見出し画像

おかえりもありがとうもおめでとうも非接触のキスシーンも(『ムーラン・ルージュ!・ザ・ミュージカル』 東京公演3週目の感想)

誰にとっても怒涛の一週間、本当にお疲れ様でした。

これを投稿した今、もう開幕何週目?始まったら想像してた以上にノンストップで公演期間が過ぎていき、いよいよ数日後に東京千秋楽を控えている中で今更感半端ないけど、3週目から振り返りをしたい!4週目はのぞよしペア固定での観劇だったけど、3週目はサティーンとクリスチャンは全ペア観れて嬉しかったな。あとは井上芳雄さんのお誕生日と、意図せず復帰公演となってしまった7/4!色々な想いが交錯した観劇週間だった。

週ごとの振り返りの書き方を少し悩んでいるけど、3週目は4回見てどれも全然別だったので回ごとに書いてみます。4週目は固定ペアなので、違う書き方にする予定!

【7/4ソワレ】芳雄さんおかえりなさい!甲斐くんありがとう!

2階前方!観やすい〜!

忘れられない公演になった。まず、今日まで公演を繋いでくれた甲斐翔真さんに心からの感謝を。初演ではプリンシパルがマチソワどちらも登場することもあったものの、再演はそれが控えられがちになっている中で(Wサティーンはどちらも1日だけマチソワの日があるけども…)、突然の連投に対応してくれて、本当にありがとうございました&お疲れ様でした!

そして芳雄さん。皆が待ってた復帰だけど、心配させてたまるかと言わんばかりに歌の声量も音圧も演技も情感も全部フルスロットルでカムバックしてくれて、無敵のヒーローすぎて益々大好きになっちゃった。

復帰公演だろうとムーランルージュにとってはただの通常回なのでカテコで特別な演出はないけど、オフマイクなのに「ありがとー!」って叫んでくれて、2階席にまで聴こえて感極まっちゃった。戻ってきてくれて本当に良かった!!望海風斗さんとのハグで泣いちゃったのぞよしの民です。

そしてTLで見かけていたけど、おそらく6/29のソワレ以降のキスシーンが宝塚風の非接触なものになったようで、私は6/29マチネぶりの観劇だったのでこの形式を初めて見たんだけど、この特別バージョン、とてもとてもよかった……キスシーンだけど、実際にはキスをしないからこそ、キスをしてるように見せる演出、もっと言うと、全てを見せないからこその背徳感、たまらなかった。

象の部屋でのYour Songの曲終わりのキスは下手側のサティーンが首を傾けることで死角を作り、1幕ラストのElephant Love Medleyでは下手側のクリスチャンが手で隠し。クリスチャンが手で隠すのって、クリスチャンだけがサティーンの唇だけでなく表情まで独り占めする独占欲のようにも感じて、イレギュラーな特別演出が生み出す副産物に新たなときめきが生まれてしまう。
Come What May前にロートレックの目の前でするキスはYour Songと同様に下手側にいる方(クリスチャン)が首を傾けて隠してて、Your Song Rep.で大葛藤のうえ最後の最後にようやく触れ合えるキスは1幕ラストと同様にクリスチャンの手で隠してて。
ムーランルージュはキス稽古もあったと以前芳雄さんがテレビ出演された時に話していたこともあり、本来の形が望ましいのはわかってるし、その制御できないほどの勢いに心を持ってかれがちではあるけど、イレギュラーなこのパターンも、見せないこそ(見せられないからこそ)想像力を掻き立てられて燃え上がってしまうんだ。

望海さんの、グルーヴ感も猫撫で声も悲劇性も強まってる。Fireworkは情に寄りつつもグルーヴ感を失わないリズムの管理能力の高さが伺えたし、最後の「隠しててごめんなさい」はもう、本当にずるいよね…週を跨いじゃうけど、先週6/27の観劇時にすごくハッとしたんだ。全編通してここが一番声が高くなるサティーンに、最後の最後で素直になれたんだなと泣いてしまうし、声が高めだからこそより悲痛にも感じて。

松村雄基さんのジドラーがめちゃくちゃにはっちゃけてて、もはやクセ強くなってて大好きです。口上も独特の言い回しで、テンポを刻むというより我が道を行くような勢いが好き。なのに、歌い出すとちゃんと身体にリズムが刻まれてるのがさすがなんだ。初演はこんなに濃くなかったと思う!松村色が徐々に全開になりつつあるジドラー像が今後も楽しみです。

興奮と感涙でぼけぼけ

前方席に座っていた友人か「今日のハートだよ」って分けてくれてとても嬉しかった。今日、というところがポイントだよね。

【7/6マチネ】見えないものなんてないよ前方席

初日以来ののぞかい

この日、マチソワで慌しかったこともあり、マチネの感想をXには全く書いてなかったのだけどiPhoneのメモを書き起こします。

D列!やっと座れた前方!
シャンデリアのデザインが一つずつ違うのも好き

一般発売でナビザで購入したこちらの席。今期はA席が多めで、S席もこれまで2階ばかりだったのでこんなに近いのは初演ぶり!やはりね、“近さ”からしか得られないムーランルージュの魅力もあると思うんです。プレショーで田口恵那さんが煙草の煙を燻らせながらこちらをじっと観てくれて、ああ、前方席だ〜〜って泣きそうになっちゃった。
オペラグラスを使う必要がないからこそ視野が広がるこの贅沢さを愛してるけど、Crazy Rollingの望海さんが目の前に来る席で、最後の方はもう情緒めちゃくちゃ。
ロクサーヌで後退りする時に指差しする甲斐くんがかっこよすぎて。公演PVでもこの一瞬が切り抜かれているけど、“絵”として素敵だなぁと。そういう、決める瞬間をちゃんと抑えてて抜かりない甲斐くんが、クリスチャンとしては結構ふわふわの役作りなのが個人的にとても好きなんだ。ふわふわ夢見心地ハワワ…ってなってる甲斐クリスチャンが、現実を見過ぎて先回りしながら少しずつ歩む望海サティーンに窘められるような構図も、逆に抵抗する彼女を引っ張っていくような構図も好きで、“似たもの同士”じゃない正反対な二人のラブロマンスとして成立しているのが良いなぁ。逆に望海さんと芳雄さんの回は、サティーンとクリスチャンを“似たもの同士”だと勝手に捉えてるので、そこで差別化してるなと個人的には思う。

あとこの日、私の幻覚じゃなければ笑、カテコで甲斐くんが片手投げキッスした後に望海さんも真似して片手投げキッスしてたの、すっっっごいよかったな… なんというか、激しい恋に堕ちた後にラストシーンまでの壮絶な過程を遂げる二人には吊り橋効果みたいなものが生まれてて、本編をやりきった後の達成感によって絆が深まりつつも、テンションは振り切れちゃってて好き。だから手を繋いで捌けていくサティクリが好きすぎるんだ…

ついに!

念願の赤玉を手にすることができました。でも自分のところに飛んできたというよりも、自分の席の近くに落ちてきたけど誰にも気づかれずに放置されてて、それなら私が持って帰って良いですか…?という控えめな感じでいただいてきた。D席だけど紙吹雪も座席には降ってこなくて、昨年はこの位置だともはや紙吹雪を浴びていたので、紙吹雪の量または飛距離が縮小化してるのかな。でももう少し後方の皆さんには紙吹雪届いてたし、発射位置も、花道とか2階迫り出し部分とか色々だから、きっと席の場所にもよるってことだね!

【7/6ソワレ】雷雨の中でのバースデー公演

濃厚すぎる……
安定の1階A席。どセン嬉しいー!!

開演前の雷の轟音と大雨、ものすごかったな…この天候、あんなに劇中で主役に雷を背負わせていた『ベートーヴェン』の公演期間に欲しかったな!笑 でも誕生日に雷雨を背負う時点でかっこよすぎるし、終演後はカラッと止んでたのも印象深い。

先日のバイマイでも芳雄さんが当日を振り返っていたけど、クリスチャンの登場シーンから拍手が鳴り止まず、上手から登場して「ROUGE」のEの方から文字の前を通っていくけど、「MOULIN」の前を通る時まで続いてたから、過去イチ長かったと思う!

この日、サティーンの最期で血の付いたハンカチが残されたままになるというプチハプニングがあって。サティーンが召された後、クリスチャンがそれを拾い上げ、何よりも大切そうに慈しんで自分のポケットに仕舞い込むという、奇跡の演出が生まれたのが思い出深いな。舞台上での忘れ物回収に勤しみつつ、そんなふうにハプニングを奇跡に変えてしまうなんて、やっぱりかっこよすぎるな…
通常回だとハンカチの行方はどうだったっけと後日確認したら、サティーンは最後までハンカチを掴んだまま退場するのよね。最後までサティーンは苦しんだんだなという悲劇性の証明でもあり、でも闘い抜いたヒーローの退場シーンとして誇り高くもあり、本当にいじらしくて大好き。

Come What Mayで込み上げてくるものがあったのか、涙が止まらない芳雄さんもとても印象的だった。この回は芳雄さんのファンの人が他の回よりも客席には圧倒的に多かっただろうし、復帰直後というのもあって。とはいえどんな感情だったか我々には分かりようもないけど、「私たちの物語を伝えて。そうすればずっと一緒。どんな時も」というサティーンとの約束を守ってるシーンでもあるし、この1曲でムーランルージュの世界線と客席を繋ぐ大きな役割もあるんだなと改めて実感したなぁ。

芳雄さんの誕生日とはいえムーランルージュとしてはただの通常回なのでカテコも絶対にマイクがオンにならないけど芳雄さんに何か叫ばせようとするカンパニー、という愛に溢れた舞台上の光景が忘れられないし、「なんて凄いんだ!!」って叫んでくれた芳雄さん。オフマイクで叫ぶ芳雄さんの光景は今週2回目だよ!(大好き)

平原綾香さんともハグしてて、カムバック&お誕生日でそれぞれのサティーンとハグする芳雄クリスチャンを拝めて胸いっぱいになっちゃった。今週は初日と千秋楽一緒に迎えちゃったかな?というくらいの盛り上がりでした。

あらゆるものを使って誕生日を祝いたい図
傘置きで440(よしお)番をいただいた図。
なぜか210(ふうと)番は存在しないんだよね…無念…

【7/7 マチネ】家族のような旧ウィンドミルチーム 平原サティーンに誰もが夢中

観たかった組合せ!
安定の1階A席

トップコンビの退団公演大千穐楽を迎える月組がいらっしゃる東京宝塚劇場の方に思いを馳せつつも、こちらの織姫と彦星に会いに来ました。初演の「ウィンドミルチーム」が固定されてる唯一のこの回を見たかったんです。

旧ウィンドミルチームは、あーやが中心になって物語が進んでいくその求心力か光るカンパニーだなと思った。天真爛漫なあーやだけど、だれもがあーやサティーンに夢中で、目を離せない。

個人的にはあーやサティーンと松村ジドラーとの関係性が好き。偶然かもしれないけど、ジドラーの「ベルベットの毛皮に騙されるなよ」のサティーンへの言い方が少し砕けてて、立場とかしがらみとかそういう概念が何もない、心の距離感ゼロの“家族”なんだなと腑に落ちた。あーやサティーンと加賀楓さん演じるニニとの関係性も良いよね…サティーンが病気を打ち明けるシーンの「ニーニ!」が大好きだ。

そして甲斐クリスチャン。ロクサーヌのラストで空を仰ぎながら笑みを浮かべたり、Crazy Rollingの「どうやって君を連れ出そうか」で“イマジナリー”サティーンの首を締めたり、クリスチャンにしか見えない独特の世界観がそこにあるんだろうなという細かい描き方がとても良い。ラストの劇中劇も「僕を見て……?」に至るまでがすごく優しい声で、だからこそ怖くて、そこも芳雄さんのクリスチャンとは真逆の役作りなんだなぁと。

あーやサティーンの感情が爆発する表現方法イコール“歌”だと思ってて、彼女を純朴に真摯に愛することでその感情を引き出していく甲斐クリスチャン、という、彼女の感情の鍵を実はクリスチャンが握っているんだというようにも見えて面白かった。サティーンに夢中なクリスチャンだけど、サティーンの心の声を無自覚に引き出しているのはクリスチャン。そんな、持ちつ持たれつの関係性にこそリアルを感じつつ、儚くてファンタジー要素もある二人のラブストーリーなんだ。

「私の病気のこと知ってるでしょう?」と話しかけるサティーンを上手で迎える、上野哲也さん演じるロートレックの優しい微笑みにうっかり泣いてしまうんだ。暖かみを感じるこの二人の並びも素晴らしいよね…

そういう優しいメンバーだからこそ、癖が強めで導火線が短くてキレやすいKさん演じる公爵を“共通の敵”として立ち向かうような構図もわかりやすくて、シンプルながらにも特大の愛を感じるこの座組によるムーランルージュ、とても新鮮な回だったな!

あやしょま
のぞよし

悲劇性が高いなと私が思ってるのは平原サティーン×甲斐クリスチャン回と望海サティーン×井上クリスチャン回なんだけど、それぞれの“悲劇”のアプローチが違って面白いな!あやしょま回は“切ない”、のぞよし回は“苦しい(極限)“なのかな、って思った。

『ムーラン・ルージュ!・ザ・ミュージカル』、キャストが変わる度に色々な見え方をする万華鏡のような舞台。今週は以上です!


再演の感想再掲✍️

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?