コーポレート・ガバナンス関連ニュース(2019/10/28)
世界最強の投資家が日本を狙う日
【記事の注目ポイント】米エリオット・マネジメントが活発な動きを行っている。近年、アクティビスト(物言う株主)の活動に加え、上場企業の買収に本腰を入れ始めている。ファンド規模は380億ドル、166人の投資スタッフを抱えるなど、アクティビストとして最大規模を誇る。また、傘下には、PE(未公開株)ファンドであるエバーグリーン・コースト・キャピタルが存在するなど、上場株・未公開株の区別なく投資活動を行えることも特徴だ。
【コメント】ユニゾホールディングスの一連の買収劇に対しても存在感を示すエリオットだが、記事で書いてあるようにアクティビストとPEの両面の活動ができることが最大の強みだろう。PEでは、東芝メモリ(現キオクシア)や日立国際電気といった大型案件は、日本勢よりもKKRやベインキャピタルなどの外資系PEの方が存在感があるイメージである。今後、エリオットがアクティビストとしてだけでなく、PEファンドとしての活動も本格すると今以上にファンドによる企業買収が活性化するだろう。
覚悟迫った新浪氏 サントリー、ビーム統合の苦闘
【記事の注目ポイント】2014年5月にサントリーホールディングスが米蒸留酒大手ビームを買収してから5年。社運をかけた総額1兆6500億円におよぶ買収後、当初はサントリー側がビームの経営の自主性を重んじる姿勢を示したことがあだとなり、ビームはCEOのマット・シャトックが事実上好き放題に経営できる状態であった。取締役会は年4回のみ。取締役会議長はシャトックが兼務しており、経営陣を決める指名委員会も、監査役会も存在しなかった。2014年10月にサントリーHDの社長に就任した新浪CEOは、ビームへの働きかけを強み、子会社としてのガバナンスの強化に取り組む。新浪CEOの肝煎りでスタートしたグローバル人材の育成の社内機関である「サントリー大学」には国内外約300社のグループ会社から人材を招いている。今、参加率トップクラスなのはビームだ。
【コメント】サントリーのビーム買収は、JTのRJRナビスコのタバコ部門買収や日本板硝子のピルキントン買収のように、大型のクロスボーダーM&Aというだけでなく、買収当事者自体がグローバル企業に飛躍するための土台を手に入れたM&Aといえる。そのため、単に買収後のシナジーを創り出すだけでなく、M&Aをきっかけに大胆に企業変革(トランスフォーム)していくことが必要であり、それだけに成功への難易度は極めて高いものだっただろう。日本企業の海外M&Aでは、買収後の企業をどのようにコントロールするかがあいまいなままディールがクローズすることが多かったため、事実上統治不全という企業が散見されたのだが、サントリーがビームに行ったように、まずはガバナンスの強化を行うことが買収後のシナジー創出を見越しても必須になるだろう。
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