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「ブサイクの方がオシャレを楽しめるのでは?」【雑記】

 僕は普段、読んだ本の感想などを中心に書いているのですが、今日はエッセイというものに挑戦してみたいと思います。エッセイといっても、それほど大仰なものではなく、僕が普段から思っていることを文章にしてみよう、という試みです。興味のある方は、是非読んでいただけると幸いです。

 さて早速ですが、今回のエッセイのテーマは「ブサイクの方がオシャレを楽しめるのでは?」です。初めに断っておくと、この記事を書いている僕自身、容姿に自信があるわけではありません。決してイケメンが上から目線で「ブサイクの方がオシャレじゃね?」などと言っているわけではありません。むしろ、自分がブサイクであるからこそ感じた実体験なのです。

 自分がブサイクと気づいたのは、小学生の高学年になったころでした。当時は、周りの人と少し顔が違うな~なとど思う程度でしたが、学年が上がるにつれて自分がブサイクであることを徐々に認識するようになりました。中学生になるころには、「自分はブサイクなんだ」と自覚をしながら生きていたように思います。

 自分がブサイクであるという認識を持って中学生になった僕は、陰キャラか陽キャラかでいうと陰の方に属していました。陽の人達が徐々にオシャレに気を使いだす中、僕は服に興味を持つことなく過ごしていました。しかし、高校生になったときにある問題が発生しました。それは「私服ダサすぎ問題」です。というのも、僕は高校で少し背伸びをして軽音部に入部しました。当時の軽音部は女子の比率が高く、部員数は男子よりも女子の方が多いような状況でした。男だらけであれば、私服がダサいことはそれほど気にならないのですが、異性の目があると、途端に自分の私服がダサいのでは?と気になりだしました。

 そして、「自分の私服ダサいんじゃね?」と思いながらも、ライブに私服で参加しました。すると、僕の私服を見た同級生の女子がとんでもない台詞を言い放ったのです。それは「だっさ。横一緒に歩きたくないわ」というものでした。思春期のもろい心は、その一言で砕け散りました。僕はショックすぎてまともに言い返すこともできず、アワアワしていたと思います。あまりにショックで、数日へこんでいたのですが、へこんでいても問題は解決しません。しかも、言われっぱなしというのも、なんだか癪です。ここで、僕はある誓いを立てました。それは

「絶対にオシャレになって、こいつをぎゃふんといわせてやるぞ!」というものでした。そんなわけでこの決意をした日以来、僕はオシャレになるための努力をはじめたのでした。

 オシャレになるために、僕が最初におこなったのは、実の姉に相談することでした。姉は優しい人なので、僕を普段行かないようなオシャレな服が置いてある店に連れて行ってくれました。僕は「オシャレになるぞ!」と意気込んで店内に入ったのですが、そこにはオシャレな服が所狭しと並んでおり、ファッション初心者である僕には、何がなんだか分かりませんでした。姉にわざわざ、連れてきてもらったにも関わらず、何も買わずに退店しました。姉には「せっかく連れてきたのに、何も買わないのか?」と言われましたが、それどころではなかったのです。

 何故、服を買わなかったのかというと、服屋さんという空間がオシャレ過ぎて気圧されてしまったからです。置いてあるものすべてがオシャレに見えて、自分のようなダサいブサイクは来る場所ではないと、恐れおののいてしまいました。僕は自分の度胸のなさと、オシャレの知識のなさを嘆きました。

 ということで、まずは、オシャレについて勉強することからはじめました。オシャレに全く興味がなかった僕でも、本屋にはファッション雑誌が売っていることは知っていたので、何冊か購入することにしました。早速、買ってきたファッション雑誌を眺めていると、なんとなくかっこいいな~と思う服装がいくつか見つかりました。そしてかっこいいと思った服装にはいくつか共通点があり、なんとなく系統があることが分かってきました。そうして、調べていくうちに僕の好きな服装は、「きれいめ」だとか「トラッド」といわれるジャンルであることが判明したのです。

 自分の好きな服の系統が分かり、少し自信のついた僕は街に繰り出してお店に向かいました。しかし、実際に店舗に行くと新たな問題が発生しました。それは、商品高すぎ問題でした。Tシャツ1枚で1万円近くするような店に入ってしまったのです。僕は二度目の撤退を余儀なくされました。バイトもしていない高校生のお小遣いでは、とうてい手の出せるお店ではありませんでした。

 僕は再び姉を頼りました。そんな店あるのかと思いながらも「安くてオシャレなお店ない?」と聞くと、姉はファストファッションというのを教えてくれました。今となっては、当たり前になっているファストファッションという言葉を、当時の僕は知らなかったので衝撃を受けました。早速訪れてみると、ファッション雑誌に載っているような服装がそのまま売っているわけではありませんでしたが、似たような服が安くで販売されていました。

 更にこのころに古着屋の存在を教えてもらい、服を買うお店の種類が増えました。ファストファッションと古着屋を利用するようになった僕は、どれだけ安い値段で、雑誌のような服装を再現するかということを楽しむようになっていました。そうしていると、徐々に何と何を組み合わせればオシャレに見えるのかということが少しずつ分かるようになり、ファッションを心の底から楽しめるようになりました。

 ファッションを心の底から楽しめるようになり、これで僕のことを「だっさ、横一緒に歩きたくないわ」と言った女子を見返せると思ったのですが、時既に遅し。僕は卒業間近で、結局その女子に私服を見せる機会はありませんでした。そして、このころになると彼女に対する怒りなどはなく、むしろ「だっさ」と言われたことでファッションに興味を持てたので、感謝を覚えるほどでした。

 そして、僕は高校を卒業し大学生になりました。大学生になるとバイトが解禁され、稼いだお金の大半を服に使うようになりました。すると衝撃的な事が僕の身に起きました。それは、名も知らぬ女子が僕のことを「オシャレだよね~」と話していたのです。これは、僕にとっては衝撃的な事でした。今まで、僕のことを形容するときに使われる単語といえば「ブサイク」とか「オタクっぽい」などでした。それがなんと「オシャレ」という言葉で形容されるようになったのです。もう、嬉しすぎて面識のないその女子に「ありがとう!」と言いたいくらいでした。

 この出来事をきっかけに、僕はあることに気づきました。それは「オシャレ」であるということは「ブサイク」を上回る可能性があることに。自分自身のことを考えてみると、ファッションに興味を持ってからは、随分と外見に気を使うようになりました。服装にしても、髪型にしても、人に会う時には身だしなみを整えることが当たり前になったのです。ファッションに興味を持つ以前は、身だしなみに気を遣うこともなかったため、そうとうにダサい見た目をしていました。ゲボダサです。ダサすぎて気持ち悪さすら醸し出している感じです。

 勿論、外見に気を使うようになったからといって僕の顔がイケメンになったわけではありません。仲の良い友達からは「ブサイク」といじられますし、自分でもブサイクだと思っています。しかし、服装という観点に関しては、とりあえず不快感を感じさせない程度のオシャレを出来ていると思います。この点が大事で、見た目が少しでもマシになると「ブサイク」という個性が消せる可能性があるということです。

 つまり、どれだけブサイクであっても、オシャレに気を遣えば、「ブサイク」と評価されるのではなく、「オシャレ」と評価される可能性があるのです。この点は、ブサイクとイケメンで状況が大きく異なると思います。というのも、イケメンという個性はあまりに強く、イケメンがどれだけ、オシャレをしても、形容される際には「イケメン」と称されることが多いのです。

 一方でブサイクという個性はオシャレという個性で上回ることが可能です。これに関しては、僕自身が身を以て証明しています。この点において、ブサイクはイケメンよりもファッションを楽しむのには向いているように思います。

 そもそも、根本的にイケメンだと、どんな服を着てもある程度オシャレに見えてしまうという問題もあります。この点、ブサイクはかなり厳しくて、本当にオシャレで自分に合った恰好をしないと、オシャレがブサイクに負けてしまうのです。中途半端なオシャレをしようものなら、すぐに「ブサイク」という個性が「オシャレ」を殺してしまいます。

 どんな服を着ても似合うイケメンと、本当に自分に似合ったものを選ばないと、オシャレに見られないブサイク。イケメンの方が楽ではあると思いますが、その分ブサイクは、深くオシャレについて考えます。「どうすれば自分がオシャレに見えるのか?」と日々探求しているのです。どちらの方がファッションについて深く考え、オシャレを楽しんでいるのか、もうお分かりですよね?

そうです!ブサイクの方が、イケメンよりもオシャレを楽しんでいるのです!

 まあ、実際のところ「イケメン」が本気でオシャレを楽しむと「イケメンでオシャレ」とかいう手の付けられないモンスターが誕生するので、僕らブサイクには勝ち目がないんですけどね…。そもそも、ブサイクがオシャレをしたところで「ブサイク」から「オシャレなブサイク」になるだけなのかもしれません。でも、それでも良いんです。自分に似合う服を探したり、考えたりするのは楽しいことですから。だから、僕は今日もイケメンよりオシャレを楽しんでいるはずです。はずなんです…。

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