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#19 蛙始鳴の日記(5/5〜5/9)

5/5

立夏おめでとう。夏が立った!それだけでばんざい。
よろこばしくめでたい気持ちになる。

我愛夏日長 (我夏の日の長きを愛す)
薫風自南来 (薫風南より来たる)

Netflixオリジナルの映画「ハーフ・オブ・イット」を観た。ラブレターを代筆するところからはじまる物語。主人公のエリーの口から紡がれる、アスターへの愛の詩情にうっとりしてしまうけれど、「愛は努力」だというまっすぐなポールにとってはそのうつくしさがそのまま残酷さになってしまう。
ソクラテスはギリシア神話を借りて男女の分裂を語り、それを受けたプラトンは男女がおたがいを求めあう衝動をエロスと名付けた。でも、エロスの根源にあるのは、理想を追い求めて自分に欠けているものを満たしたいという克己の願いでもある。「人生は片割れを見つけることじゃない」というこの映画のメッセージは、古代ギリシアの哲学をベースにしながらも、令和の今にきっとだれかの救済になるのだろうとおもう。

SHARPさんのツイートを見て、エアコンの冷房テストをする。備え付けのこのエアコン、暖房が壊れてしまって今年の冬は厚着だけでのりきったのだった。冷房は問題なく動いてくれたけど、フィルターの掃除をしないとな。

七十二候のリズムはセルフネイルメンテにもちょうどいい。夜はネイルを塗りかえて読書。すぐに内容を忘れるけど、なんどでも読み返せばいいんだからともうひらきなおっている。内田百聞もそのようなことが教養だと言っていた気がする。それさえもわすれてしまった。左右の爪は肉色オレンジにつやつや塗られてごきげん。

5/6

立春や立夏はスペシャルデイなので、とっておきのホームケアをする日に。きのうは映画や本でケアしそこねたので、本日おこなうこととする。ホームケアメニューは、お風呂でのハホニコヘアトリートメント、馬油洗顔、ボディスクラブ、MINONのパックを乳液仮面返し。パック後、その表面に乳液をたっぷり塗ってから肌側に裏返してWパックすると、ぷるもちパーン!なお肌になるよという技です。

夏の気配に浮かれぽんちで、昼にははやくも今年のそうめんはじめ。
食料を買いに出かける。スギ薬局でたまたま子ども用の箱入りマスクをみつける。在宅勤務でのオンライン会議にしばしば登場する、ママパパ社員のキッズたちの顔が浮かんで、あの子たちに配れたらいいなと買って帰る。

5/7

外に出ないゴールデンウィークを経て、生活がプログレッシブなリズムになってしまった。ねむれない午前4:44、カーテンのすきまから射し込むひかりは、くぐもってやわらかな薄紫色だった。どうしようもないうつくしさに納得してすっとねむった。
さいきん気に入っているTOKYO NEW GAME HOUSE というYoutubeチャンネルをみながらよるごはんを食べた。

Google Photoのサジェストで、去年の今日はフランス旅行から帰ってきたころだとおもいだす。もういちど行きたいな。でもつぎの旅行先はインドかオランダかフィンランドのどれかにしようと思っている。トランスとアートとサウナを求めています。

5/8

ひさしぶりの出社。新入社員のひとたちが各部署に仮配属された。そういえば去年の同じ日に、私も新入社員の教育指導係になったのだった。私が担当したひとが、ことしは教える側に回っていて、もはやおばあちゃん世代ってことになるな~としみじみ。
そんなじぶんは5年勤続表彰を受けたけれど、おもうところあり。「もちまえの理解力や集中力で…」というような文章で形式上褒めてもらったけれど、わたしのいちばんおいしいところってそこじゃないもんな~。たぶん。きっと。

22時半ごろに同期と退社した帰り道、ふたりでちいさな真理に気づいた。日々の仕事や人間関係でもやもやすることがあっても、具体的なあれこれは次の日には忘れちゃう、でもそれでおしまいじゃない。正体不明の澱が堆積して心がゆっくりだめになる。だから、もやもやの中身をあえて忘れない、つまりじぶんはなにをどうしたかったのか、ということを殺さずに言語化することで前にすすもう。たいせつな真理。たいせつな同期。

5/9

土曜日だけれど在宅勤務。母に買ったプレゼントが届いたので、ラッピングをして、手紙をつけて、明日届くようにコンビニで発送した。手紙はどうしたって照れくさいので、品物をえらんだ理由やおすすめポイントに終始してしまう。間接的な愛でも届いておくれよ。
手紙といえば、こないだ必要な書類を実家から送ってもらったときに添えられていた母の手紙が、なんというかものすごく「おばあちゃんの手紙」のイデアのようでおもしろかった。縦書きのびんせんに、パンジーの押し花が貼ってあって、落ち着いたボールペン字でげんきに過ごしてくれたらそれでいいからというようなメッセージが綴ってある。弱さと強さ、渋さと甘さ。妙に達観した雰囲気に、なつかしいノスタルジーやファンシーが同居して生まれる尊さと愛しさ。やけに沁みる。
こんなことでは焦らないけどさ、ネオなオルタナティブとして、友人が話していた卵子凍結のことは思い出してしまったな。わたしのなかのたまごよ。


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