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タンゴ•葉山•遊散歩

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#愛犬

タンゴ・葉山・遊散歩(11)

タンゴ・葉山・遊散歩(11)

茜色に空が染まって
天空に描かれた影絵のように薄墨色の富士が浮かびあがり
離島の燈台が橙色の灯火を瞬かせる頃に
老いた漁師が港に帰ってくる

ゆっくりと進む黒いシルエットの孤舟から
般若心経を唱える響きが海風にのって聞こえてくる
・・・ああ、今日も不漁だったに違いない

幻の景色 幻の聲を聞いているのさ 
と喝でも入れるようにタンゴが一声吠え
空からいくつぶかの水滴が落ちてきた
見上げると
じっと

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タンゴ・葉山・遊散歩(12)

タンゴ・葉山・遊散歩(12)

いつものコースで散歩する
このところ上天気が続いて朝焼けが美しい
ほんのり霞んだ空に朧に富士が浮かんでいる
懐かしい幻のような姿に見惚れていると
天空に遊ぶいたずら天使が呼びかけるような声がする
振り返るともうそこにいた
リードから逃れた漆黒のラプラドールレトリバーが

親愛の挨拶をしにきたのだろうか

でも、ミニチュアダックスのタンゴは犬付き合いができない
一瞬 顔と顔を突き合わせていたかと思う

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タンゴ・葉山・遊散歩(13)

タンゴ・葉山・遊散歩(13)

「さ よ う な ら」
「気 を つ け て」
ゆるやかなやりとりをする声がした
60代前半と思しき女性が拝殿横の建物から表れ
神社の階段を降りていく

私とタンゴは今その階段を登って拝殿に向き合ったばかり
ゆっくりした足取りで帰っていく女性の後ろ姿を見送ってから
私は拝殿に向きなおり手を合わせた
タンゴにもおすわりを命じる
タンゴはいつものように横座りで私の顔を見上げている

私が拝殿に手を合わ

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タンゴ・葉山・遊散歩(14)

タンゴ・葉山・遊散歩(14)

子供の頃、犬を飼ったことはあるが、数年で手放した。
スピッツという白くてよく吠える中型の犬種だった。
私が小学校の低学年の頃だった。
母親が近所に生まれた子犬をわけてもらってきたのだろう。
どちらかというと、当時は愛玩動物というより
番犬として飼っていたようだ。
やがて年の離れた弟ができて、犬はいなくなった
時は1960年、
「安保反対、安保反対」と叫びながらデモする人が街に溢れ、
子供たちもデモ

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タンゴ・葉山・遊散歩(15)

タンゴ・葉山・遊散歩(15)

12月20日(月)タンゴの独白

 朝からとてもいい天気
 飼い主夫婦と散歩に出た
 飼い主夫婦は自分たちをパパとママと呼び合っている
 ぼくに呼びかける時もそうさ
 ほらほらタンゴ、パパがおいしいものくれるよ、とかね
 その呼び方に関しちゃあ色々思うところもあるけど
 まあ、ぼくもそれにあわせてる
 そのほうがいろいろ役得も多いから

 今朝はとても寒そうだ
 でも、ママが買ってくれた毛糸の上着

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