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厠掃除争奪戦!

#エッセイ #恋愛 #お金 #迷信 #自由律俳句 #掃除

 皆が率先してやりたがらない掃除はなんでしょう?
宮中(学校)でお局様から厠掃除を命じられ、さっさと掃除を済ませて屋敷に早く帰ることしか私は考えていませんでした。
 私のいた宮中では、上から降ろされている紐を引くと流れる厠と和式の厠だらけで、洋式の厠は一つしかなかったり、お偉いさん方(先生)たちしか使うことが許されていませんでした。
 おまけに物の怪が出てきそうなくらいとてもボロボロでとても汚かったのです。
 今現在は、その当時と比べるととても綺麗ですが・・・。
掃除道具を持ち、いざ掃除、参らん!と思っていくと、そこでは女の戦が待っていたのです。

 何事かと見ていると、誰が厠掃除するのか争っていたのです。
掃除したくないがための争いなのかと思い、呆れて見ていたのですが、どうも様子が変なのです。
睨み合うだけならまだしも、人の良さそうな顔して争っているのです。
しかし、何故そのようなことになっているのだろうと聞くと。
「厠掃除するとお金のめぐりが良くなるんですって!」
「可愛い子供が生まれるんだって!」
 え?まさか?そんな迷信でこの厠掃除を巡った争いが起こっているの?
 こうなると階級(カースト)なんて関係ありません。

 厠はいくつかありますが、そんな迷信のために争われる厠も迷惑な話で漫画のように雫が見えるくらいでした。
じゃんけんして決着つけるか、早い者勝ちか、もう飽きれるほどめちゃくちゃで、私は時が過ぎるのを只々見ていることしかできませんでした。

 私はどさくさに紛れてサッサと掃除して帰ることしか考えていませんので、そそくさと済ませました。
すると、苦情の嵐が凄かったのです。
「なんで掃除するの?!」
「私がやりたかったのに!ズルい!」
「お金と可愛い子どもが欲しいんだ!」
 さすがこれには呆れただけでなく、日頃のこともあったので怒りに震えながらも言いたいことを言う事にしました。
「喧しいわ!私は早く掃除して屋敷に帰って寝たいの!」
 普段怒らないだけあって、連中は圧倒されて静かになっていました。

 その後、手洗い場を綺麗にしたばかりだというのにお局様が手洗い場を汚して「ここをお願いします」と指を刺されて言われた時は、雑巾投げて「自分でなさってください!」としました。
 呆然とするお局様をよそに私は心の中でぶつくさと文句言いながら、もう一度綺麗にすることにしたのです。
 このお局様は厠掃除入れの戸口に、厠の神様の歌を貼り付けていました。
あの手この手使ってどんだけ掃除させたいんだ、厠に神様が降臨したら見てみたいわと当時は思っていました。

 かつてそんなことがあったという話を紫の君にしました。
「お金のめぐりが良くなると聞いたことはあるが…やべぇな」
そりゃあ引くでしょうに…。
「それにしても、そんな迷信で振り回されるなんでどれだけ阿呆なんだ」
ごもっともな意見でございます。
 そうはいうけれど、紫の君だって机や書棚、厠まで掃除してスッキリしたという顔しているのです。
気持ちを上げるだけでなく運気も上がるからというのです。
紫の君から「厠掃除のやり方教えるぞ」と言うので「ご教授願います」と私は返事するのでした。
 二人で交代して掃除するようになれば、迷信ではありませんが、将来可愛い子に巡り合えるのでしょうか?

 なんにせよ、掃除する理由は何でも良いのです。
お金の流れが良くなる、可愛い子が生まれるという昔からの迷信は、女の子に掃除させるためのものだったのでしょう。
 もし、それで運が良くなり、可愛い子に巡り合えたなら迷信ではないのかもしれません。

 それが、本当なら・・・。

我先に 望を懸けて 争うも ことは進まず 願い叶わず 

厠争奪戦
作画/道成寺 夜香

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