。

「もう帰りたい」と思いました。高所恐怖症で高いところはめっぽう苦手ですが、パラシュートが欲しかったです。

帰りの飛行機では子供たちに睡眠薬を飲ませました…なんてのは冗談ですが、そんな考えが浮かぶほどの経験でした。ちなみに帰りの飛行機は2週間の長旅で疲れていたのか、二匹ともほとんど寝てました。

と、トラウマを植え付けられた俺は、心のどこかで家族で旅行に行きたくないと思っていました。日本に行くときは1人で行き、大変だと理解しながらも子供たちを嫁にまかせる。そんな日は終わりを迎え、ついに逃げることのできない日がやってきています。今のところ絶望しか見えないですが今回は俺を含め子供もASDだと分かっているので対策をしっかり取って、上手く振舞い楽しい旅行にしてトラウマを克服してこようと思います。中猿と小猿は初めての海外であり初めての日本への旅行となるので、良い記憶を残してもらいたいと思っています。

はぁ…(*´Д`)


今考えればASDの子供たちになんの準備もせず、ジャングルに放り込むような行為をしたんだなぁと思います。知らなかったんでしょうがないですけどね。ということで今回は出来るだけ準備をして、トラウマにトラウマを重ねるようなことにならないように頑張ります。


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