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タイさんの取材ヨレヨレ日記⑦ 銀行合併は大ニュース

私が金融業界の取材を始めた90年代半ば、都市銀行は13行ありました。覚えていますか?

大手行が三菱、富士、第一勧銀、三和、住友の5行。中位行が三井、東海、太陽神戸、大和の4行。このほかに協和、埼玉、東京、北海道拓殖の4行で、計13行です。

こんなにあった都市銀行も、90年代に始まった金融大再編によって、今はみずほ、三菱UFJ、三井住友のメガバンク3行に集約されました。私は飲み会の時、自分が酔ってないかどうかの判断基準として、かつての13行を思い出せるかチェックします。ヘロヘロに酔っ払ったときは13行はおろか、5行くらいしか思い出せなくなっています。

三菱銀行と東京銀行の合併は、95年3月に日経新聞のO記者が夕刊でスクープしました。私はそのとき、銀行取材担当。デスクに「おい。三菱と東京の合併が日経夕刊に載っているぞ」と電話で怒鳴られ、慌てて大手町の日経本社まで問題の夕刊を買いに走りました。

銀行の合併は大ニュースです。しかも、三菱グループの中核銀行と、国際畑に伝統的な強みを持つ東京銀行の合併は、大きな話題になるのが確実。スクープが載った夕刊を買いに来る人が多いと予想したためか、日経本社の前には大きなテーブルが並び、山積みされた夕刊を売っていました。

新聞を買い求める行列に並んでいると、銀行取材を担当している他紙のライバル記者たちも数人いました。私と同じようにデスクに怒鳴りつけられ、慌てて走ってきたのでしょう。情けない思いで、お互いに目を合わせないよう、うつむいて立っていたことを思い出します。

この時も、社内外から「どうして抜かれたんだ」「無能記者」などと、ぼろクソに批判されました。ひどかったのは、出張先の中国からわざわざ国際電話してきた先輩記者。「どうして抜かれるんだ。俺は10年前から、合併することが分かっていたぞ」と、大きな声で叱責してきました。

さすがに私もアタマに血が上り、「だったら、あんたが10年前に記事を書いたら良かったじゃないか」と怒鳴りつけ、握っていた受話器を机にたたきつけました。

あれもこれも、今となっては、懐かしい(?)思い出です。

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