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【映画感想】目の見えない白鳥さんとアートを見にいく

4月の読書感想文も書かせていただいた、
川内有緖先生の「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」の映画を見に行った。

映画館は、大阪九条にある「シネ・ヌーヴォ」

ひとりで遠征して舞台を見に行ったこともあるし、居酒屋もおひとり様で大丈夫だけど、ひとり映画館は初めての体験。

緊張とワクワクが混ざった気持ちで、入館。

劇場は小さくて学校の教室みたい。
いつも行く大型の劇場みたいに音響がすごく良いとかではないけど、その感じが、逆にリアルで対面で話を聞いてるような感覚で良かった。
もちろん音響は悪くないし、大きい音が苦手に感じるときもあるのでちょうど良かった。

さて、ここからが感想。

1.本と違って映画で見ることができてよかったこと

複数あるなかで2つあげるとしたら

①白鳥さんの音声スピードがこんなに速いと思わなくて面白かった
②本書を読んだうえで、白鳥さんの相づちを生で聞くことができてよかった!


本書で白鳥さんが高速でニュースを読まれたりしてるのは分かってたけど、こんなに速いスピードで日々情報を得られてるとはビックリ。

私も独学していたとき、You Tubeでその解説動画を見る際に2倍速で聞いていたので、それよりちょっと速いくらいかな?とイメージしていた。

実際は想像の50倍くらいの速さかな?という感じで驚いた。

最初なんの音なのか分からなかった。劇中でも言われていたように、外国語の会話を聞いてるかのようだった。

そして、映画で見て良かったと思ったNo.1、
白鳥さんの相づちを聞けたこと!

本の中でも、白鳥さんって人の話をよく聞いてはる人なんだなぁって思ってたけど、実際の白鳥さんの声を聞いてみると、
話し手がもっと聞いてほしいって思うような間のとり方や声色で、ほんとに興味を持って話を聞いてくれてるんだろうな〜〜って感じた。

プライベートでそういう風に話を聞いてくれるともちろん嬉しいけど、
絵画鑑賞のときにこんな風に聞いてくれたらもっと嬉しいよなぁって思う。
鑑賞の仕方に正解とかないけど、目の前の芸術を言葉にするのって、私には難しい。
変なこと言ったらどうしようって。
だけど、あんな風に相づちをうってもらえたら勇気づけられていいなぁって思った。

これってなかなか出来ることじゃないと思う!

美術や芸術に興味があるわけではなくて、そこにいる人に興味がある。

うろ覚えだけど、こんな感じで美術鑑賞の目的を話されていて、人との対話を大切にされているからこそ出来ることなんだろうなぁと思った。

人とコミュニケーション(対話だったかな?)をとることで、自分はここにいると確信できる。

こちらもうろ覚えで申し訳ないけど、冒頭でこういうことを話されていて、確かになぁ〜〜!と思った。

前職を辞めて次の会社に行くまでの宙ぶらりんの時期、家でひとりぼっちでいた時、すごく不安を覚えた。
夫の帰りを待つ夜までの長い時間に、誰とも話さないと自分のアイデンティティが足元から崩れ落ちていくように感じていた。

自分ひとりの世界と相手の世界が繋がることで、知らなかった自分も発見できるかもしれないし、自分の世界が広がる可能性もある。

傷つくこともあるけど、人とのコミュニケーションを辞めない理由ってここにあるんだろうなぁと思った。

2.劇中の料理が美味しそう

仕事帰りに駆け込んでお腹がすいていたせいもあるけど、それを差し引いても、美味しそうだった!
白鳥さんが妻のゆうこさんと外食されているときの風景。
新潟の泊まれる芸術に訪れた時の夕食時のガヤガヤ感。
白鳥さんが素麺を作られているシーン。
白鳥さんがひとり呑みをされているときの様子。
食事のシーンって平和の象徴だと思うので、食事のシーンが多いこの映画はすごくいい。

白鳥さんが福島で日本酒を飲んでいるときのカットが最高だった!
くぅ〜〜呑みたい!笑

3.マイティさんと川内さんの美術鑑賞の会話が映像化されているのが良かった

こちらの映画は、chapter1→2→3…というように章ごとにテーマと場面が変わっていくのだが、章が切り替わったときに突然、その作品がどう見えるかを話されているマイティさんと川内さんの会話をBGMに、その会話をもとにしたアニメーションが映しだされた。

さっきまで実写だったので驚きつつも、ふたりの会話を聞いていると、どんどん絵が変わっていって、面白いなぁと思っていると〃タイミングで、白鳥さんもふふっと笑われていた。

最初の章では3人の美術鑑賞の様子が映しだされていて、白鳥さんを知らない方が、3人がどういう風に美術鑑賞をしているのかを分かるような展開だった。

そして次にこの展開。
実際の絵を見ずに、二人の会話からイメージしていくので、私もその場にいるような一体感があってよかったなぁと思う。

また、劇中こイラストがすごく可愛いので多くの人に見てほしいなぁって思う。

4.白鳥さんの写真について

写真活動は「見返すことのない日記」とおっしゃっていた白鳥さん。
だからなのか、絶対ありえないけど、その景色私もみたことがある!って思う写真がちらほらあった。
懐かしいっていう気持ちが湧き上がっていた。

日々暮らしているなかで、3日前の晩ごはんは思い出せないのに、なんとなくその日何があったかは思い出せる。
そういうように、記憶は自分勝手に情報を取捨選択されて積み重なっていく。

見返すことのない日記
というように、忘れていった記憶のなかでも、確かにその瞬間は楽しかったり、怒っていたり、悲しかったりしていた記憶はある。
その気持ちを思い出させるような写真が何枚かあり、ありえないデジャブが発生したんだろう。

例えば、夜の街を歩いているときに撮影されたと思われる写真。
夜の暗さや街灯の光がぼやっとぶれた感じで写っている。
私はこの写真を見て、大学時代に大学付近で飲み会をした後、友人の下宿先に泊まりにいくために歩いたあの道を思い出していた。
本格的な夏が訪れる前の蒸し暑い夜。もわっとした空気と草の匂いが足元からしてくる。
あのとき話した会話は思い出せないけど、楽しかったことは覚えている。

白鳥さんの写真は、バズる写真を撮ろうとか撮影側の何かしらの意図がなくて、本当に見返すかことのない日記として撮られているから、よりその世界観に入り込めるのだと考える。

5.「幸せは時間のなかにある」by白鳥さん

幸せはどこにあると思う?と問われ、「時間のなか」と答えられた白鳥さん。
その瞬間にしかなくて、とっておきたくてもとっておけないもの。

この言葉を聞いて、大切にしたいなと思う人と一緒にいるときは、もっとその時間を大事にしようと考えた。
白鳥さんの時間の捉え方は独特で、なるほどっと思うポイントが多くあったので、もう一度本を読み返したくなった。

映画のサイトで、白鳥さんの紹介文で

酔っぱらって調子に乗ると、やたらと撮りまくる傾向にあり、

ここ、めちゃくちゃ可愛いし愛おしい(笑)


6.自分の歩く道は、自分で決める

街中で、点字ブロックの上に自転車が置いてある風景を見たことある人は多いだろう。
「ちょっとの間だけだから…」
「だって駐輪場が少ないのが悪いんだ」
など自分勝手な言い訳に対して、
怒りや悲しみじゃなくて、仕方ないと思われるそうだ。(ここもうろ覚えなので、間違えていたらすいません)

なぜそう思うかというと、
「私達の歩く道は点字ブロックの上だけじゃなくて、自分で決めた道を歩く」からだ。

可哀想とか、こうだろうからこうしてあげなきゃとか思うのは勝手だけど、それは相手のことを知っての考えなんだろうか?
勝手に自分の中のイメージの型に当てはめて、考えてないだろうか?
とこの言葉を聞いて自分をふり返った。

もうひとつ心に残る言葉があって、
こちらもニュアンスしか覚えられてないけど
白鳥さんが、「自分の環境のせいにして、できないと思いこんでないか」というようなお言葉。
これを言えるようになるまでどれだけ葛藤があったのだろう。
色んな体験を積み重ねてきたからこそ、言える言葉じゃないのかなぁと思う。
この映画を見てると、白鳥さんは心の強い人と思われるかもしれないけど、周りからそう思われるようになるまで白鳥さん自身たくさんのことを乗り越えられてきたんだろうと考える。

だからその強さに甘えるんじゃなくて、社会全体がみんなにとって過ごしやすい社会にしていけるように、それぞれ皆が考えていかないといけないなぁと思った。

7.最後の美術館のワークショップで出てきた壁画の作品で、私が見えたもの

2021年福島県にあるはじまりの美術館で、
「(た)よりあい、(た)よりあう。」に写真家として出展された白鳥さん。
自身もアートとして、美術館で過ごされており、白鳥さんの生活を体験できるような展示となっていた。
その美術展の最後に、一緒に美術鑑賞をするシーンがある。

私もそこにいる感覚で見ていると、この作品は、
・もじゃもじゃしたメデューサみたいな毛の小さい怪物がいるみたい
・冒険の最初の方に出てくるスライムとかと同じレベルくらいのやつ
・ポケモンでいうと、モンジャラみたい?笑
・そういう子が戦おうとしてこっちを見てるみたい
・あれ?ひとりだけかと思ったら3人に見えてきた?
・大きい個体が二人を大きい羽で自分の中に入れて守っているような…

というような感想がでてきた。
多分壁画が古代のイメージになり、洞窟に転じて、洞窟=ダンジョン、ダンジョンといえば冒険?とか考えていった結果だろう。

どんな絵か気になられたらぜひ映画館へ。

最後に

この映画見に行ってよかったなぁと思った。
本を読んで、自分の気になったところで立ち止まって、じっくり考えるというのもいいけど、
この映画は、その考えに色をつけていってくれるように、考えを判りやすくしてくれて、より考えることを促してくれる。
なによりその場の温度感や空気が分かるのがいいなぁと思う。

この映画は、白鳥さん初見でも楽しめるつくりになっていた。

人と会話をすることが楽しみになるような映画。
この映画を、一文で紹介するとしたらこうだろうと考えた。







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