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感想|猫を抱いて象と泳ぐ/小川洋子

◆ 基本情報

・作品名 猫を抱いて象と泳ぐ
・作者  小川洋子
・発行元 文藝春秋
・出版年   2009年1月12日
・ジャンル 小説
・備考   2010年本屋大賞5位 

◆ あらすじ

「大きくなること、それは悲劇である」──この警句を胸に11歳の身体のまま成長を止めた少年は、からくり人形を操りチェスを指す。その名もリトル・アリョーヒン。盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、自分の姿を見せずに指す独自のスタイルから、いつしか“盤下の詩人”と呼ばれ奇跡のように美しい棋譜を生み出す。架空の友人インディラとミイラ、海底チェス倶楽部、白い鳩を肩に載せた少女、老婆令嬢……少年の数奇な運命を切なく描く。小川洋子の到達点を示す傑作。〈amazon より引用〉

◆ 宇宙ゴリラ的評価

・読みやすさ ☆☆☆☆★ 4点
・筋の面白さ ☆☆☆★★ 3点
・芸術性   ☆☆☆☆★ 4点

合計 11/15

◆ 総評

「読みやすさと芸術性のバランスが秀逸」

 チェスを扱った作品だが、チェスについて何も知らなくても読める。これこそが本作品の魅力である。不親切な小説であれば、チェスを知らない人を置いてきぼりにして話を展開することも可能だろう。しかし、この小説はそんな不親切をしない。最低限、チェスについての説明も書いてあるし、そもそもチェスについてきちんと理解しなくても話を楽しむことができる。これは非常に親切で読みやすい。
 更にすごい点は、読みやすさと芸術性が併存している点である。小説において芸術性を優先すると、大抵の場合は読みにくい文章が完成する。しかし、この作品の芸術性はとても高い。文章の美しさや、作品全体に漂う静かで美しい空気がある。芸術性と読みやすさ。この二つをハイレベレルに保っている作品はあまり多くない。

 芸術的な作品を読みたいけど、読みにくいのはちょっと…って思う人は、是非本書を手に取ってみてほしい。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。


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