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トランスフォーマーできる旅~日光を巡る視察の旅 その2~

数日間、鹿沼市と奥日光を視察した後は、輪王寺と日光東照宮のあるエリアへ向かいました。日光東照宮などによって繁栄した小さな町を視察する中で、神社仏閣の建設と維持を支援するためには、インフラへのアイデアが必要であると考えたからです。

熱心な僧侶が「止観」を通じてガイドしてくださる輪王寺を訪れました。

輪王寺は、密教的傾向のある山王一実神道(天台宗)の寺院でありながら、多様な修行も取り入れている場所でもあり、「止観」は本質的には座禅と同様の修行法です。

あとから分かったことですが、対応くださった僧侶はもともとサラリーマンをされていたそうで、東北地震が発生した後に出家された経歴を持ちます。「ようやく私自身も、そして出会った方々も、感謝し合える素晴らしい仕事を見つけることが出来た」という言葉が忘れられません。

20分ほど止観を体験した後は、護摩祈願が行われている祈願所へ移動しました。真言宗の護摩焚きは以前も見学したことはあり、細かい違いはあるものの、天台宗のものと大まか同じように感じられましたが、この護摩焚きは、プロセスと僧侶が行うムドラ(体の健康や心のバランス、そして精神的な覚醒を促してくれる、手・顔・体を使ったジェスチャーのこと)をより良く見せてくれたように感じました。間違いなく今まで見てきた護摩祈願の中で一番だったと思います。

その後、日光東照宮に向かい、私の古くからの友人に会いに行きました。日光東照宮の権宮司である稲葉さんに私が初めてお会いしたのは、今から20年近く前。イギリスのリーズにあるRoyal Armouries Museumで開催されていた徳川家康の企画展に、稲葉さんがいらっしゃっていたことを機に交流が始まりました。その後、私が来日してから10年後にようやく日本で再会し、互いの近況報告をしたり、剣道の8段を取ることがいかに難しいことなのかというお話しを伺ったりと、思い返せば懐かしい思い出が沢山蘇ります。

日光東照宮は、旅行者に非常に人気のあるスポット(2019年でも〜110万人の参拝者数)ですが、徳川家康を崇拝する現役の宗教施設でもあります。この二つの役割の狭間で、建造物の維持、この周辺全体のインフラ整備(交通、駐車場、その他施設)という非常に複雑なバランスが求められますし、時代の変化に沿った一定の調整が随時必要です。

またこのエリアでは、20世紀初頭から水力発電が使用されてきた場所ですが、日光東照宮や輪王寺等が共同で経営している水力発電所も視察に行きました。ここでは、周辺の神社やお寺の近くまで電力が配給される最先端の発電機が使われています。小さな発電所ではありますが、道中の石畳と複数の神社からなる景観は美しく魅力的で、観光地の喧騒から少し休憩したい人にはピッタリの場所だと思います。

もちろんこの場所が、多くの旅行者にとって興味深いスポットかと言うとそうではないでしょう。しかし、隠れた東照宮のインフラ整備と建造物保全への努力、そして何世紀にも受け継がれる遺産という本当の意味を教えてくれる場所であると感じました。

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