4月の読書感想文:目の見えない白鳥さんとアートを見にいく/川内有緒先生
やっと読めた。
この本を手に取ったときに最初に思ったことだ。
去年から書店で気になっていたけど、読もうと思って後回しにしてしまっていた。
芸術って、"きちんと"見ないといけないもの。
そういう偏見を持っていたので、この本もきっと正しく読まないといけないんだろうなぁ、じゃあ堅苦しい本なんだろうか?と思い、いつも見送っていた。
しかし、読んでみてこの考えが間違っていたことを知った。
もっと早く読んでいたらよかった!と後悔したくらいだ。
ここで、この本のそでに書かれている、本の紹介文を引用する。
目の見えない白鳥さんが、どういう風に美術鑑賞するんだろう?それも年に何十回も?
その謎もあるが、マイティさんの言葉
「白鳥さんと作品を見るとほんとに楽しいよ!」
前述の通り、芸術は厳かに見るものだと思っていたので、楽しいってなんだろう?と二重の謎だった。
作品を見てすごい筆使いだなぁとか色合いがきれいだなぁと思うことはあったけど、楽しいという感覚はなかった。
この本を読んでいて、その謎の正体を知れる。そして、思った。
美術って、芸術って、こんなに楽しいものなんだ!
どんどんページを捲る指が止まらない。
だけど、第三章あたりから読むスピードをわざと落とした。
読んだ内容に対して、自分が感じたことについて考えたいためだ。
私は正解を求めがちだ。謎があればすぐ知りたいし、目の前の答えが正解だと思って、精査せずに飛び込んでしまう。
だけどこの本は、正解ってひとつだけじゃないんだよと教えてくれた。
自分が感じることを感じるままに受け取っていいと肯定してくれた。
そのことが私が芸術って楽しいものだと感じることができた理由だ。
作品を前にしたとき、どういう絵が写っているか、どうしてそういう風に見えたか。
アテンドの方のその話を聞くことが白鳥さんの美術鑑賞のスタイルだ。
作品は見る人によって、どう見えるかが変わってくる。
著者の川内さんとマイティさんが、ある一つの作品に全く違う解釈を話していて、川内さん自身、その会話をカオスだと書かれている。そして、ひどい説明で申し訳ないと思い白鳥さんを見ると、「面白い」と喜ばれていた。
章が進むにつれて、同行者が増えたり、変わったりする。集団で仏像を鑑賞する章もある。
そのたびに色んな角度から、この作品の見え方がぽんぽん出てくる。
読んでいると面白いし、こういう見方があるんだと感心する。
そういう風に読んでいくと、私もある作品の前に立っていた。
この本の前に、だ。
そのため、それからは一章ずつじっくり考えて読んでいったのだ。
その時間は、幼い頃に毎週続きを楽しみにしているアニメを見るためにテレビの前に待機しているようなワクワクした時間だった。
ぜひ、実際にこの本を読んでみてこの楽しさを味わってほしいなと思う。
○○○
読み終わり、あー面白かったぁと思った。
本は結構読む方だけど、そう思うときと思わないときがある。
なんでこの本をこんなに面白いと感じるんだろうと考えてみると、私が人の話を聞くのを楽しいと感じる理由がこの本に書かれているためだと気づいた。
私は話すより、人の話を聞く方が好きだ。
そのことを自分は話をするのが苦手だから、面白おかしく話をしてくれる人が好きなんだろうなぁと思っていた。
しかしこの本のなかで、白鳥さんが正しい解説じゃなくてその人自身の考えを楽しんで聞く様子から、私はその人の話から感じられるその人の考えや、その人がその考えになった背景を知ることが好きなんだなぁと思った。
目の前に見えるものを、私達は目で見ているのではなくて脳で見ているそうだ。
そのため、その人の体験や経験によって見え方が変わるので、ひとつの作品でも見る人によってどんな絵か説明するかが違ってくるわけだ。
人生は一度きりしかない。やりたいこと全てやりきることはなかなか難しい。
なので人の話を聞いたりエッセイを読むことで、追体験することが私は好きなんだろう。
みんなそれぞれの人生を生きてきているからこそ、その人自身の考えや価値観を持っている。
美術鑑賞はそのことをより分かりやすく共有できることをこの本で学べた。
一緒に美術館に行きたい人の顔がひとりふたりと浮かんだ。
○○○
今、この作品が映画になっているらしい。
読み終わってから、このことを知ってとてもテンションがあがった。
大阪では、こちらの映画館で5月12日(金)まで上映されるようだ。
ぜひこの機会に見に行こうと思う。
そして色んな美術館に行ってみたい。作品を見て自分がどう感じるかを知りたい。
私は体の奥からワクワクが溢れ出てくるのを感じながら、今何が開催されているのかを検索していた。
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