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ドサクサ日記 2/6-12 2023

6日。
某作品(大作!)のミックスを送信。スタジオで叩き上がったエンジニアのような精密さはない。トラックメイカーのような洒脱さもない。そう自嘲していた俺にzAkさんは「音楽は何をやったっていいんだよ」と言った。そうだよな、と思った。人より上手くやることが目的ではない。自分らしく音楽を作るためにミキシングを勉強しようと思ったのだった。失敗も達成も、自分らしくやっていきたい。

7日。
去年くらいからスタジオの機材が壊れまくっていて悲しい。遂にはスタジオの排水ポンプが壊れてしまった。生活排水が一定のレベルにまでタンクに溜まると、下水道に排出してくれる仕組みなのだけれど、どういうわけがモーターが止まらなくなってしまった。燃料の高騰で電気代が上がっているご時世にこれは辛い。修理の手配が済むまでは主電源を落として使うことにした。電源を入れ忘れたら怖い。

8日。
新しいシングル『宿縁』がリリースされた。表題曲だけでなく、カップリング曲もいい感じなので聴いてほしい。日坂ダウンヒルは『サーフブンガクカマクラ』の続編用に書いた曲で、鎌倉高校前に対応している。日坂は鎌倉高校前の旧駅名なのだ。湘南海岸公園は西方。調べたら、江ノ電にはバス停くらいの数の駅があった時代もあったのだという。恐ろしいことだと思う。ほとんど無限に江ノ電シリーズができるではないか。ウェザーリポートはギターの建さんの曲だ。山ちゃんが用事で来られない日に限ってセッションを進めなければいけなかったので、仕方なく俺がベースを弾いて原曲を作った。建さんは自分で歌メロを作っておいて「低いから」と山ちゃんにブリッジを歌わせようということになった。俺は急な山ちゃんの乱用に反対だったが、山ちゃんもまんざらでもない様子でズッコケてしまった。

9日。
ホテルの壁から謎の金属音が鳴り続けて、眠れずに参った。朝方、ちょっとこれはしんどいなと思ってフロントに連絡すると、ホテルの側も問題を認識していたらしく、サクっと部屋を交換してくれた。早く言い出せばよかった。通された部屋はインバウンド用に風呂のない部屋で、妙に小洒落ていて居心地が悪かった。しかし、妙な和室とかに通されるよりはよかったかもしれない。そして、爆睡へ。

10日。
夢でみた新人賞を具現化させた私設音楽賞、APPLE VINEGAR -Music Award-のノミネート作品が公開された。ここ数年は年が明けると胃がキリキリと痛む。軽はずみに始めた音楽賞だけれども、選ぶからには責任がある。賞金を自腹で払っているとはいえ、人の作品を評価するのには覚悟が必要だ。ただ、本当に毎年、見つけられなかった作品も含めて、素晴らしい作品だらけで感動する。なんて素敵なことなのか。作品の優劣を相対的に決めることは、本来、無粋なことだと思う。それぞれの作品には、それぞれの達成がある。ただ、圧倒的に、優れた作品に対する贈り物が少ないと感じる。経済的合理性のなかで、なんとか居場所を見つけることが大衆音楽の所作かもしれないが、アートはそんなことはお構いなしに僕らを駆り立てる。そして衝突する。そんな瞬間に拍手を送り、少しの支援と称賛を送りたい。

11日。
いい感じの八百屋を教えてもらった。産地直送に近いスタイルなのか、近所のスーパーよりもいくらか安い値段で有機野菜が並んでいる。グリルで焼いて食べるだけで美味しい。コロナ禍以降、料理をする機会が増えた。そうすると、市販の食品や外食の料理の味付けがいかに「美味しい」のかがわかる。素材の素朴な旨味を覚える。どっちがいいとかではなく、本来はこういう味なんだなと理解する楽しさ。

12日。
バスに乗ったところ、奥の5人掛けの席のど真ん中に座る乗客と目があった。家族連れ、なかには妊婦もいるが、その乗客はそのことを気にかけもせず、悪態と上の空のちょうど真ん中くらいの、なんとも言えない雰囲気で鎮座していた。声をかけようと思ったが、どうせ近くのバス停で降りるし、トラブルが面倒なのでスルーしてしまった。この状況でそうしている人には何を言っても無駄だと思ってしまったからだ。何かあったときに、何とかできるスペースも腕力もない。その乗客が現在に起こしている迷惑さと、注意されたことで逆上した場合の迷惑さを天秤にかければ、誰しもが現状維持を選ぶような状況だったということもある。しかし、このスルー力が良いのか悪いのかはわからない。個人的な憤りからすれば良くないが、結果、何事もなくバスは進み、その客は途中でフラフラと降りて去っていった。