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22-23CL決勝プレビュー 〜イスタンブールで奇跡は起きるのか〜

はじめに

シーズンの締め括り、CL決勝の季節がやって参りました。個人的にCL決勝だけはサッカーへの情熱が薄れていた時期でもリアタイで見ていたくらいなのでやはり特別感があるというか、サッカーファンにとってのM-1決勝、紅白歌合戦みたいな位置付けだなと思っています。
今回はロクにマッチレビューも書いてないような人間が、人生初のマッチプレビューを書くことにしました。シティ、インテル両チームの特徴や今季のプロセスを軽く振り返りながら「で、決勝はどうなんの?」というところをあれこれ考えていきましょう。

両チームの特徴

今季のシティの特徴は、ハーランドを活かした火力の高い攻撃と4CBによる磐石の守備ブロックにあります。そしてこれによって、攻守の分業化が進みました。勿論引いて守るときは全員で守備しますし、ストーンズやアケは本職CBであるもののボール保持の局面でもかなり貢献できます。
とはいえ全体的にスペシャリストが増えた印象は否めず、攻撃パターンもショートパスを小気味良く繋いで崩して…というよりかはデブライネのスルーパスやクロスからハーランドが決めたり、両WGの相手を引きつけるドリブルからチャンスを作ったりするシーンが多いです。昔に比べて複数ポジション、役割をこなせる選手が少なくなった気がします。イメージとしては11-12のバルサが近いですかね。とはいえ腐ってもペップのチーム。今季も様々な実験をしてなるべくチームがマンネリ化しないよう工夫して勝ち点を重ねてきました。その中で偽SBリコ・ルイスが台頭してきたり、ストーンズがCBもSBもボランチもこなせるトータルフットボーラーとしての才能を開花させたりしました。そんなストーンズが無双していた試合がこちらです。

対してインテルはめちゃくちゃ繋ぎたがるGK、3バックの列移動や攻撃参加、中盤3枚の豊富な運動量、守備時のプレスバックもきちんとこなす2トップ、という風に全員で攻めて全員で守る印象が強いです。主な攻撃パターンは擬似カウンター。オナナやアチェルビから2トップに当ててIHや上がってきたHBがサポート、サイドに展開すればディマルコ、ダンフリース(たまにバストーニ)からの高精度クロスが飛んでくる、という仕組みになってます。バレッラやチャルハノールといった、走れるし得点にも絡める万能型MFがいるのも強みです。弱点を挙げるとするなら引いて守る相手にとことん弱いところですが、シティ相手にそれはまずないのである意味安心(?)かもしれません。

予想スタメン

CL決勝予想スタメン

シティはGKとロドリから前はほぼ決まりと言っていいでしょう。リーグ戦終盤はほぼ同じメンツでしたし、あえて変える必要もありません。問題はDFラインです。右SBが本職のウォーカーなのか、それとも本職CBで偽SBもこなせるストーンズなのか。インテルの左サイドにはヴィニシウスやマルティネッリ、三笘のようなドリブラーはいないのでわざわざウォーカーを使う必要はない気もしますが、やはり攻守両面においてハイレベルなウォーカーはスタメンで見たいです。そして右SBのスタメン次第でCBの人選も変わってきます。ディアスもアカンジも左右両方蹴れるのが強い。まあ何にせよビルドアップの要であるストーンズはSBであれCBであれ必ず出る気がします。
インテルはGKと両WBは特にいじる必要もないので予想通りでしょう。しかし中盤センターはムヒタリアンの怪我の具合、コンディション次第で人選が変わります。ムヒタリアンを使うのであればチャルハノールはアンカーの位置でレジスタとして振る舞いますし、使わないのであればブロゾヴィッチがアンカーでチャルハノールはIHでしょう。DFラインの3人はマッチアップする相手があのハーランド、ということがどう影響するのか。アチェルビ、バストーニはほぼ確で出ると思いますが残り1人がダルミアンなのかデフライなのか。ただCBが一番活きるアチェルビとデフライを同時起用、となるとどちらか片方をHBにしなきゃいけなくなるので、ポジション適性を考えたらダルミアン、アチェルビ、バストーニの並びが無難かなと。シュクリニアルはもう流石に出ないと思います。2トップも地味に悩ましいですね。ラウタロは確定として、その相方に元シティで因縁のあるジェコを入れるか、はたまた最近やたら調子が良いルカクか…この辺は選手のコンディション次第ですね(大体そう)。

注目ポイント

試合展開としては、ボールを持ち、攻めまくるシティvs5-3-2の"バスを置く"インテル、となることが容易に想像つきます。イメージは今季のシティ対ブレントフォードですね。今季のシティはビーズ相手に2敗しているので、もしかしたら5-3-2が苦手なのかもしれません。またシティが世界最高レベルのパス回しを見せるだけで、インテルのボール保持も全然負けてません。バルサ、アヤックスで鍛えられたオナナを中心にシティのハイプレスをかわすだけの力は十分あると思います。今季のCL準々決勝ベンフィカ戦でも、ロジャー・シュミット仕込みのベンフィカのプレスを巧みにかわしていました。

マッチアップで気になるのは両チームのCF対CBの対決でしょうか。プレミアでは並のフィジカルだったルカクと大ベテランのジェコがディアス、アカンジといった現役世界最高クラスのCB相手にボールを収めることができるのか。また今季のプレミアにおいてMVP級の活躍をした怪物ハーランドをインテルDF陣がどう抑えるのか。サッカーはチームスポーツとはいえ、ゴール前で大事なのは人と人とのぶつかり合いや駆け引き、すなわちデュエルで勝てるかどうかです。シティ優勢に見えますが、インテルも少ないチャンスをモノにできれば十分勝機はあります。
戦術的なことで言えば、シティがインテルの3センター脇をどう使うか(逆にインテルはどうカバーするか)が勝敗を分けるカギになる可能性が高いです。3-5-2や4-3-1-2など3センターのフォーメーションは構造上どうしてもサイドチェンジに弱く、大外に揺さぶられるとフリーの選手が生まれがちです。14-15CL決勝のバルサ対ユーベが良い例ですね。この3センター脇をシティの誰が使うか、と考えると真っ先に思い浮かぶのはデブライネ。今季のリーグ戦でもビルドアップが手詰まりになりかけるとサイドに流れてボールの出口を作るシーンをちらほら見ました。そんなデブライネが"バス"の外から高精度かつ高速のクロスやサイドチェンジを蹴ってきたらベテラン揃いのインテルDF陣でも多少は混乱すると思います。
また交代カードで誰を入れるか、そしてカードを切るタイミングにも注目です。シティがもっと攻めたい!点が欲しい!となればフリアン、フォーデン、マフレズあたりは出てくるでしょう。特にフリアン、フォーデンは複数のポジションをこなせるのでフォーメーションを変化させたいときにも便利です。またCBは腐るほどいるのでリードしている展開での守備固めも問題ありません。ウォーカー先発からのアカンジ投入で試合を終わらせる、みたいなことが簡単にできちゃいます。対するインテルははっきり言ってベンチの層は薄いです。CFとCBはそこそこ良い選手がいますが、運動量が必要なWBやIHが割と手薄です。ムヒタリアンの怪我の状態も分かりませんし、決勝の舞台でゴセンスやアスラニが途中から入ってきたところで試合の流れを変えられるとは思えません。スーパーサブ的な役割を期待するとしたらルカク(またはジェコ)だけですかね。ポリバレントな選手も少ないのでフォーメーションのいじり代もそこまでありません。
最後に両チームの論点をボール保持、非保持で分けた画像を作ったのでそちらをご覧ください。

インテルの保持vsシティの非保持
シティの保持vsインテルの非保持

おわりに

CL決勝という世界一の大舞台では相手チームの対策のような小細工は通用せず、「いつも通り」同士のぶつかり合いになることが多いです。そのため順当に戦力的に優っている方が勝つ試合ばっかりで面白味はないんですが、そうした方がたとえ負けても後悔が残らないだろうしメンタル的にも良いんだと思います。いつもやらない不慣れなシステム、ポジションで力を出しきれず終わった…となると悔やんでも悔やみきれませんからね。しかしその「暗黙の了解」に抗い続けているのがペップという監督で、決勝でいきなりペドロとビジャの位置入れ替えたりギュンドアンをアンカーで使ったりします。インテル戦でももしかしたら「え、こいつがスタメンなの!?」という意外性溢れる人選をしてくるかもしれません。フリアンIHとかね。
先ほど「強い方が勝つことが多い」と書きましたが、ベッケンバウアーの言うようにサッカーは「勝った方が強い」のもまた真実です。04-05のリバプールや11-12のチェルシーのように、120分でドローまでもつれ込めばPK戦で勝利を掴み取る可能性も0%ではありません。舞台は"あの"イスタンブールですから。
勝敗予想はあえてしません(当たったことないから)が、レベルの高い試合が見れることは間違いないでしょう。どちらのサポーターでもない第三者のサッカーオタクとして、純粋に試合を楽しみたいと思っています。


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