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催花雨を纏う冬

それはもう、衝動的だった。

太陽が上りきってから目覚めて、いくぶん寝ぼけた出立ちで、車の鍵を握った。

冬が近い。まるで逃げるようにして沈んでいく夕日を追いかけて、アクセルを踏む。

目当ての場所に辿り着いたのは、閉園の15分前だった。

埼玉の奥地に芽吹く広大な土地には、数百もの木が植えられていた。どれも逞しく、そしてしなやかだ。

きっと故人たちが、幾年にも幾年にも渡って、少しずつ、少しずつ種を蒔き、育んできたのだろう。

その枝の先にはいま、かわいらしい小さな花が、点々と明かりを灯している。

凍える指先で、シャッターを切った。

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冷たい雨にゆるゆると起こされた子どもたちはどれも、慈愛に満ちた、あたたかな色香を纏っていた。





息を吸って、吐きます。