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他人のメールアドレス

他人のメールアドレスを見てパーソナルな部分を想像するのが好きだ。

今はラインが主な連絡手段になったのでスマホ世代はピンと来ないかもしれないが、片思いをするとアドレスひとつに悶える夜中もあったのである。

わかりやすいタイプだと「takashi-yumi-eien@」のように完全に付き合ってるやんけこれものだったりする。

だが「eien」などという甘い言葉を設定する甘々カップルほど速攻で破局し「micky-love-yumi@」と好きなものが彼氏からキャラクターになりネットワーク島全土に別れたことを自ら響き渡らせるのであった。

好きになった相手がこのタイプだと男の名前が入っていた瞬間に恋心はすり鉢の中のゴマのように液体になるぐらいまで粉砕され、変更のお知らせが届く薄い期待をし続ける羽目になる。辛いがこれぐらいわかりやすいと逆に現実が見えていいのかもしれない。

問題は「なんかよくわからないやつ」である。


「jonouchi-fighting-agoago@」だったら遊戯王が好きなのか。その中でも城之内が好きなんだな。確かに遊戯もいいけど城之内のデュエルってワクワクするし熱い男って感じもいいもんな。特に好きなのはデュエリストキングダムのバンデッドキースとの戦いだな。あのレッドアイズメタル化の下りは激アツだったもんな!とわかる。

遊戯王をアドレスにしてる女子なんてまずいないだろうけど。

たとえばこれが「j-f-love@」だったらどうだろうか。当時の学生たちはなぜかやたらと「love」を使いたがったので、こんな風にイニシャルにされると思春期の片思い男子は北アルプスの巨大クレバスかと思うほどの深読みを発揮する。

この読みを勉強に発揮できたらよかったのだがそう上手くはいかず集中力は煩悩に全振りされるのであった。

「j-f?」彼氏か?彼氏のイニシャルか?いや、全然男とは関係ない文字かもしれない。あの子の周りに「j-f」はいるか?自分のアドレス帳を見て当てはまる者がいないか隅々まで探し、その子の会話やカバンについているものまで見て何とか探り出そうとするのである。

mixiが出るまではSNSもなく普段の会話とアドレスだけがあの子の秘密を解く鍵だった。mixiも見にいったことがわかる足跡機能があり、片思い中の敏感な状態では「見に行ってるのがバレたら感づかれるかも」「こんな頻度で見てたら避けられるかも」と考えすぎて結局見れずに終わったりもした。


友達を誘う時、家の電話にかけてお母さんが出ると妙に緊張したりすることもなくなったように、平成の間にコミュニケーションの形は大きく変わった。

好きな子のメールアドレスに一喜一憂することもなくなりあと数日で令和へ足を踏み入れる。

だけど、エジプトの壁画に「今時の若いもんは」と刻んであったように、きっと形は変わっても僕らの根底は変わらない。誰かのことがわからなくて、気になって、知りたいと思うのだろう。

ちなみに高校2年生の時に好きだった子のアドレスは「kokekakiiikiiiiiii@」みたいなやつだった。深読みもクソもなかった。

[この記事の元になったツイート☺︎]

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