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サッカー本でベストイレブン組んでみた

はじめに

サッカー本企画第2弾です。
前回の記事は執筆に多分3時間くらいしかかけておらず、2〜3日かけてやっと1本仕上がる戦術分析記事に比べて圧倒的にコスパが良いことに気づいてしまいました。身も蓋もないこと言ってしまえばあれ思い出話してるだけですもんね。というわけでまた思い出話です。
今回は筆者が今まで読んできたサッカー本の中から選りすぐりの13冊(選手達11人の枠に加えて監督、サポーター枠も作っちゃいました)を紹介していきたいと思います。ジャンルも戦術本に限らず、なるべく多種多様な本をピックアップすることを心がけました。また今回紹介する本の多くはここ3年触れてすらいないものばかりなので、個別のより詳細なレビューが知りたい方は他を当たってください笑TwitterやAmazonで軽く調べるだけで色々出てくると思います。

※追記
本稿では著者名は基本省いており、説明のとき必要だったら書く、というスタイルでやらせてもらってます。
最後の「参考文献」のところにまとめてリンクを貼っているので、読んでて「で、結局この本誰が書いてんねん!」と気になって仕方がない人はそちらからご覧ください。

サッカー本ベストイレブン

GK

まずはGKから。GKということでここはやはり伊坂幸太郎、ではなくベン・リトルトンの『PK』でしょう。サッカーにおけるPK、PK戦というものを主に統計学や心理学の観点から論じています。巻数は忘れましたが漫画『フットボールネーション』でもこの本の内容をベースにした話が出てきます。「これ丸パクリじゃん」と思ったらちゃんと巻末に参考文献としてこの本のタイトルが書いてあったので安心したのを覚えています。『PK』はとにかく分厚いので、文字が多いことに目眩がする方は先に漫画を読んでから本にチャレンジする方がいいかもしれません。
GKというポジションそのものについての本だと、『孤高の守護神』『サッカーGKパーフェクトマニュアル』もオススメです。前者は歴史系、後者は戦術・トレーニング系ですね。両方ともにとにかく分厚くて内容が濃いです。

CB

CBはシンプルに守備戦術に関するものを選出しました。『センターバック専門講座』『世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス』です。前者は著者、後者はタイトルで若干損してる感が否めませんが、読んでみるとクオリティの高さに驚かされます。いやマジで。『CB専門講座』は元選手による「〜講座」系の中では断トツで面白いですね。監督、解説者としての秋田豊だと思わないで読んでください(逆に失礼)。調べてみたら新装版も出てるみたいで、結構売れてるんじゃないかと推察しています。
『岡田ジャパンの…』は釣りっぽいタイトルですが中身はゾーンディフェンスの基本原則を具体的な事例を交えて解説している良著です。とりあえず巻末付録だけでも読んでほしい。
惜しくも落選した他の守備関係の本だと『サッカー新しい守備の教科書』『サッカー守備戦術の教科書』『ドイツサッカーのディフェンス戦術』がオススメです。

SB

SBはシンプルに長友の『日本男児』!とかだと面白くないので、少し捻ってデータ系の作品から選ばせていただきました。『サッカー データ革命』『「ジャパン」はなぜ負けるのか』の2冊です。どちらもまさに目から鱗、という内容でした。中学生の頃『マネーボール』が大好きだったので、読んでて興奮しまくりでしたね。2010年代以降、様々なデータサイト・ブログが登場し、今では誰でも簡単にピッチ内外のデータを手に入れることができますが、「じゃあ具体的に何を見ればいいの?」と思う方はこの2冊を読んでください。
厳密にはサッカー本ではありませんが『オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く』のサッカーに関する章はめちゃくちゃ面白かったです。ホームチームの何(移動距離、観客の声援、審判のジャッジ…)が有利なのか?をデータを使って検証しています。今でもたまに試合を見ててこの本の内容を思い出すことがあります。

ボランチ

もう何系とかの括りで縛るのが面倒くさく難しくなってきました。ジャンル縛りなしでテキトーにやっていきます。
まずは筆者が大好きなイタリアのレジスタ、アンドレア・ピルロの自伝である『我思う、ゆえに我蹴る。』を選びました。イタリア語が読めるわけではないので原著は未読なんですが、かなりピルロっぽい文章(?)でページの端々から知性と品性を感じます。文体が少し村上春樹っぽい気もする。自伝は書いている本人の「あの試合、あのときこう考えてた」がダイレクトに伝わってくるのがファンからしたらたまらないですよね。特にEURO2012のイングランド戦のクッキアイオの描写は秀逸です。
2冊目はボランチといえばフランス、フランスといえば育成、ということで『フランスの育成はなぜ欧州各国にコピーされるのか』を選びました。世界的にも有名なフランスの国立サッカー施設、クレールフォンテーヌの選手育成に関する理念や制度について事細かに取材されています。インタビューなども豊富で、シンプルに取材の量と質に圧倒されます。これを読んだら毎年のようにフランスからスターの原石が湧き出てくる理由がなんとなく分かる気がしました。フランスはフランスでもフランス代表の負の側面を知りたい方は『レ・ブルー黒書』をご覧ください。南アフリカW杯のドロッドロの内部事情を知ることができます。アウトレイジばりの全員悪人っぷりです。

トップ下

サッカー本の中には、何らかのテーマに沿って言葉や事柄を列挙した「〜図鑑、事典」系の本があります。大型書店に必ず1冊はあるのはフォーメーションのやつですね。似たような内容で色んな人が出してる印象があり、それを見るたびに「日本のサッカーファンって本当にフォーメーション好きだなぁ」と思います。あとやっひーこと風間八宏の『サッカー◯◯解剖図鑑』シリーズも書店でよく見かけます。
ですが今回私が選んだのは『DO YOU SPEAK FOOTBALL? 世界のフットボール表現事典』です。この本は「park the bus」や「catenaccio」、「楔」など各国独自のサッカーにまつわる語彙、表現をとにかく集めまくっています。意外な国同士で似たような表現があったり、逆に真反対の表現でも同じ事柄を表していたり…サッカーを通じて言語そのものの奥深さを味わえる内容になっているのではないでしょうか。あと事典系の良いところはページをパッと開いてサクッと読める手軽さですね。学生時代、世界史の用語集とかめっちゃ好きでした。

ワイド

ワイド(WG、SH、WB)は現実のサッカーでも監督によって好みが反映されるポジション。というわけで筆者の大好きな歴史、文化系から2冊選びました。
勘の良いガキの皆さんなら既に察したかもしれませんが、1冊目は他のnoteでも度々取り上げている『サッカー戦術の歴史』です。これはもうサッカーの戦術史を語る上で絶対外せない名名名著です。全員買わされる大学の必修科目の教科書みたいなもんだと思ってください。買わないと単位落とします。
そして2冊目は『理想のために戦うイングランド、現実のために戦うイタリア、そしてイタリア人と共に戦う日本人』です。イタリアとイングランドの両方でプレーしたことある故ヴィアリが、両国のサッカー文化の違いなどについて論じています。メディアや国民性の違いに関する文章は、日本の海外サッカーファンも納得するところが多いのではないでしょうか。ただこれ日本語タイトルがあんまり良くないよね(おい)。

FW

これも色々ある中で迷いましたが、流石にFWという枠でズラタン・イブラヒモヴィッチの自伝、『I AM ZLATAN』を外すわけにはいかんと思いました。『I AM ZLATAN』はサッカー選手の自伝としては考えられない勢いでバカ売れした本であり、売上はなんと発売から1ヶ月でスウェーデンで50万部、イタリアで20万部に達したそうです。長谷部の『心を整える』もかなり売れましたイブラに比べたらどうしてもしょぼく感じてしまいます。
こちらも先ほど紹介したピルロの自伝同様、沖山ナオミさんという方が翻訳しています。言葉を通して選手から出るオーラや雰囲気を、違う言語で表現するというのは本当に大変な作業だと思います。尊敬してもしきれません。最新作の『アドレナリン』はまだ読めていませんがどうせこれもイブラ節全開で面白いんでしょう、知らんけど。

サポーター

12人目の選手、と言われることもあるサポーターに関する本も数多くあります。が、その中でも外せないのは『ぼくのプレミアライフ』(原題:フィーバーピッチ)でしょうね。著者のニック・ホーンビィがアーセナルというクラブに魅了され1人の"サポーター"になっていく過程や、現地サポーター目線のイングランドのサッカー事情が書かれています。ちなみにコリン・ファース主演で映画化もされています。そしてホーンビィはこの本を著した後、なんと小説家デビューしています。筆者も『ア・ロング・ウェイ・ダウン』だけ読んだことがあるのですが、結構面白かったです。ストーリーがどうこうというよりイギリスっぽい言い回し、表現を楽しめるなら読んでみても良いかも。

監督

これもめちゃくちゃ悩みました。ここまできたらあとはもう好みの問題。
監督にまつわる本はファーガソンやヴェンゲルの自伝、ペラルナウがバイエルン時代のペップを取材した『ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう』、ワールドサッカーダイジェストで連載していた片野道郎氏とアンチェロッティによる『アンチェロッティの戦術ノート』など、枚挙に暇がありません。その中であえて1つだけ選ぶとするなら、『ジョゼ・モウリーニョ』ですかね。『モウリーニョの流儀』『モウリーニョの哲学』『モウリーニョのリーダー論』などなどモウリーニョに関する本は世の中にたくさんありますが、この本の取材時期は彼が監督デビューを果たしてからポルトでCL優勝という偉業を成し遂げるまで、という点で独自性、希少性があります。モウ本人のコメントも多く、数年前に流行った戦術的ピリオダイゼーションについても少し書いてあります。人はフィクション・ノンフィクション問わず成り上がりストーリーが大好きな生き物ですが、この頃のモウリーニョほど"成り上がってる"人はサッカー界広しといえどもなかなかいないと思います。

まとめ

というわけで、ベストイレブンはこちらです。わざわざ画像作りました。

サッカー本ベストイレブン&サポーター、監督

自分で言うのもアレですがなかなか良いラインナップですね。もし実家も今住んでる家も全焼して自分が記憶喪失になっても、この画像さえあれば必要最低限読むべきサッカー本がどれなのか分かりますね。
このベストイレブン(+サポーター、監督)に食い込んでくる、新たなサッカー本が出版されるのを楽しみにしたいと思います。

参考文献

本稿の中で太字にしてある本のリンクを貼っておきます。念のため言っておきますがサッカー本以外も含まれています。ベストイレブンには入りきらなかった本でも良いのはたくさんあるので、気になったものから読んでみてください。


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