マガジンのカバー画像

タンゴ•葉山•遊散歩

15
運営しているクリエイター

2021年11月の記事一覧

「タンゴ・葉山・遊散歩」(8)

「タンゴ・葉山・遊散歩」(8)

雨が降ったり止んだりする日々が続きながら、
1日1日と寒さが増していく今日このごろ
つい散歩もサボって短距離で済ましてしまいがちだ。
私の体も特に下半身や腰回りが運動不足で硬い痼(しこ)りができている。
今日は少し長距離の散歩をした。

いつもの海岸沿いの道をバス停まで歩いて、遠くに富士山を見ながら、
地元の大漁祈願のこじんまりした神社を横目に、住宅街の細い坂道を登る。
歩き続けると道はお寺の裏門

もっとみる
「タンゴ・葉山・遊散歩」(9)

「タンゴ・葉山・遊散歩」(9)

11月最初の日曜日、久しぶりに車を使って移動し、少し遠くでの散歩を試みた。
朝の散歩は、南郷公園に行った。
自宅から車でおよそ15分、8時の開園直後に着いた。
開園直後だというのに、すでに駐車場には車がずらっと並んでいた。

駐車場に車を止めると、助手席に寝そべっていたタンゴは早くもそわそわしだした。早く車から出してくれと全身で要求している。首も尻尾も同じぐらい頻繁に動かし、何とか外を見ようと助手

もっとみる
タンゴ・葉山・遊散歩(10)

タンゴ・葉山・遊散歩(10)

朝早くの漁港を歩いた
ついさっき漁から帰ってきたばかりの漁師が低い声で話している
潮風に乗って、年老いた低い渇いた声がゆらゆらゆれている
網をたたみながら忘れた頃に相槌を打つおかみさんの声もする
短いが、心のおくの襞に直にとどく声だ
話の中身は聞こえない
ただ、年老いた生活のひび割れをいたわり合う響きだけが聞こえる

魚の腐肉の甘い匂いでもするのか
タンゴは低い背をさらに低めて岸壁沿いの細道を進む

もっとみる
タンゴ・葉山・遊散歩(11)

タンゴ・葉山・遊散歩(11)

茜色に空が染まって
天空に描かれた影絵のように薄墨色の富士が浮かびあがり
離島の燈台が橙色の灯火を瞬かせる頃に
老いた漁師が港に帰ってくる

ゆっくりと進む黒いシルエットの孤舟から
般若心経を唱える響きが海風にのって聞こえてくる
・・・ああ、今日も不漁だったに違いない

幻の景色 幻の聲を聞いているのさ 
と喝でも入れるようにタンゴが一声吠え
空からいくつぶかの水滴が落ちてきた
見上げると
じっと

もっとみる
タンゴ・葉山・遊散歩(12)

タンゴ・葉山・遊散歩(12)

いつものコースで散歩する
このところ上天気が続いて朝焼けが美しい
ほんのり霞んだ空に朧に富士が浮かんでいる
懐かしい幻のような姿に見惚れていると
天空に遊ぶいたずら天使が呼びかけるような声がする
振り返るともうそこにいた
リードから逃れた漆黒のラプラドールレトリバーが

親愛の挨拶をしにきたのだろうか

でも、ミニチュアダックスのタンゴは犬付き合いができない
一瞬 顔と顔を突き合わせていたかと思う

もっとみる