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“赤”の呪縛とメリーバッドエンド(続・『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』 望海サティーンと芳雄クリスチャンについて)

7月上旬に書いた長文の続きです。2023年の『ムーラン・ルージュ!・ザ・ミュージカル』は、元々この二人が揃う回をメインにチケットを取っていたので、観劇回数も多かったし、相当気持ちが熱いです。そして先日の芳雄のミューへの望海さんゲスト出演&芳雄さんとの『星のさだめ』のデュエット……ありがとうございました。二人の声が重なる時に「これだ〜〜!!!(涙)」ってなり、心揺さぶられて鳥肌が立つような興奮と、あの熱狂の日を懐かしく思い涙腺が熱くなるような感動の瞬間が証明するように、やっぱり私はこの二人の並びとデュエットが大好きだ……改めてそう実感した。望海さんの凛とした神々しさと、相手役を見つめる芳雄さんの眼差しと、溶け合う声。もう抗えないです。

エルトンジョンのこと、勝手に恩人みたいに思ってしまう現象。

「ムーラン・ルージュ」、このフランス語を直訳すると「赤い風車」なわけで、帝劇のロビーも、客席も、開演前の舞台セットも全てが真っ赤。パリの本場のキャバレー、ムーランルージュも全体的に赤いと聞いたことがあるけど、そもそも赤って何の色…?熱狂を示唆する「炎」。燃え上がるほど熱くなる「心」、そして、「血」の色だったのかもしれない。そう思うとまた別の解釈が生まれそうだ。サティーンが握りしめる白いハンカチに染み付いていたのは、赤い血。
プレビュー初日翌日のバイマイで、バズラーマン監督に「悲劇性を感じたのは日本公演が一番」だと言われたと芳雄さんが話していたけど、望海サティーンと芳雄クリスチャンの回ではその悲劇性をすごく感じた。お涙頂戴な展開が残されてないと満足しない国民性がそうさせるわけではなく、感情が揺らぐきっかけを掴んだら最後まで引き摺り下ろしてくれるような幕のおろし方。ある意味、一種の責任の取り方。二人が揃うと幸せが何倍にもなり、苦しめば輪をかけて転がり落ちて、二人が見せてくれる喜怒哀楽の相乗効果ってとんでもないんだなと思い知らされた。 

派手な音楽やセットの中では誤魔化しきれないほどの、どうにもならない悲劇をしっかり描いてくださる繊細な掛け合いに心掴まれる日々でした。2幕後半の、上手と下手それぞれで涙ながらに、それでいてパワフルに歌われるCrazy Rollingのナンバーは、もう本当に、心の底から大好きで、お二人ともしっかり見たいのに目が二つしかない自分を嘆いたよ。

悲劇のはずなのに、二人が迎えたゴールはもしかしたら幸福だったのでは…?と思わされるほどの含みもあって、本当に深い。望海サティーンと芳雄クリスチャンのラストシーンはエリザの「泣いた、笑った、挫け、求めた」に近いものがあると思ってるけど、悲劇なのに二人だけで到達した確固たる幸せが残り続けるのが逆に切なくて、幸せも不幸も紙一重なんだという儚さもあって。

8/24マチネの組合せラスト回、召される望海サティーンを追いかけるように名残惜しそうに振り返り見つめ続ける芳雄クリスチャンの背中が印象深くて、フィナーレのCome What Mayが始まっても、多分気持ちが戻ってこられてなかったんじゃないかなと思わせられる涙声。そんな余韻も、観劇がもたらしてくれる宝物だな。

https://x.com/xxx3220amo/status/1694611073465536761?s=20

畳み掛けるような2幕に気持ちが持っていかれそうなところがあるけど、8/24マチネのElephant Love Medleyも最高オブ最高…と心震わせながら観ていた。ソロでも客席を支配するほどの技量を持つ二人が、こんな細かな掛け合いの中で心の機微を見せてくれるのが大好きすぎる。芳雄さんが闇堕ちしなくても望海さんが血を吐かなくても、二人が素直に愛を歌い合うのがシンプルに最高なんだ。「じゃあ僕が恋人になろう!」から始まる、ピアノが流れる中でクリスチャンが紡ぎ出す言葉はさティーンにとっての救いだ。
Elephant Love MedleyとCome What May、状況は違えどどちらも一幕と二幕それぞれで最も幸せの絶頂を迎える瞬間。どちらも、ちょうどデュエット中にバックハグになる時に声が混ざり合うのが本当に好き。溶けるというか、声の相性というか、本当に圧巻だった。はやウタで披露されたCome What Mayも好きだった… 

「マリー、あなたは誰なの?」の劇中劇から続くクライマックスは、もはや二人以外誰も音を立ててはダメと思ってしまうほど、緊張感がものすごくて。息を止めて観てた。二人の描く最後はこうだったんだな…という、悲壮感の中に幸せがあるような、でもクリスチャンの中では拭い切れてない悲しみが続くような。サティーンが召された後、みんなが手を差し伸べるところでようやくサティーンが運ばれる現実が視界に入り、サティーンを目で追うクリスチャンの背中から漂う喪失感が衝撃的だったな。

こんなに好き勝手想像を働かせてしまうほどの余韻を残してくれた2人だけど、カテコではブチ上がりまくりの音楽と舞台上のキャストと思いっきり手拍子してる客席の熱狂の中でさっきまでの展開なんて忘れて超元気にぴょんぴょん跳ねながら手を繋いで転生してきてくれる2人がさぁ…もうほんとにわけわからないくらい大好き。2人の組合せラスト回だった8/24のマチネ、舞台奥センターで硬くハグを交わした2人の光景は墓場に行くまで脳裏に焼き付けたい。こんなにムーランルージュに夢中になれたのは紛れもなく2人のおかげです。沢山感動させてくれてありがとうございました。
等身大とか、本場のブロードウェイではこうだとか、イマジナリーな存在とか、キャストによって色んな感想を目にしたし、私も色んな感動と気づきをもらえたけど、望海サティーンと芳雄クリスチャン回にどハマりした身としてこの組合せを振り返るのであれば、血の色が強めな“メリーバッドエンド”回かな。サティーンが吐く血も、クリスチャンのピストルによってどちらかが血を流すかもしれなかった展開も、血が通った人間らしさも。こちらから見れば悲劇なんだけど、悲劇だって誰が定義したの?懸命に生きた軌跡だよ。そんな声が聞こえてきそう。

そして千秋楽後のバイマイで聴きたかった話を聴けて感無量。20年来の二人の関係性と重ね合わせても胸にくるものがある。これまでの歩みの肯定。開かれる扉。早く今年のムーランルージュが観たいよ!!!

「扉が開いた」話、望海さんはここでも語ってくれていたね。

今年の再演も本気でチケ取りに挑んでいるので、「運命の神様 あなたは女神(東宝版のスカイマスターソンによると「俺のBaby Luck 幸運の女神」かな)」、どうかどうか、微笑んでください。おわり!

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