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ちびたの本棚 読書記録「ほんものの魔法使」ポール・ギャリコ

主人公のアダムは、魔術師名匠組合に入るためのテストを受けるため、はるばる都市マジェイアにやって来た。そこは世界で活躍する魔術師だけが住むことができる魔法の街だ。

実はアダムは魔法使いであって魔術師ではない。それが明らかになった時の魔術師たちの心を埋め尽くしたのは畏れや羨望、妬みである。

アダムはタネのある魔術(奇術や手品)を貶めているわけではなく、自分が使う魔法とは別のものととらえている。一方、魔術師名匠組合の者たちは、理解の範疇を超えたものを拒絶する。また、自分たちの立場を危うくするだろう相手を、あらゆる手を尽くして迫害する。
なんという狭量さか。

この物語を読んで、そもそも魔法とはいったい何か、と考えさせられた。
技術を研鑽して人々を楽しませる魔術か、不可能を可能とする魔法か、世界を作る宇宙や自然の営みか、それとも人の心の内に備わっている力なのか。

子供の頃に読んだポール・ギャリコの作品のひとつ「ハリスおばさんパリへ行く」は、確か掃除婦のハリスおばさんがパリへ行って何らかの出来事に合う話だ。その続編では、なんと大胆にもニューヨークへ出かけてしまうという、子供にも楽しいストーリーだった。
何十年も経った今、もう一度ハリスおばさんシリーズを読みたくなった。
記者だったというポール・ギャリコの伝えようとしていたこと、それは「ほんものの魔法使」のように、ハラハラドキドキの楽しい冒険譚だけではないと思うから。


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