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Welcome BACK to the Moulin Rouge!(『ムーラン・ルージュ!・ザ・ミュージカル』2024再演 各チーム・ペアの初日感想)

ただいま!

初演に比べて劇場前ラッピングは控えめになっていたものの、やっぱりブチ上がるしかない!

あの夏の熱狂が蘇る…というか私タイムスリップしてるのかな?初日はそんな感覚が強かった。キャストボード撮影のために並んだり、帝国劇場の内装と外装を撮影しまくり、余裕を持って着席してプレショーを観劇し、そして開演。何もかもが懐かしいなという気持ちで埋め尽くされそうになりつつも、2024年の新しい、日本ならではの『ムーラン・ルージュ!・ザ・ミュージカル』でした。

どうして私この作品がこんなにも好きなのだろうと昨年突き詰めて考えたつもりだったけど、“豪華絢爛”の裏側に隠された喜怒哀楽とか、ムーランルージュというシンプルなストーリーがある意味“型”になり、一定の制限がある元でWキャストができる範囲で個性が爆発する面白さ、キャストスケジュールの組合せごとの化学反応に惹かれてきたんだ。それを確かめるかのように、初日開けて4公演連続で観劇するという幸せ期間を過ごしてきた。大好きな作品の公演期間でこんなに充実したスタートダッシュを切れることは稀だと思うので、エレファント・ウィンドミルの両チーム、そしてサティーン×クリスチャンの全ペアの感想をまとめます。久しぶりにムーランルージュを訪れた自分の立場としての備忘的だけど、どなたかの目に留まることがあれば光栄です!

※ネタバレあります⚠️


【はじめに】昨年からの変化

初演の翌年に早速再演、しかも全キャスト続投。そんな状況なのだから、私達の記憶も新しいのでどうしても比べてしまうよね。優劣ではなく、どこが変わったんだろう?と、自分の記憶の中の2023年版を脳内上演しながら観劇してしまったことは否めない。ムーランルージュを観劇する時に一番要らないものが“理性”なのにね!

①歌唱アレンジ

私が一番印象的だったのは、ここ。昨年も、Wキャストそれぞれでリズムの取り方や旋律の運びが違うんだなと思うことともそれなりにあって、目立つアドリブはNGだろうこの作品の許容範囲が意外と広いんだなと感じだけど、今年はそれ以上に各キャストのアレンジが楽しい!プログラムの鼎談のあーやによると「昨年は譜面通り歌うことに注力してたけど今年は自由に歌って良いと言われている」とのこと。オープニングナンバーのWelcome to the Moulin Rouge!で、ラ・ショコラのそれでWキャストの鈴木瑛美子さん菅谷真理恵さんの二人それぞれがフェイクを入れてて、今年のムーランルージュは昨年と違うぞ〜と初日からとてもわくわくした。今年からのアレンジは、Wキャストそれぞれで別の歌い方をするというよりも、同じ役を演じる二人が揃ってアレンジしてるのかな?と思った。例えばFireworkラストの「圧倒させるの Oh Oh Oh」で音を上げていくのをサティーンどちらもやっていて、昇華…!とうるうるしつつ、ブレスを思いっきり吸って「まるで私 紙切れみたい」と再び歌い始めるので彼女のしんどさが際立つのよ。Only Girl in a Material Girlで、サティーンにラベンダー色のドレスを着せた後の公爵も二人ともアレンジ入れてて、ここは公爵がサティーンを自分色に染める最高に悦に浸ってる瞬間なのでいやらしさ倍増でとても好きなアレンジだった。

②セリフ

・Elephant Love Medleyの直前、「じゃあ僕を恋人にしてほしい(芳雄クリスチャン) / 僕を恋人にしてくれ(甲斐クリスチャン)」
(初演:二人とも「じゃあ僕が恋人になろう」)
行け行けクリスチャンモードになるこの瞬間が好きで、「僕が恋人になろう」なんてそんな立候補みたいなテンションで言わないでよだから好きなんだよその天元突破してる自己肯定感が!!と抱えきれない萌えを初演では爆発してたけど、再演のこの控えめな、というかサティーンよりも下手に出て懇願するこのスタンスと後々待ってる無敵の押せ押せクリスチャンタイムとのギャップにやられたよ…

・Backstage Romance後のサンティアゴ「愛してる!」ニニ「当然でしょ、ブタ!」
(初演:ニニ「当然でしょ、バーカ!」)
藤森蓮華さんと加賀楓さん、二人のニニの個性がここで溢れてて好き。楓ちゃんの、少し背伸びをしたような「ブタ!」からのサンティアゴの胸ぐら掴んでキスするまでの流れがめっちゃくちゃツボです。蓮華ちゃんも流石すぎる…かっこいい…

・Crazy Rollingのジドラー「サティーン、ルージュもう少し…」(初演:「口紅もう少し…」)
ここのやりとりが大好き。ブロードウェイ版の音源を聴いててもRougeと聞こえるシーンだし、原語を使いたかったのかな。あとはムーランルージュの「ルージュ」にかけたとか…?

他にもあるかもしれないけど私が気づいたのはこのくらいかな。意外とセリフが変わっててびっくりした!変更の理由はわからないけど…

③物販、劇場の内装

再演でこんなに新しいグッズが発売されると思ってなかったので嬉しい悲鳴!CAN CANトートバックにHEY SISTA Tシャツ!本編の歌詞を使ったグッズ、なんておしゃれなんだろう。すっかりお気に入りです。
そして「日本公演オリジナルアイテム」という心踊る響き。キャストビジュアルを使ったグッズも爆買いしたら、合計金額がチケ代くらいになっちゃったの何かのバグかな?不思議だね!

初演ではなかった、スーベニアカップ付きドリンク!
このロゴが入ってるだけで欲しくなってしまう…
「宝塚歌劇の殿堂」かな?って思わず思ってしまう、写真の構成が神懸かっているパネルが2階ロビーに!
2階にもう一つパネル。
こちらは撮影スポットぽくて良い感じ!
アクスタは劇場内でも映えるよ〜

④その他

エレファントチームの初日が開け、アドレナリン大放出の興奮状態でXに鬼投稿して夜が明けた翌日のお昼だったかな。再びXを開いて目に飛び込んできたのは、音響についての酷評。しかも何名かがそう仰っているのだから事実なのだろう。ただ、私は何も気にすることなく、いや気付けずに初日もその後の公演も楽しんでしまったので、私の耳、大丈夫か…?とまずそこがとても不安になった。
大好きな作品を盲目的に擁護するつもりはないけど、悪い評判で有名になってしまうのは個人的には悔しい。観劇した方々の多くに満足される作品であり続けてほしいよ〜!
ということで、何か思うことあればXに投稿してエゴサされるのを待つよりも、公式アンケートに書いた方が公式に届くと思う派なので、余計なお世話ながらリンク貼っときます。Xに書くことを否定するわけじゃないし意見するのは自由だけど、本当に修正してほしい内容を公式に届けることが目的であったなら、アンケートが一番望ましい方法なんじゃないかな、と信じてる!音響の悪さがわからなくてごめんなさい!

【6/20ソワレ】エレファントチーム初日(平原サティーン×井上クリスチャン)

今年のエレファントチーム!
この景色、感極まるよりも懐かしく思う気持ちの方が強かったな

「……今年も『なんて凄いんだ!』」

初日挨拶の大拍手を受けた第一声でこれを言ってくれる、裏切らない井上芳雄さんがやっぱり好きだ。Welcome to the Moulin Rouge!のオープニングナンバーの途中、ショーストップさせるほど拍手が止まらない客席 vs 拍手を遮らずに表情全体で感動を示したり頭抱えたりして(逆にこうやって芳雄さんは間接的に私達の拍手を煽ってるんだろうなとすら思える)初めてムーランルージュを訪れた青年として無限の引き出し全開でリアクションし続けて「……なんて凄いんだ!」で締める芳雄クリスチャン!この客席vs芳雄さんの謎の攻防懐かしいーー愛おしいーーー大好き!!
客席も大熱狂!1階席にいたけど、フィナーレが始まると徐々にスタンディングでノリノリの客席に、初日ならではの特別感を感じて楽しかった。
特筆したいのは、橋本さとしさんが演じるジドラーの安定感。もしかして前世でキャバレーの支配人でした?そんなふうに思ってしまうほど、さとしジドラーのハマり具合を再確認。バチッとかっこよく決めるテンポの良い口上、その耳馴染みの良さの正体は、さとしさんならではの抑揚かな!ステージを降りた後のお茶目で一文なしのジドラーや、劇中劇での「ここ小道具あるよね?」のギャング役など、ショーシーンとのギャップにもまた惚れ惚れしちゃう。

平原サティーン×井上クリスチャン ショー要素強めのこてこてエンタメ

自由奔放、天真爛漫な魅力で皆んなを惹きつけていくサティーンと、そんな彼女に夢中になった青年の、これぞエンターテイメント!そんな愛の物語だと思った。欲しいところに届く刺激。昨年の観劇時の印象として、3時間変わり続ける芳雄クリスチャンから目が離せない中毒的な没入感があったけど、そこに追従する、というか負けないくらい「生きるエンタメ」状態だったのがあーや!サティーン×クリスチャンが見せる、怒涛のショーステージ!喜怒哀楽も全てエンタメ!
平原綾香さんのサティーンは、昨年よりも(というか私の記憶の中のあーやよりも)ますますパワーアップしてて最高でした。コミカルな印象が強いサティーンだなぁ。唯一無二の歌声だからこそ、歌い出すとどんな時でも“平原綾香”の主張が強めな印象があったのだけど、そのいわば独特とも言える強すぎる歌声によって現実味を奪い、もしサティーンが想像上の存在だったら?クリスチャンにとってイマジナリー・ミューズだったら?そんなことまで考えてしまった。流れるようなセリフも相まって非現実感が強く、なんというか、羽が生えたような自由さを感じたんだ。だからサティーンの肉体が命尽きても、サティーンの記憶はクリスチャンの中で生き続けるし、クリスチャンが楽曲制作を続ければサティーンの命は再び輝くんだ。

そして芳雄クリスチャン。そんなに幼い役作りだったっけ…?Your Song歌い出しの「稼ぎもないのに」の(あえて言うけど)辿々しさに驚いた。でもそこからの緩急が凄いんだ。歌詞を紡ぐにつれ求心力が増し、「精一杯の愛を」でサティーンの心の扉も開けちゃうし客席の空気も完全に掌握する。極上のデュエットの最高潮でサティーンの唇に到達できた時の衝動的な激しさと、どろどろ溶けちゃう理性とのギャップに心の中で悲鳴あげながらもすっごい好きなシーンだな。初日のここのキスの激しさ凄すぎてびっくりしちゃたんだけど、身長差のあるあーや相手だと膝をグッと曲げるとこも好きすぎるし、公爵じゃないとサティーンにバレて「あなた誰?!」を受けて「ぼくはくりすちゃん…」の可愛さ何?!助けてほしい。
ムーランルージュのクリスチャンって感情ジェットコースターな役で見ていてとても楽しくて、好きな俳優が演じてるから尚更夢中で、そういう状況で圧巻のパフォーマンスをする芳雄さんはやっぱりさすがだなと思うんだけど、オペラグラスの先にいるのは勿論初演の芳雄さんではなくて。後半のChandelier→ロクサーヌのタンゴ→Crazy Rollingの流れは、昨年感じたよりも深くて濃く、自分探しのためにパリに来て様々な経験を積み、人生の喜びも絶望も知っていくクリスチャンのバックボーンには、2023年のミュージカルイヤーを駆け抜け、舞台上で数々の喜怒哀楽溢れる人生を送ってきたご経験の結晶があるのだなとも思い、追いかける側だったこの1年の思い出も走馬灯のように蘇って、胸が熱くならないわけがないの。「世界最高齢のクリスチャン」だと自ら紹介してたけど、経験豊富な芳雄さんが、派手に豪快にそして時には繊細に、色んなアプローチで魅せてくれる生き様が好きなんです。

Crazy Rollingは狂気の歌ではなく、涙ながらに救いを求める歌。そう解釈したくなる初日だったな。

平原サティーン×上野ロートレック 手が届かない憧憬

上野哲也さんのロートレックは、高めの声と(敢えてだと思うのだけど)真っ直ぐすぎるようなセリフ回しでロートレックのリアリスト的な立場よりも純粋さが際立っているなと思ってて、気持ちのままに振る舞うあーやサティーンと、彼女とどうにかなりたいわけではないけど手が届かない一生モノの憧憬を抱く上野ロートレックから、あーやサティーンの非現実感が際立っていたな。ロートレックは上野さんと上川一哉さんのアプローチが180°違うなと再演でかなり強く思っているので、やはりWキャストの面白さってそこだよね。

中井サンティアゴ×藤森ニニ 本能的に惹かれ合う“もう一つのロマンス”

理性では語れない、動物的な衝動と求愛を感じて好きなんです。中井智彦さんと藤森蓮華さんの二人の並び…ソロだと優雅でしなやかな印象があるのに、Backstage Romanceでの薄暗さが似合うような湿度や心の距離感にとても掻き立てられるんだ。サティーンとクリスチャンのように、私達にも二人の心の動きがわかるような明確な演出はなく、Shut Up and Raise Your Glassの「抱きしめてくれたら!」「どっか行って!」以降明確な描写はないけど、確かにクリスチャンが語るように“もう一つのロマンス”なのだなという説得力。
しかし蓮華ニニ……昨年よりも一層“仕上がってる”感が強くて、ムーランルージュでニニを演じることの矜持がその美しい一挙手一投足から伝わってくるの大好き。ロクサーヌも目が離せないので、芳雄クリスチャンと蓮華ニニのどちらを追うか一瞬でも葛藤した時間が勿体無くて、目を増やして視野広げるか前方席に座りたい(ド直球な欲望)。本当にかっこいい。今年も私のオペラ泥棒でいてください。

【6/21 ソワレ】ウィンドミルチーム初日(望海サティーン×甲斐クリスチャン)

ウィンドミルチーム初日!『イザボー』率!シャルルセッツ!
2階A席下手ブロック!「プラみ」「のぞみ」に続いて「くるみ」になったかもしれない象さんのCAN CAN(あーや命名)。

「日本ならではのムーランルージュを作り上げようではありませんか!」

まるで選挙公約かな?という勢いでメチャクチャにカッコ良い初日挨拶を決めた望海風斗さん。甲斐翔真くんから挨拶のバトンパスをされる時も「任せて!」って。本編とのギャップに溺れてしまうよ…ムーランルージュのスターでありつつ楽屋で皆を鼓舞するサティーン像を感じた。
ウィンドミルチームのプリンシパルキャストには1月のイザボーに出演されていた望海さん、甲斐くん、上川さん、中河内雅貴さんが皆んな揃ってるのがまた不思議な気持ち。皆さん、再演の稽古場に戻ってくるまでにまた別の人生を生きてきたのだな。そして後述するけど、ウィンドミルチームは「関係性のおたく」にはたまらないな、と思う瞬間が多々あった。
そしてどうしても言いたい!松村雄基さん!めっちゃくちゃに自由なジドラーとして帰ってきた!昨年はどうしても弾けまくるさとしジドラーと比べてしまったところが否めないけど、この自由奔放さを楽しんでいる松村ジドラーの清々しさや、お茶目な可愛らしさ、様々な良さが詰まってた。

望海サティーン×甲斐クリスチャン 背徳感たっぷりのどきどきロマンス

「危ない真似はやめて」「大丈夫だよ!(根拠のない自信)(でもキラッキラのクリスチャンだから説得力が高い)」、そんな展開があってもおかしくないほどドキドキハラハラ、でもそういう状況がもたらす吊り橋効果が最高!望海サティーンと甲斐クリスチャンのペアは、“いけない事”だからこそ一層燃え上がる、そんな愛の物語。役作りの上での二人の温度差が効果的になってて。というか甲斐くん、こんなに脳内お花畑なクリスチャンだったっけ?となってしまうほど、自由に伸び伸びとしたクリスチャンがそこに居て、観ていてとても気持ちが良かった。私もムーランルージュを相当好きな自覚があるけど、甲斐くんのムーランルージュ愛には負けちゃうと思う。
再演で帰ってきた望海さんのサティーンは、13歳で身売りせざるを得なかった彼女をロートレックが語る「彼女の魂は燃えていた」を命尽きるその瞬間まで体現するような、煌めきというよりもギラつきが強めの退廃的なヒロイン像という印象で益々大好き。Sparkling Diamondも、Fireworksの歌い終わりも、見えない敵を見据えるようで。その敵は金づる(貴族)なのか運命なのか病魔なのか。そういうギラつきを彼女自身が持ちつつも、甲斐クリスチャンと並ぶと「現実を見ている落ち着いた存在」という位置付けが強く、暴走するクリスチャンを嗜める存在のようで。でもコミカル度が増してて、あーやもやっていたけどYour Song前の「立ったままやりたいな」のアンジャッシュで脚をガバーッて開くサティーンにどっきどきでした。クリスチャンだけでなく私達の下心まで直々に煽ってくれるサティーンの、象の部屋ならではの特別感。ムーランルージュのステージでは、サティーンクラスの女優からそんな直接的なサービス受けられないもんね…コミカル度が増すからこそ、シリアスとのギャップも良いし、そのどちらもが合わさった絶妙なリアルさがすごく良いなと思った。その象徴として、Crazy Rollingでの限界状態での「私の葬式で、下品な歌を歌ってね」なんだけど、冗談めかした自虐とジドラーへのリスペクトともう時間がない悔しさと、そういったものが無いまぜになった笑みが忘れられない。でもね、生への執着はとっくに捨ててるけど、クリスチャンの歌を世界に届けることは諦めてないの。
クリスチャンの腕の中で召される望海サティーン、白い肌と頬のチークがすごく綺麗に際立つ照明だったのが印象的だったな。最後の最後に美しさが最高潮を迎えるのも、なんて皮肉なのだろう。

望海サティーン×伊礼公爵 悪役(かもしれない)同士の駆け引き

舞台上での役同士の絡みに萌える「関係性のおたく」だという自覚があるけど、ウィンドミルチームのサティーンと公爵の相性の良さよ!Sympathy for the Dukeの「試してみりゃ 手に入るかもしれない」で二人の声が重なる瞬間の高揚感。これだー!ってなった。ミュージカル畑で活躍する俳優同士の声の相性ゆえの特別な瞬間でもあり、二人の“悪役を演じる上でのこだわり”も背景にあるのかなと。公爵は典型的な悪役で、伊礼彼方さんは悪役の中にも正義を見出すんだとサウンドイマジン出演時に仰っていたけど、その番組内で望海さんからも滲み出ていた悪役愛がぶつかるような、表面では見えないけど「悪」の駆け引きが本当にかっこよくて痺れた。サティーンは悲劇のヒロインだけど、望海サティーンは「見方によっては悪役なのかもしれない」と思えるというか、彼女の中に眠る負の要素(金銭的な下心、身体を蝕み始めた病魔)をピュアなクリスチャンには隠してる、罪なヒロインではある。望海サティーンの「あなたにとって私はファンタジー」というのは、嘘で塗り固めた存在だから、という意味合いでもあるのかな。

中河内サンティアゴ×加賀ニニ 噛みつきそうなBackstage Romance

サティーンとクリスチャンのペアと違って、サンティアゴとニニは昨年からもチーム制が変わらないのもまたひとつの良さだなぁと思ってて、昨年から引き続きウィンドミルチームだったガウチさんと楓ちゃんの安定感。ガウチさんにリードされるような楓ちゃんという絵に思えたBackstage Romanceだけど、その華奢な身体に収まらないほどの燃え上がる心を感じて、すごく応援したくなってしまう。

Backstage Romance後の楓ニニの「当然でしょ、ブタ!」の威力よ!可愛すぎていじらしくて胸押さえるしかない。退廃的なムーランルージュの中でも楓ニニは大事に育てられた女王猫のような印象を持っているのだけど(野心を感じる蓮華ニニとの違いを勝手に考えて萌えてる)、普段の楓ニニなら絶対使わないだろう言葉を心惹かれるサンティアゴに浴びせるその状況、たまらん。楓ニニ、サンティアゴによって野心的な魅力を引き出されているように感じるんだ。見方を変えれば、好きな人に魔法をかけてもらえるお伽話のような状況だけど、そうではなく、より本能的な部分を開拓されている臨場感にサンティアゴとニニならではのロマンスを感じて夢中になってしまう。楓ちゃん、大阪の大千穐楽を持って芸能活動を終えられるとのことで、せっかくこの作品で出会えたのにとても寂しいけど、一回ずつの公演を大切に観劇したいな。

【6/22マチネ】望海サティーン×井上クリスチャン初日

待ってた…………………………………!!!
1階後方センブロ!
距離はあってもセンブロの没入感は特別だな。

各チームのシャッフル開始!

サティーンとクリスチャンのペアがシャッフル。サンティアゴとニニのペアもシャッフルされるのでこちらも4ペア拝見できて嬉しかった。
芳雄クリスチャン、上川ロートレック、中河内サンティアゴの並び。「なんて凄いんだ!」に至る前にロートレックとサンティアゴの方を振り返るクリスチャン可愛いな…初めてムーランルージュに連れてきてもらって嬉しかったんだね…保護者に向かって笑顔を向ける子供のようだった。Truth Beauty Freedom Loveのナンバーで陶酔しながら歌うロートレックを二人で鼓舞するようなクリスチャンとサンティアゴのお茶目さと、並びの綺麗さ。
松村ジドラーは初日に続けてずーっと可愛い。So Excitingで割と自由なセリフとして位置付けられている「ケツを出せ!好きィ!」は鉄板アドリブになるのかな。劇中劇の「俺のカミソリをお見舞いするぞ〜」で念願のカミソリを手にできた時、全身でカミソリの刃と同じようなカーブを表現してたの、もう全力投球のジドラーを感じて愛おしさ止まらない。
あと、カテコでガウチさんが蓮華ちゃんをリフト→伊礼さん脚上げ→上川さん脚上げ→松村さん脚上げ→という奇跡の連鎖があって、昨年カテコで思いっきり脚上げがちだった蓮華ちゃんからの連鎖によって脚上げしちゃう伊礼さん上川さんっていう流れが蘇って楽しかったし松村さんまで参加しててこれまた胸熱だったんだけど、蓮華ちゃんではなく先に伊礼さんから今期の脚上げし始めてるという予想外の展開!ムーランルージュはカテコも楽しい!

望海サティーン×井上クリスチャン 血の色が似合う二人が転がり落ちる悲劇

はい、1年間ずーっと待ってました…大ッッ好きなペアの初日。望海さんと芳雄さんのペアは「推しと推しの共演」にあたるので(二人のFCに入ってるので許してほしい)、昨年一番回数を観たし、一番思い入れがある回。そしてどちらをオペラで追ったら良いかわからなくなる回。情緒がおかしくなりそうだったので開演前はXも見れず粛々とムーランルージュのロゴ入りのスーベニアカップと帝劇クロージング期間で復活した「幻の豚まん」を手に入れたりしていたな…
開幕してShut Up and Raise Your Glassのナンバーが始まりまず思うのは、二人の声の相性が最高だってこと。だから幸福の絶頂に達する時も絶望の沼へ堕ちる時もあっという間。相乗効果でどこまででも行ってしまうのだから。Elephant Love MedleyもCome What Mayも、どれだけ幸福感に満ちるのだろうと惚れ惚れしてしまうのだけど、クリスチャンが劇中劇で言う「地獄へ堕ちるなら、堕ちよう」を一番体現してるペア。ムーランルージュの「赤」って何の色を指しているんだと思う?血の色を一番感じる、そんな愛の物語。
昨年の9月のバイマイで公演の思い出を語っていた芳雄さんが「相手によって僕の演技も変わるし感情の動き方が変わる」と仰っていたことが印象的だったけど今年もその通りで、序盤からそれを思い知った。同じ舞台でも同じ芝居を二度はしない芳雄さんの表現の引き出しの豊かさを実感したし、初日に救いの曲だと感じたCrazy Rollingは救いではなくやっぱり狂気で終わる曲なのかもしれない。クリスチャンの狂気はCrazy Rollingでは完結せず、その後の、弾を込めた本物のピストルをサティーンに向ける時が1番のピークで、彼のほうを振り返って声を絞り出すように歌い始め、もう身体が限界の望海サティーンと、精神的に限界の芳雄クリスチャンの、蜘蛛の糸一本でかろうじでお互いの気持ちが繋がってるかのような極限状態がもたらす緊張感がやっぱり大好きで、二人の真骨頂はラストシーンだなと思ってる。
Elephant Love Medleyの間奏、「愛し合うんだ、素直に」で乱れたサティーンの髪を耳にかけてあげたり、召されたサティーンに容赦なく降り注ぐ紙吹雪を愛おしそうに丁寧に取り除いてあげる芳雄クリスチャン。偶然の産物である尊い光景もこの作品ならではだなぁと初演を思い出した。連れて行かれるサティーンを振り返ってまで名残惜しそうにするクリスチャンが忘れられない。
ただ、あまりにも思い入れがありすぎる二人の初回、冷静になれなかった私のせいで秒で終わってしまったのが否めない…あまりにも夢すぎて、ほんとに再共演してたよね?ってまだ信じられてないところがある。この二人の回を今年も沢山見る予定なので、もう少し、今年ならではの望海サティーン×芳雄クリスチャンに浸りたいな!

望海サティーン×上川ロートレック 湿度高めのノスタルジー

すっっごく良かった。 「僕が君を不滅にする!」のクライマックスだけでなく、Come What May前にクリスチャンには未来があるんだとサティーンを諭した後の「私達は?」「悲劇俳優ってとこかな」でもサティーンの手を握るロートレック。でも、手を握ろうと、それは恋心を超越した、家族愛のような絆の太さ。昨年の「僕が君を不滅にする!」はきっと最後の告白になると彼自身もわかってるだろうにサティーンの目を見れない上川ロートレックの奥手さがすごく刺さったけど、今年は達観したような、ただ自分がどんな立場でも、サティーンとの思い出を大事にして、湿度高めに幸せを願い続ける頼もしさがめちゃくちゃにかっこいいなと。

【6/22ソワレ】平原サティーン×甲斐クリスチャン初日

初めましての平原サティーン×甲斐クリスチャンペア
2階最後列、コスパが良すぎる

今年新設のC席 天井席から「みんなでCAN!CAN!」

正直、コスパめっちゃくちゃ良い。土曜だったので6500円、諭吉1枚でお釣りか来るムーランルージュの贅沢さを味わってきた。昨年もB席最後列で観劇したこともあったし、当時のその席と同列なわけだから何の文句もなく、むしろてっぺんからCAN CANするという滅多にない高揚感に包まれた。あえてオペラを構えずに視線を遠くにやってみると照明全体の巧妙さを感じたり。ただ、初めて観るペアだったからこそ近くで観劇したいなぁと途中から思ってきてしまったので、やはり少しでも近距離の席で表情までちゃんと捉えたい気持ちが強いなと改めて実感した。まだ再演のS席には座れていないので、早く近くでも観たいな〜!

平原サティーン×甲斐クリスチャン ファンタジーとリアルの融合ゆえの儚さ

なんて切ないペアなんだろう。「あなたにとって私はファンタジー」、それを体現するようなサティーン。望海さんが言うこのセリフには、“ファンタジー”=“嘘”を感じたけど、エレファントチームの初日の時に感じたあーやの実態のない非現実的な印象を拭えていないどころか更に増し、あーやの“ファンタジー”にはその意味そのままに、幻想のような儚さを感じるんだ。でも、後半に連れてリアルさが増していき、Your Song Repriseの後ようやく触れ合えた二人のシルエットとして甲斐クリスチャンの腕の中にすっぽり包まれるサティーンという体格差がすごく胸に来た。ひとときの夢のような儚さがある、そんな愛の物語だったな。
あーやのコケティッシュな振る舞いとパワフルな歌声のギャップが際立っていて、あーやサティーンは自分の心の琴線に触れた時に歌唱力が爆発するような、歌い出す時は彼女の中で特別な感情が生まれる時なんだなと思った。それを見守るような甲斐クリスチャン、という状況がとても良くて、でもYour SongもElephant Love MedleyもCome What Mayも豊かなあーやの歌声を間接的に引き出すのはクリスチャンなんだよね。そんな彼の矜持も感じるようなデュエットがとても良かったな…望海さん回に引き続き、甲斐くんはソロの時も聴かせてくれるけどデュエットで勢いがさらに増すような印象があって。愛の力を信じるピュアなクリスチャン像が本当に素敵だな。
サティーン亡き後、腕の中で召されたサティーンの温もりに囚われ、両手を見つめていたクリスチャンという光景も忘れられない。切なさ倍増。フィナーレのCome What Mayは、客席に向かって甲斐クリスチャンが歌うのではなく天に向かって歌いかけるような印象があり、サティーンの物語を世界に伝えるのではなく、「僕達はやり遂げた」ということを彼女にも伝えたいのかなという新たな境地を感じた。クリスチャンはどこまでも自分本位(つまりサティーンファースト)でいて欲しいので、最後までそれを感じて良かったな。
カテコの最後の最後、二人が両手でひとつの大きいハートを作ってくれていて、今季こういう遊びを初めて見たので湧きつつ、そんな二人のifの世界もあったのかもしれないなとやっぱりまた切なくなったりした。

平原サティーン×K公爵 シンガー同士煽りまくるSympathy for the Duke

サティーンはお金のために公爵の相手をするナンバーだけど、ばちばちにぶつかり合うシンガー同士が歌唱力で殴り、煽りまくるようなこのデュエットがかっこよかったな…
導火線が短い、沸点の低いK公爵が子供のようで好きだ。何から何までわかりやすく、典型的な悪役だからこそ、このシンプルなラブストーリーの中で一際目を引く登場人物として存在してる。大抵のことは見逃して笑顔を貫き、最後の最後に自分のプライドをズタズタにされたところでブチ切れる伊礼公爵との違いも本当に面白い。

【おわりに】“愛”の定義 なんて素晴らしいムーランルージュのある世界

4公演について色々書いたけど、サティーンとクリスチャンの間にあるものは、どんなに形が真っ直ぐでも歪んでいても“愛”なんだよな、と改めて。「200色あんねん」のフレーズとニュアンスと同義です。

初日楽絶対行きたいマンは卒業したし、回数だけが全てではないけど、ムーランルージュは別。ムーランルージュだけは特別。それを合言葉にしながらチケ取りに臨んで初日を迎えたけど、やっぱり複数回行きたいんだという気持ちがさらに強くなった。
もう手持ちのチケットが4枚も無くなってしまったという虚しさはあるほど、今から終わるのが怖い。「なんて素晴らしい君のいる世界」ならぬ「なんて素晴らしいムーラン・ルージュのある世界」で今年も熱い夏を思いっきり過ごしたいな!おわり。


もはやムーランルージュ狂みたいになってるけど、それを証明するかのように(?)昨年の公演について書いたnoteも再掲✍️


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