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六本木WAVE 昭和バブル期⑦

l  猫を預かった話 悲惨

 受話器の向こうから

「きたのさん 私 キャンディ!この前はありがとう! 電話来なかったからかけちゃった! 今日ね、いつもの〇〇さん(上顧客の芸能人)がリハ長くなるからってキャンセルになったのね それで今夜 急にお茶挽いちゃったの・・ね 会えない?」

「はい わかりました ではあらためてこちらからご連絡いたします!」

 今更手遅れなのはわかっていたが、一応誤魔化しセールストークを使いすぐに切った。何もなかったかのように、机の原稿に赤を入れながら、それとなく周囲の様子を伺った。

 部屋にいた全員が私の一挙手一投足を見ていたようで…固まっていた。
所長も新聞から目を挙げてニヤニヤこちらを見ていた。
営業スタッフは皆出払っていたが、女性陣は全員「ふーーーん?」という顔をしてこちらを見ていた。
夕子の意地悪!と思ったがもう仕方がない。

 しかも夕子の性格からこれで済むはずはなかった。
悪戯顔でしかも完全に上目目線で頷きながら…

「ねぇ 北りん キャンディちゃんてだーれ?」

所長の関西出身 秋田さんも

「北野 なんや キャンディちゃんて?」
 
完全にニヤニヤいやニタニタ顔である。

「いや その ちょっとした知り合いで…」 
 
夕子は腕組みしながら
 
「ふーん ちょっとした知り合いぃ…ねぇ…」
 
完全に探偵夕子になっていた
 
秋田所長 間髪を入れず 即
 
「アホか!」 
 
爆笑と女性陣の蔑みの目 目 目
 
営業所全体でからかわれているのがわかり、耳まで真っ赤になりながら逃げることも出来ない純情な自分は それからしばし行き場のない時間を過ごすことになった。(つづく)

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