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TikTokが禁止?インドのSNS事情

インドは来年、中国を抜いて世界で最も人口が多くなると国連が公表しています。2050年にはインドの人口が16億6千万人まで到達し単独トップになるという予測もされており、インドが「巨大市場」であることがわかります。
Webサービス関連企業にとってはインドでサービスをローンチすることができれば、それだけ対象のユーザー数を増やすチャンスがあるとも考えられるでしょう。今回の記事では、巨大市場インドにおけるSNSを中心としたインターネットの利用状況や話題のSNSを中心にお伝えします。

インドにおけるインターネットの利用について

利用者数

まずはインドにおける、モバイル、インターネット、ソーシャルメディアの利用者数を見てみましょう。モバイルの利用者は11億人で人口の81%を占めます。インターネットの利用者については、6億5800万、ソーシャルメディアの利用者は4億6700万人です。

https://datareportal.com/reports/digital-2022-india

日本のソーシャルメディアの普及率が82%であることと比べると、ソーシャルメディアの利用率の33.4%は決して高いパーセンテージではないのですが、過去10年での利用率の増加推移を見ると今後も巨大市場となることは、一目瞭然ではないでしょうか。

https://datareportal.com/reports/digital-2022-india

インド人のインターネット利用時間

インドではインターネットを7時間19分利用しています。またソーシャルメディアは2時間36分です。

https://datareportal.com/reports/digital-2022-india

SNSに使っている時間

また使用時間で見ると、YouTube、WhatsApp、FacebookやInstagramが占めています。

https://datareportal.com/reports/digital-2022-india

利用者が多いSNSプラットフォーム 

インドで人気のあるSNSプラットフォームは、Instagram、WhatsApp、Facebookの順番です。

https://datareportal.com/reports/digital-2022-india

日本ではFacebookのMessengerを活用しているビジネスパーソンも多いと思いますが、インドにおけるビジネス上のコミュニケーションツールはWhatsAppがよく使われるアプリです。
企業もホームページに自社のWhatsApp番号を掲載しており、ユーザーはWhatsAppアプリでのメッセージを通して、商品の注文、問い合わせや詳細の確認などを行うことができます。
さらにほとんどの食品スーパーがWhatsAppの番号を持っていて、お客様は送料無料で食品を注文することが可能です。

TikTokがインドで使用禁止の理由とは?

ここまでの調査結果から、TikTokがランキングに入っていないことにお気づきではないでしょうか。実は2020年6月にインド政府はTikTokの利用を禁止しました。

禁止の理由として「TikTokの親会社であるByteDance社からプライバシーやセキュリティに関する姿勢について十分な回答が得られなかったため」とインド政府は説明しています。

この禁止措置によって、インド国内にいるユーザーはTikTokアプリへのアクセスが出来ない状態となっています。
しかしTikTokがインドで禁止されている本当の理由は「インド政府が中国のアプリを利用することが国家への脅威だと考えているため」とも言われています。

インド政府はTIkTokを禁止したタイミングで、合計59個の中国製のアプリの使用を禁止しており、これらのアプリが「インドの主権、防衛、安全性を脅かす」ものであると主張しています。
この禁止措置はインドと中国の国境付近で両国の軍隊が衝突した後に発表されています。

https://www.bbc.com/news/technology-53225720

政府はこうした状況下で世論の圧力にさらされていたことから、中国に対する立場を表明したとも言えるものだといった見方もなされています。

インド製TikTokも登場

そんななか、インドではTikTokに替わるアプリが登場しています。
TikTok禁止以降に急拡大を広げた一つ「Moj」は、バンガローに本社があるMohalla Tech Private Limited社が開発したアプリです。
アプリを使うことでショートムービーにエフェクトをつけたり、スタンプを押したりなどの加工が出来るようになっており、投稿、シェアすることで交流できます。Mojiでは動画のダウンロードも可能で、15の言語にも対応しています。TikTokが禁止された直後にリリースされ、開始6ヶ月で1億人のユーザーがいるアプリとなりました。

また今年に入って、インドで人気のあるショートムービーのプラットフォームを提供しているアプリ、「MX TakaTak」の親会社であるMX MediaとMojの親会社はMojとMX TakaTakのサービス統合することで合意しました。
このサービス統合でインド最大のショートムービーのプラットフォームが誕生することになります。月間アクティブユーザー数は3億人で、1億人のクリエーターコミュニティを形成することになります。また毎月の動画再生数は2500億近くになる見込みです。

https://variety.com/2022/digital/news/moj-mx-takatak-merger-short-video-platform-1235177763/ 

2021年にローンチされた人気アプリトップ4

下記が2021年にインドでローンチされたアプリ人気トップ4です。

  1. Koo

  2. Tooter

  3. Elyments

  4. Her Circle

1.インド版Twitter①「Koo」

 Koo (クー)はTwitterに似たアプリです。インドのカルタナ州バンガローに本社がある会社が提供しています。このアプリはAprameya RadhakrishnaとMayank Bidawatkaによって開発されました。Kooは当初カンナダの言語でローンチされましたが、今ではヒンディー語や英語などを含む8言語に対応しています。将来的にはインドの他地方の言語にも対応し、インドローカル言語に特化した独自のポジションを築いていきたいと考えています。

https://www.techspecsmart.com/top-5-indian-social-networking-sites-in-india/ 
https://www.kooapp.com/

 KooはTwitterと比較して毎月の新規ダウンロード数でも上回っています。ユーザー数がまだ少ないため、Twitter上でのやりとりもKooに比べると少ない状態です。

https://economictimes.indiatimes.com/tech/funding/amid-twitter-india-turmoil-koo-app-raises-30-million-at-six-times-valuation/articleshow/82946443.cms 

2.インド版Twitter② 「Tooter」

Tooter(トゥーター)もTwitterに似たインド発のアプリです。56以上のインドのローカル言語を使用することができ、インド国内で起きているインド製以外のサービスや物を出来るだけ使わない運動で人気になっているアプリです。
Tooterのプラットフォームを使って、Twitterにある機能はほとんど使うことができます。例えば文章、動画、写真、リンク、ツイートのシェアやリツイート、他のユーザーのフォロー、トレンド中のハッシュタグの検索などです。違いは”Tweet”の代わりに”Toot”を投稿することです。誰かをフォローするとその人の”Toot”が自分のホーム画面に出てきます。 

https://www.techspecsmart.com/top-5-indian-social-networking-sites-in-india/
https://tooter.in/

3.インド版Facebook 「Elyments」

Elymentsはスマホで使われるFacebookやTwitter、Instagramなどのアプリと似たミニブログのSNSアプリです。Elymentsはインドで初めて副大統領がローンチしたアプリです。

https://www.techspecsmart.com/top-5-indian-social-networking-sites-in-india/
 
https://www.elyments.com/


4.女性専用のSNS 「Her Circle」

最後にご紹介するHer cicleもソーシャルプラットフォームですが、女性専用のプラットフォームです。

実は、インド内のSNS利用者のうち女性が占める割合は25%、またインドの人口の8割を占めるヒンドゥー教の慣習からも、男性が多数を占めるプラットフォームで女性が悩みを投稿するのは非常に難しいという背景があります。こうした背景から、インドにいる女性のためのプラットフォームを作り、日々の悩みやその解決策、コミュニティづくりやビジネスチャンスを作れる場所を提供したいと考えて開発されたのがHer Circleです。2021年3月8日の世界女性デーに合わせて発表されました。
 
アプリ開発にあたった企業の創業者NIta Ambaniの夫は世界でも8番目の富豪で、純資産$920億を持っています。彼女はReliance Foundation、Dhirubhai Ambaniインターナショナルスクールの創業者で、リライアンス・インダストリーズの理事でもあります。 

https://www.techspecsmart.com/top-5-indian-social-networking-sites-in-india/

おわりに

現在インドのWebサービス関連企業はソーシャルメディア分野に注力し、インド独自のプラットフォームを提供することにより、グローバルに展開するサービスの競合として台頭しようとする流れがあります。インド人は自分の国や文化に対して高い忠誠心と誇りを持っていることが多く、企業はそうした文化的側面を用いてローカル言語や社会課題に特化することで利用を促進したい考えです。
インド発のソーシャルメディアMX TakaTakが、TikTok禁止の流れに乗ってマーケットシェアを奪ったのと同じように、また新たな人気サービスが生まれるのではないでしょうか。

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