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逆境によって学び、「よそ者」と一緒に進化する土湯温泉のまちづくり

こんにちは!

一般社団法人グロウイングクラウドのインターンシップ生の原田です。


「GOOD LOCAL!オンラインツアー~福島市土湯温泉町編~」がいよいよ今週の土曜日、2月26日に開催されます!

 今回は、イベントのゲストとしてご登壇いただく、土湯温泉観光協会会長、株式会社元気アップつちゆCEOの加藤貴之さんにインタビューさせていただきました!
 加藤さんは土湯温泉を開放し、「よそ者」を受け入れるなど、新たな取り組みをされています。この記事では、土湯温泉での取り組みを中心に、地域が進化していける背景やその原動力をお聞きしました。

【加藤貴之さんプロフィール】 
 自身が生まれ育った温泉観光地の活性化を図るべく「NPO法人土湯温泉観光協会」会長および再エネを核とする地元資本のまちづくり企業「株式会社元気アップつちゆ」代表取締役CEOとして組織の指揮を執りつつ様々な地域づくり戦略や誘客施策の企画立案に携わるとともに、本業では日帰り温泉施設等を展開する「HEART計画株式会社」代表取締役および高齢者介護施設等を展開する「社会福祉法人多宝会」理事長を務める。




1.再生可能エネルギーを利用して生まれた2つの「特徴」


―発電事業を始められたきっかけは何ですか?

 これらの事業を始めた大きなきっかけは、東日本大震災と原発事故にあります。震災により土湯温泉は物理的にも大きなダメージを受けました。土湯温泉の中心部にあった16軒の宿は震災後1年以内に6軒、つまり1/3以上が廃業してしまいました。また、お客様が沢山泊まられている観光温泉地でありながら3日間停電してしまったんです。3日間停電したこと自体、マイナスなインパクトがありましたし、電気がなかったらこんなにも不便なのかと思わされた出来事でした。そんな経験からエネルギーへの考え方が一変したんです。エネルギーの大切さ、そして原発から脱する、といった2点をこの温泉地でも考えていかなければならないのではないかということで発電事業を始めました。
 また、実は震災前から観光業や温泉旅館業は低迷していたので、旧態依然とした観光温泉地の売り方で本当にいいのかと考えていました。そこに震災や原発の事故があり、これからの観光温泉地のあり方というものを改めて考えさせられたということになります。

バイナリー発電所

―発電事業とは、具体的にはどのようなことをされていますか?


 これまでお客様に泊まってもらうか、日帰りで旅行に来てもらうしかなかったのに、「これからはエネルギーだ」といきなり言ってもよくわからない。しかし、そんな中でも間違いなく、希望があると思ったのが温泉熱です。間違いなく温泉熱は熱エネルギーの源泉として利用できると考えました。それまでも冬場に雪を溶かしたり、自然の温泉暖房を作ったりと、温泉を利用した取り組みは実績としてありました。「この温泉熱はただ者じゃない」ということで、専門の企業さんに問い合わせたことから、温泉の発電施設が生まれました。
 さらに、川に囲まれた土湯温泉。その川を利用して水力発電を行っています。何千年も前からある地形の恵みを利用した発電という点では温泉の熱発電と同じく、どちらも再生可能エネルギーと呼ばれるものです。


―養殖事業は温泉とどのようなつながりがあるのですか?

 養殖事業は発電事業を始めてから気づきがあったのですが、発電事業を始めてみたら、温泉バイナリー発電をする中で、いらなくなる21℃のお湯が発生することに気づきました。この21℃のお湯も、生成しようと思ったら莫大なエネルギーが必要になるのに、これを捨てるのはもったいない、ということから、このお湯で何かできないか、と考えました。そこで調べてみると、国から再生可能エネルギーの理解促進のための補助金があり、それが活用できるのではないかと思いました。
 また、エビを選択した理由としては、観光地は「遊ぶ、食べる」といったアクティビティの部分が必要だということで、それなら生き物だ、という結論に至りました。最終的には、温泉を利用し、簡単にできて意外性のあるオニテナガエビというエビを選びました。今ではえびの釣り堀のカフェができていますし、「山でエビなんて面白いですね」といったようにインパクトを与えられています。また、「再生エネルギーを利用して、このような生物を育てることもできます」といった再生可能エネルギーの理解促進にも貢献していると思います。

土湯温泉のオニテナガエビ


2.土湯温泉にはイノベーションの土台がある

―長く続いている温泉地で新しいことを始めることに対して、地域の方の抵抗は少なからずあったのではないかと思います。地域の人からの理解はどのようにして得ましたか?

 土湯温泉は、昔から観光振興ではなくまちづくりを勧めてきました。そして、まちづくりをするにあたって新しいことにチャレンジする風土もできていました。老舗の温泉地では、この景観を守っていかなければならないんだという所もあれば、この泉質一本で勝負していこうとする秘湯もあります。土湯温泉はそういった歴史と伝統を守ることもちろんなんですが、どんどん新しいことを展開することによって発展してきた温泉地です。逆に言うと特徴がないということなんですが、「特徴がないならつくるしかない」というところが土湯温泉の基本的な発想の部分にあります。


―発電事業・養殖事業についての理解はどう得たのでしょうか?
 
 
土湯温泉のチャレンジに抵抗がない風土から、新しいことを始める興味の土台に住民をのせること自体は大変ではありませんでした。ただ、発電施設を作ることで温泉の成分が変わったり温泉が枯渇したりといった被害が起きるのであれば温泉地として死活問題になってしまう。一つを削って一つを得る、ということになってしまいます。そこで調べたところ、バイナリー発電の仕組みは穴を掘るなどをしない、自然に手を加えず、吹き出してくる温泉の上にバイナリー発電装置を置くだけでした。地下をいじめないし湯脈も変わらない、発電装置を経て旅館に届けられる温泉の成分も量も変わらないということが科学的に証明されたので、住民の理解も得られました。土湯温泉の源泉地域の地形と形状、温泉の吹き出し方が、バイナリー発電をするのに最も適した環境だったことに助けられました。


―新しいことにチャレンジする、その原動力はどこにありますか?

 土湯温泉は温泉町であり、商売があり、そして住む人がいます。原動力としては観光地である以上は人がいっぱい訪れていただける地域でありたい、といった気持ちが大きいのではないかと考えています。閑静な住宅街であればそんなこと考えなくてもいいですし、それ以上の発展をしなくてもいいと思います。しかし土湯温泉は観光地なので、その使命といいますか、何をもってこの観光地はあるべきかと考えたときに、人々を喜ばせ、人々に楽しんでもらい、幸せを与えることができる地域でなければならないということが根本にあると思います。


3.逆境をバネにして発展する。それが土湯温泉の強さ

―東日本大震災やコロナ禍といった逆境とどう向き合ってきたのですか?

 震災のときには壊滅的な打撃を受けましたが、このピンチをどう生かしてこの温泉地を盛り上げるか、ということで生まれたのが発電事業です。また、観光温泉地としてのイメージで最も打撃があるのが廃旅館や廃屋なんです。そういったものも、土湯温泉は国、県、市の力もお借りして、補助金を活用して全て無くしました。行政の力も借りながら産官学金も含めて連携があって、復興してきました。
 このように、バネにできる土壌が土湯温泉にはあると思っています。マイナスになったときにその分発展しています。まちづくりとして、観光地として、震災前よりも土湯は発展しました。
 また今回のコロナ禍では、物理的な被害が全く無いのに人流が止められたことが観光地として大きな打撃でした。実はこのコロナ禍は、震災のときよりもお客様が減りました。しかし、この2年の間に土湯温泉はコロナ禍だからこそできる施策を沢山してきました。例えばDX関係を推進し、リアルで来ていただくことが基本であっても、リアルに来られたお客様に対してDXを活用して地域の活性化や、観光の革新的な事業ができないかと考えてきました。
 
 一番大きな変化は「よそ者」をどんどん取り入れていこうという動きを活発化させたことにあります。こういったピンチのときには人と人との繋がりが大事ですし、力を合わせていくことが大事になってきます。
 DX推進と、よそ者を取り入れる動きには効果が出てきています。今はまだコロナ禍なのでまだ人流は戻ってはいませんが、「土湯温泉がコロナ禍でも非常に元気だ」といった印象をもっていただいているみたいです。コロナが収まる瞬間瞬間には沢山のお客様に来ていただけています。そういった意味では、またこのコロナウイルスの影響が一つのきっかけとなってこれからの観光業がどうあるべきか、ということにまた改めて気付かされました。
 今世界の共通言語で、「レジリエンス(resilience:回復力)」といった言葉がありますが、土湯温泉はまさにレジリエントな温泉地域だと思いますし、そこを目指したいと思っています。


4.地域を開放し、「よそ者」と一緒に活性化するまち

 
 土湯温泉は人口300人の小さな町で、このような高齢化と人口減少が進んでいる地域では観光業をリードする活動家はほとんどいません。しかし当然まちづくりや地域おこしにはヒト・モノ・カネが必要になってきますので、「自分たちだけでやる」という考えを捨てようというところから始まりました。だとしたら何が必要か。「外の力」「外の知恵」「外のカネ」といったように、いろんなことを外に求めていくしかないだろうと考えました。「よそ者」を取り入れて、知恵を借り、いろんな意味でハイブリッドな温泉地をつくっていこうとしています。
 具体的には、「オープンプラットフォーム」という言葉を使わせていただいています。地域をどんどん開放し、外部と連携をしてプラットフォームをつくっていく。これによって、地域内の人には分からないことが、外からの視点によって、良いところも悪いところも明らかになっています。私たちは観光業の人を呼ぼうとは思っていません。「観光」という産業はとても幅広いものですので、観光とは全く関係のない人の方が実は結果的に観光に生きてくるということがあります。ですので、現在、いろんなジャンルの方と手を結ばせていただいています。

―今後土湯温泉に新たに取り入れるべき「よそ者」とはどんな人だと思いますか?

 私たちではできないことを持っている人たちだと思います。例えば、土湯温泉は国立公園の中にあるのですが、その大自然を活用して公園をつくりたいと考えた時には、アクティビティに長けており、それを仕事にする「遊びのプロ」と一緒にやってみるのが一番いいのです。プロに相談すると土湯温泉を活かすことができるアイデアがどんどん出てくるのです。これは凄くありがたいことだと思っているので、「どんどんやってください」と言っています。しかし、私たちとよそ者の方々の間に契約は存在しません。「オープンプラットフォーム」の大事なところは、契約関係がなく、お金のやり取りをしないことにあります。私たちは「土湯温泉を上手に活用してもらって、自分たちで稼いでください」というスタンスでやっています。当然企業さんは自分たちが稼ぐためにやるので稼げればそれでいいし、土湯はそれで自然に活性化する。ただし、協議だけはするようにはしています。
 また、色々な仕事を温泉に絡めたいということで、ワーケーションにも取り組んでいます。関係人口を増やすうえで、コワーキングスペースがあれば新たな拠点になるのではないかと考えました。しかしコワーキングスペースなんてやったことがないので、コワーキングスペースで実績のある中野友登さんと繋がってコワーキングスペースを開設しました。これによってそれまでとは少し違う仕事の方が入ってくるようになりました。
 
 震災後、廃旅館がなくなったとはいえ、空き店舗は高齢化に伴って増えていたんです。それが、このコロナ禍の2年でほとんど埋まりました。「土湯でチャレンジすればうまくいくんじゃいか」といった雰囲気を作れたことで、外から「土湯でやりたい」と言って下さる方が沢山いらっしゃったのだと思います。こういったことの繰り返しで、外部から入ってくる人によって土湯温泉が活性化しているんです。

5.加藤さんから「よそ者」とのまちづくりについて聞ける!26日のオンラインツアーへぜひご参加ください!

 
 インタビューを通してまちづくりのあり方、エネルギーの必要性などを改めて考えさせられました。また、「よそ者」として今、福島県に関わらせていただいている身として、土湯温泉には絶対行こうと強く思いました。
 何かにチャレンジしてみたいと思っている方、福島県に興味がある方、土湯温泉に興味を持たれた方、ぜひ、2月26日にオンラインで開催される「GOOD LOCAL!オンラインツアー~福島市土湯温泉町編~」にご参加ください!


●当日ご参加いただき、アンケートに回答いただいた皆さまには、後日、土湯温泉の魅力がギュギュっと詰まったお土産をお送りします!!
●詳しくは下記URLからご確認ください!☟皆さんの参加をお待ちしております!


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