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私とトンボちゃん。

小学生の時の、登校風景は、各地域に集合場所を決めて、年長者が、横断中という黄色の旗をもち、集団登校する。

あれは、確か寒い冬だった。近くのバス停が集合場所で。

一本のお茶の木が立っていた。季節外れの赤とんぼが凍えるようにしていたので、お茶の木の葉っぱと葉っぱの隙間においてあげれば、風よけになるだろうと。そっと、置いてやった。

それを、詩でもない、散文的なものを作文につと書いた。

担任の先生に、書き直してこい!と言われ、書き直す?何をどう表せばいいのかわからず。

困ったときは、いつも姉ちゃんに頼みこむ。

先生は、多分、「あさがおに つるべとられて もらいみず」のような俳句というものを、書いてほしかったみたいだ。

姉ちゃんが清書したものを、先生に提出したら、音沙汰なし。

北風に ふるえるとんぼ 葉のかげへ

だけで、よかったんだ。

それ以来、姉ちゃんには頼らなくなった。

が、高校の古典の教科書は、彼女の使ったものに、大事な要点がところせましと、書かれてあったので、それをこっそり参考書がわりにしたものだ。


最近、実家での庭木の手入れをするようになった。

アジサイの芽が吹きだした春の暖かい日差しをあびて、虫たちも活動するようになった季節。庭木をかまいながら、のらのらと、新芽を食べる幼虫を駆除しながら、先ほど脱皮したばかりのトンボに目が行く。

軒下で、水分補給の休憩をしていると、まだ飛び方に慣れていないトンボなのか、私がかがんでいる、すぐ足元にとまって。光をあびながら、トンボが私になにか話しかけているような、トンボの目の下のところから、微かな光の信号を送ってくれた。日差しの加減で、単に反射してキラキラみえただけかもしれないが。

トンボと意思疎通ができれば、「今日は、あったかいね・・」

「僕、まだ飛び方がヘタなの・・」

「何してんの?」

「一休み・・」

「僕も、ひとやすみ」

「がんばって、生きんしゃい!!」

あのオチビさんのトンボが、可愛かった。


それから、子供電話相談室の昆虫コーナーで、真剣に専門の先生に、トンボは、光の信号を出すのか?訊いてみたかったが、大人げないなあと、あきらめた。



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