ベナT

主にサッカーの戦術分析系の記事を書いています。

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2022-23におけるサッカー界の升田賞を考えてみた

はじめに皆さんは将棋やったことありますか? 中の人は割と将棋好きで小学生の頃から祖父や友達と遊んでたのですが、とにかく詰将棋が死ぬほど苦手でロクにトレーニングもしてないのでずーっと「下手の横好き」状態から抜け出せずにいます笑でも好きなことに変わりありません。 その将棋なんですが、毎年日本将棋連盟から与えられる賞の中に升田幸三賞、通称升田賞と呼ばれる賞があります。Wikipediaの説明を引用すると、 要するに今までにない、革新的な戦法や一手を讃える賞というわけです。藤井猛九

    • 思い出の名采配を振り返ろうの会

      はじめによく「サッカー監督の仕事は試合前が8割」(人は見た目が9割的な)と言われます。試合中のシステム変更、選手交代は実際の勝敗に及ぼす影響は少なく、試合前にほぼ勝負は決まっている、ということを意味する格言的なやつです。 そうは言ってもやはり監督の画期的な選手交代によって流れがガラリと変わるような試合も中にはあるし、サポーターやオタクからしたらそういう試合ほど印象的でよく覚えていたりするものです。というわけで、今回は個人的に采配が印象に残っている試合をいくつか紹介していきた

      • 22-23CL決勝プレビュー 〜イスタンブールで奇跡は起きるのか〜

        はじめにシーズンの締め括り、CL決勝の季節がやって参りました。個人的にCL決勝だけはサッカーへの情熱が薄れていた時期でもリアタイで見ていたくらいなのでやはり特別感があるというか、サッカーファンにとってのM-1決勝、紅白歌合戦みたいな位置付けだなと思っています。 今回はロクにマッチレビューも書いてないような人間が、人生初のマッチプレビューを書くことにしました。シティ、インテル両チームの特徴や今季のプロセスを軽く振り返りながら「で、決勝はどうなんの?」というところをあれこれ考えて

        • 能動的5バックノススメ

          はじめに フォーメーションの印象論皆さんは「3-4-3」というフォーメーションを見てどう感じますか?(雑な質問ですいません) 3バック&3トップだから攻撃的?それともFW、MF、DFが均等に分かれているからバランスが良い?流石に守備的とみなす人はいないでしょうね。では3-4-3の変化形である5-2-3は?5-4-1は?構造は変わらないけどワイドの選手が若干後ろ寄りだから守備的? この手の質問は、どう答えても不正解になってしまうと思います。強いて言うならクラピカよろしく沈黙が正

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        2022-23におけるサッカー界の升田賞を考えてみた

          サッカー本でベストイレブン組んでみた

          はじめにサッカー本企画第2弾です。 前回の記事は執筆に多分3時間くらいしかかけておらず、2〜3日かけてやっと1本仕上がる戦術分析記事に比べて圧倒的にコスパが良いことに気づいてしまいました。身も蓋もないこと言ってしまえばあれ思い出話してるだけですもんね。というわけでまた思い出話です。 今回は筆者が今まで読んできたサッカー本の中から選りすぐりの13冊(選手達11人の枠に加えて監督、サポーター枠も作っちゃいました)を紹介していきたいと思います。ジャンルも戦術本に限らず、なるべく多種

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          サッカーの戦術本に対する向き合い方とサッカーの見方

          はじめに皆さんはサッカー本大賞をご存知ですか?ざっくり言うとサッカー関連の書籍(読み物)を対象にした文学賞のことです。今年の入賞作品を知りたい方は以下の記事をご覧ください。 海外で暮らした経験があるわけではないので適当なこと言うと怒られそうですが、日本のサッカー本文化はすごいと思います。選手や監督の自伝、ドキュメンタリー系、戦術・データ分析系、トレーニング・練習メニュー系、エッセイやコラムを集めたもの、ピッチ外のサッカー文化全体を取り扱ったものなど色んな種類があります。また

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          偽SBの分類学

          はじめに偽9番に続き、まさかの分類学シリーズ第2弾です。 先日行なわれた親善試合の日本対ウルグアイ、皆さんご覧になられましたか? この試合で日本代表は名波コーチを中心に偽SBを試していたことが会見、インタビューなどで判明しました。 筆者もリアルタイムで試合を見ていたのですが、恥ずかしながらTwitterで上の記事を見るまで分かりませんでした笑言葉を選ばず言うと自分が知っている偽SBとは似ても似つかないというか「え、まさかこれで偽SBやってるつもりなん?」と思ったのが正直な感

          偽SBの分類学

          プレッシング、中から切るか外から切るか

          はじめに某打ち上げ花火みたいなタイトルですが普通にサッカーの話題です。具体的に言うとサッカーの守備におけるコースの切り方のお話になります。 結論から先に言うと「そんなんケースバイケースに決まっとるがな」ってことなんですが、じゃあどういうとき中を切って、どういうとき縦(正面)や外を切るのか、優先すべきことは何なのかについて具体的な事例を挙げつつ解説していきたいと思います。 大前提の部分個人戦術編 部活でもクラブでもなんでもいいですが、サッカーの守備を教わるときにまず言われる

          プレッシング、中から切るか外から切るか

          2004年のギリシャとメタゲーム

          はじめに スポーツとは…スポーツとは何か?何がスポーツをスポーツたらしめる要素なのか? おそらくこの問いに対する回答は、日本人と欧米諸国の人でかなり違ってくると思います。 日本人は今でも「身体を動かすこと」をスポーツと見なしている人が多い印象があります。実際日本におけるスポーツ基本法では、スポーツを「心身の健全な発達、健康及び体力の保持増進、精神的な充足感の獲得、自律心その他の精神の涵(かん)養等のために個人又は集団で行われる運動競技その他の身体活動」と定義しています。雑な言

          2004年のギリシャとメタゲーム

          対ポジショナルプレーとしてのマンマークプレスとその構造的弱点

          はじめに皆さんはポジショナルプレーってご存知ですか? 巷には色んな解説記事、動画、書籍で溢れかえってますがあえて雑にまとめると「攻守において効果的なポジションを取り続けることで相手より優位に立つことを目指す」スタイルのことです。古くはドリームチームと呼ばれた頃のバルサやファンハールのアヤックス(特に1994-95は圧巻)、最近だとペップの率いる(率いた)バルサ、バイエルン、シティはポジショナルプレーを志向しています。そしてそのサッカーに魅了され、影響を受けた指導者たちも指導し

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          サッカーにおける温故知新 〜4-5-1のケーススタディ〜

          戦術は進化しているのか問題中の人は数年の中断期間(?)を経て、W杯からサッカーを再び見るようになった人間なんですが、見てて一番よく感じるのが「戦術は進化していない」ということ。確かにディテールの部分での細か〜いアップデートは一部の監督(主にペップ)で見られるものの、これが果たして進化と呼べるものなのか?と言われると微妙なところだと思います。 個人的な意見ですが、サッカーの戦術は基本的にほぼ全てアイデアは既に出し尽くされています。サッキ・ミラン以前にロバノフスキーがディナモキー

          サッカーにおける温故知新 〜4-5-1のケーススタディ〜

          SBの自由と責任について

          はじめにいきなりですが想像してみてください、あなたは急遽サッカーチームの監督に選ばれました。11人の選手たちも「なんかその辺で暇してた人」とかも含まれていて、当然年齢や身長体重、サッカー経験年数にはバラつきがあります。そんな状況で一番下手で足手まといの選手を置くとしたらどのポジションでしょう?色んな意見があるのは承知の上で、おそらくサイドバック(以下SB)と答える人が多数派なんじゃないでしょうか。勿論プロサッカークラブでそんな状況起きるわけないのでこれは無意味な思考実験ですが

          SBの自由と責任について

          偽9番(false nine)の分類学

          はじめに早速二度目の投稿になります。俗に言う「筆が乗ってきた」ってやつかもしれません。 本稿を書こうと思った動機は、ネットの海を泳いでいて偽9番(false nine)という言葉が割と意味内容がぼんやりとしたまま使われているなと感じたことがあったからです。 他の誰でもなく自分の頭の中を整理するために、もう一度「偽9番」という概念についてより深く、厳密に考えていこうと思います。 まず手始めに一般的な定義から進めていきましょう。 偽9番の一般的な定義そもそも偽9番とは何か?この

          偽9番(false nine)の分類学

          ゾーンとマンツーマンの境目を巡る問題

          はじめに 皆さんはサッカーを見るときどこを見ていますか? ボールの周辺をただぼーっと眺めたり、好きな選手1人にフォーカスしたり、DFラインの上下動だけを見たり…人の数だけ見方があるのがサッカーというスポーツの醍醐味ですが、自分の場合は特に両チームの守備、より具体的に言うならゾーンとマンツーマンの比率はどれくらいなのかに注目して見るのが好きです。今回はカタールW杯の影響でサッカーブームが再燃した典型的なミーハー男が最近気になってる守備戦術について、ゾーンとマンツーマンという観点

          ゾーンとマンツーマンの境目を巡る問題