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【未経験エンジニア転職】SESは転職先としてアリか?ナシか?

あいはらです。

未経験でエンジニアへキャリアチェンジをするとなった時、転職先企業選びは今後のキャリアを形成する上で非常に重要です。

一般的に転職先に挙げられる企業ジャンルとして、事業会社(いわゆる自社開発会社)、受託開発会社、SES会社の3つです。未経験の転職者は、事業会社よりも、圧倒的にSESに入社しやすいとはよく言われているものですね。

理由は考えずとも明らかです。事業会社は技術や知見だけでなく、開発現場でしっかり仕事をこなせる即戦力が求められます。レベルの高いエンジニアによってリリースされたプロダクトを、より良くしていく為に必要な人材確保に、わざわざ採用コストのかかる未経験エンジニアを雇うメリットはないですよね。

逆に、SESは未経験でもできる仕事も多く、専門的な知識やスキルが無くとも働ける案件が多いので、積極的に未経験エンジニアを雇っても大きなコストにはなりません。

要は、採用する企業が、未経験のエンジニアをコストがかかってでも雇うメリットがあるかどうかです。残念ながら会社は慈善事業ではないので、利益を求めるには当然ですし、仕方ない点でもあります。

今回は、未経験でも入りやすいと言われるSES企業についてお話しようと思います。実際に経験して、なぜ入りやすいか。でも、メリットも十分にあるし、正直会社によるところも大きいので、ご参考までにどうぞ。

そもそもSESって何

「システム・エンジニアリング・サービス」と言って、雑に言えばSEを派遣する会社です。エンジニアを求めるクライアントに対して、自社に所属するエンジニアの中で、スキル及び人柄がクライアントの案件にマッチングするエンジニアを派遣する契約を交わし、その人の単価で売上を確保する業態となります。

「案件ガチャ」とよく言われている所以として、この「クライアントの案件」が幅が広いことにあります。そして、SES企業ごとに得意とする分野も異なり、企業の経営方針によっても獲得している案件の種類も変わります。案件を選ぶ選ばない以前に、我々求職者側がSES企業自体を選ぶ必要があります。そうすれば、ある程度「案件ガチャ」は回避できると思います。

そんなSESを、未経験の転職先に選ぶのは実際どうか。
本当に人によるとしか言いようはないですが、私は「アリ」だと思います。むしろ「選ぶべき」と言ってもいいかなと思っています。

なぜ未経験を積極的に受け入れられるのか

そもそも「未経験」と一括にして考えると説明つかないなと。「未経験」にも度合いがあります。求職者側も、自分がどの程度の未経験か把握し、企業側もその度合を理解、検討した上で内定を出すべきです。それくらい双方のミスマッチの原因となる要素だと思っています。

以下、筆者の偏見でしかないですが、「未経験」を大きく2種類に区分してみました。

①完全未経験
 ・新卒〜第2新卒レベル
 ・社会人経験がある程度有るレベル

②実務未経験
 ・独学者及びスクール卒
 ・別ジャンルのエンジニアからキャリアチェンジ

なぜ未経験を受け入れることができるのか。
これは「SES企業だから」受け入れられるのではないと思います。「未経験者でもできる案件が有るSES企業だから」受け入れることができると思っています。

当然レベルの高い案件ばかり保有するSES企業もあります。開発案件を豊富に持つSES企業もあるでしょう。インフラ案件を得意とするSES企業だってありますね。そうじゃないSES企業もあるんです。そうじゃないSESが、世間一般にSESに対して悪い印象をもたせている原因なんじゃないかと思うくらいです。

確かに未経験は受け入れてくれやすい業態ではあります。ですが、上記の事実を考えた上で、転職先企業を慎重に選ぶ必要があります。
もう少し具体的にお話する前に、未経験の区分けを簡単に説明します。

①完全未経験

その名の通り、本当の未経験です。IT業界の知見、専門職としての技術等のキャッチアップを行っておらず、いわゆる「ポートフォリオ」も無い。「これからがんばろう」という方です。

同ジャンルの方と差を出せるとしたら、新卒〜第2新卒レベルと社会人経験がある程度有るレベルで違いがあるかなと考えています。

前者は圧倒的に「若さ」が強みです。ここでいう若さは、残業をめちゃくちゃできる体力とか、肌ツヤが良いとかそういうことではないです。エンジニアのキャリアを積む上で、何年もの時間的アドバンテージがあること。勉強する時間も、これから自身のキャリアを考える時間も、十分すぎるほどに余裕があります。うらやましい。

後者はそのまま「社会人経験」が強みです。報連相ができるか、タスクの優先順位を判断できるか、タスクの粒度化や具体化ができるか、業務を行う上でのエスカレーション能力及びコミュニケーション能力は備わっているか。仕事を行う上で必要最低限のビジネスマナーは、案外、身についていない人が多いので、これができるだけで間違いなく強みとなります。

②実務未経験

実務は未経験ですが、エンジニアに転職するにあたり既に自走している方になります。独学にしろ、スクールにしろ、自己研鑽を高水準で行い続け、資格やポートフォリオといった、他者へアウトプットする事ができるものがある、ないしはそれに準じた能力を持つ状態です。

もしくは、既にIT企業にジャンルの異なるエンジニアとして就業されている方。IT業界の慣習やコミュニケーション方法、従事している業務に関する知見やスキルをある程度把握していて、キャリアチェンジする職種に対しても十分自走ができると他者から判断される状態です。

いずれも、職務経歴に記載できる「実務」が無い事がネックであり、転職活動を行う際に最も対策を行う必要がある部分になります。

正直に言えば、いわゆる「未経験」でエンジニアへの転職を考える際、最低限度これらのレベルまで達していないのであれば、これからずっとキツいと思います。

完全未経験<実務未経験の理由

できる仕事の幅が異なるのが一番の理由です。

実務未経験者の場合、SESの企業側が求職者のポテンシャルを把握しやすく、求職者が具体的な自走力を持っていることや得意分野があることから、クライアントに対して案件を提案しやすいのです。つまり、求職者側が学習した内容や、能力についてを活かした仕事に、マッチングできる可能性が高いということです。

逆に完全未経験者は、極端に言ってしまえば「何も無い」状態です。企業側の気持ちになって考えてみれば「ポテンシャルを判断しづらい」。専門知識を身につけているという努力も目に見えない状態ですので、「自走力」を判断できません。エンジニアという専門知識が必要な職種に対して、自ら学び続ける姿勢がわからない。これは、そもそも長く働いてくれるかも判断しづらい状況と言えます。

完全未経験者に比べて実務未経験者のアドバンテージが大きい事は、上記の通りを容易に想像できますね。でも、完全未経験者でも採用されやすいSES企業が存在する。それは事実です。いや、本当に不思議な業態です。

完全未経験ウェルカムの実際

SESは、専門知識を身に着けた技術者を派遣する業態である事は説明いたしました。先に一般的に想像しうる事を出してしまい恐縮ですが、「エンジニアの仕事」を思い浮かべると、プログラマーやコーダーといった、コードに触れる業務を思い浮かべますね。

それも正解で、実際にコードを書いて機能を実装する前の段階で、設計書や要件定義を担当する人も、エンジニアと言います。(いわゆる上流工程ですかね)そんな彼ら複数のプレイヤーらをディレクションする人も、エンジニアと呼びます。いずれも専門知識を用いて業務をするので、「エンジニア」として呼ぶ職種ですね。

「質問に答える問い合わせ業務」はエンジニアと呼ぶでしょうか?勿論、エンジニアです。エンドユーザーからのお問い合わせ対応が起点となる業務を担当するカスタマーサクセスエンジニアや、クライアントからのシステム的問い合わせが起点となるテクニカルサポートエンジニアも、エンジニアです。聞かれたことに対して回答するには、正しい調査や連携が必要です。設計書や過去ログを調査したり、開発部隊にエスカレーションしなくてはならないので、専門知識が必要ですね。(※肩書や業務内容は諸説あり)

「キッティング」という業務をご存知でしょうか?クライアントの指定した現場に、PCやタブレット、周辺デバイス等を設置・設定し、使用できるようにする業務です。皆様が小学校や中学、高等学校に通っていたときに使用していた「情報処理室」の大量のPCにサーバー。あれは実はエンジニアがセッティングしています。インフラエンジニアの業務の一部ですね。

一概には言えませんが、この中で未経験の人が短期間で即戦力になれそうな業務はいずれになりますでしょうか。「とりあえずアサインされて、やってみて」と放り出された場合、完全未経験者は要件定義ができるでしょうか。手順書が既に整備され、定常的なゴールが見えている業務であれば、いわゆる「そのまま説明書に沿ってやれば」いけそうですね。

上記までは、世間一般に「エンジニア」として想像できる業務内容で、未経験の度合いでどこからアサインされるか、例をあげて考えてみました。では、SES業界の闇とも言うべき、「本当に、本当にこれはエンジニアか?」という例をちょっとだけ考えてみましょう。

家電量販店の販売員や、コールセンター業務について、よく聞く悪い噂について。こちらはSES企業にもよりますが…どうやら実態としては本当にあるようです。

でも、エンジニアの定義で判断してみてください。どちらも「専門知識」が必要な業務ですね…?と、思うと、エンジニアとしての業務と言えてしまいそうですね…でも、定義から判断すれば、納得せざるを得ない気もします。そりゃ、そういう案件もそりゃあるよなあと。勿論、SESの意味やエンジニアのキャリアを考えると、当然ズレてると思うのであんまりよろしくないですよね。

「案件ガチャ」で大当たりを引いたとしたら

案件ガチャという単語も、まとめて括りすぎている気がするので、説明のため、これも2つに分けてみましょう。

①実務経験は身につくが、労働環境が劣悪な案件
ガチャを引いて、この案件ならばぶっちゃけマシかと思います。体力や精神をすり減らしながら働くので、早々に離脱した方が健康のためには良いですが。しかし、未経験なのに実務経験をグングン入手できそうです。期間を決めて取り組んでみるのもありですね。でも…健康が一番なので、実際は「実務経験も身につくし、労働環境もそれなり」がベストです。

②実務経験すら身につかない案件
これはもうエンジニアへキャリアチェンジした意味を見出だせなくなるやつです。開発エンジニアを目指しているのにコールセンター業務。インフラエンジニアを目指しているのに家電販売店の販売員業務。目指したいキャリアに対して、経験を積める現場でしょうか。その上で、労働環境が劣悪だった場合…今どき、そのような人権無視まがいのウルトラブラック案件は無いでしょうが、万一存在して、万一アサインされたら…想像しただけで震えますね。

夢や希望を持ってエンジニアに転職したのに、そんな状況になった場合。あなたはモチベーションを保てるでしょうか。この環境を変えようと行動できるでしょうか。精神と時間をすり減らしながら行動するより、まずは完全未経験から実務未経験になるため、先に調査や学習を行う事ができる、「自走力」を身につけるべきです。

逆に言えば、自走力すら身につけることができないのであれば、従事できる案件は限られてきます。自身の適性を見極めるためにも、楽な道は無いですし、努力が必要です。大変な職種ですね。

じゃあ、実務未経験はどうなるの

上記でも述べた通り、SESの企業側もポテンシャルを判断しやすい為、仕事の幅が広がります。かつ、求職者側が望まない案件にアサインされる可能性も少なくなるでしょう。

その上、ポテンシャル枠等で未経験者が採用され、歩みたいキャリアに関する実務経験を積める事は、未経験者にとって最もお買い得です。

独学やスクールで学んだとは言え、まだまだ技術の知見は未知な事が多い実務未経験者ですが、様々な開発現場に行くことで新たな知識をキャッチアップできる可能性があります。そして、多様な業界知識を得ることになります。人脈を築いていくこともできるでしょう。

要は、自分の市場価値を短期間で伸ばせる可能性があるので、SES企業を転職先に有りだと思っています。

というか、自らのキャリア形成のためにSES企業を活用するくらいであった方が、より自身の為になるとは思いますが、そもそもその方法を取れるようになるためには、やはり自走力は必要です。「未経験歓迎」という単語は素晴らしくも素敵ですが、目先の利益に惑わされるより、長い目で見て、自分の為になる方法で着実に準備したほうが良いと思っています。

どんな企業に入社しても、未経験者はなおさら、そこはゴールではなくキャリア形成のスタート地点です。未経験者がSES企業を選ぶことが極端にヨシという事ではないですが、少なくとも自身にとってその選択に対して、メリットが多いのか、デメリットが多いのか、しっかり判断するべきです。その考えさえ自分の中で落とし込んでいたら、SES企業を転職先に選んだ場合に、どんな会社が自分にマッチングしているか、分かった上で転職活動ができるのではないでしょうか。

ちなみに筆者は、現状SESしか経験がありません。事業会社も魅力的なプロダクトがあれば、是非携わりたいと思うでしょうし、受託会社もゴリゴリに開発ができそうなので良いなとも思いますね。

ただ、実務経験が浅い今のうちに、目標とするキャリアの為に必要な知見や技術、業務知識を短期間で得られる業種はレアだと思うし、なによりご縁をいただいたSES企業の環境にとても恵まれています。エンジニアのキャリアを第一に考えてくれる環境に身を置けたのは、本当に幸運だなと思います。

一般に「SESがブラック」と言われるのは、求職側の考え方の違いや、実際の背景や悪い話ばかり目立つ気がするので仕方ないですが、しっかり私達が企業を選んで、企業側ともマッチングするなら、めっちゃ良い選択になりうるのではないか、なんて思います。

今回は以上です。
ご参考までにどうぞ!

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