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連載小説【正義屋グティ】   第4話・カタルシスの民

※注意 1〜3話を読んで頂き、ありがとうございます!この第4話は諸事情により、本編と路線が少しずれたスピンオフ作品となります。(なお、本編と無関係ではないです)そのため、早く本編の物語を追いたい方は『第5話・意地悪な』に進んで下さい。
  

第4話・カタルシスの民

3008年
ここはカルム国の首都、カタルシス。その町並みは草花や道路、ビルなどがきれいに整えられていて、世界的にも綺麗な町として有名である。だが、そんな綺麗な町並みに反して、赤や青の髪をした出来損ないが町中を徘徊しているのが、町民は気に食わないらしい。
「あなた達!正義屋の人達でしょ。あんまりこの店で溜まらないでくれない?おバカな店だと思われるじゃない」
道路沿いに建つ赤レンガ造りのデパートのテラスからそんな声が溢れ出る。耳をすませば、炎天下に照らされている駐車場でも同じように正義屋の職員たちがしいたげれられている声が聞こえる。正義屋は国の出来損ない。政府が作り出したこの機関を疑問視する者も少なからずいたのだ。それはまだ13歳の少年も例外ではなかった。
「ねぇじいじ、なんであの人達あんな言われ方しているの?かわいそうだよ」
エドワードは高級車の窓から外の景色をまじまじと眺め、運転席の祖父・ハリソンにそう問いかける。
「かわいそうだが、政府が今のままである限りこの現実は変わらないんだよ」
そういうものか。エドワードは無意識に夏の乾いた空気に触れるべく窓を開ける。海からそこそこ離れている街にも関わらず、この街はどこか湿っぽかった。
「ちょっと、近くの噴水公園で休まないか」
ハリソンの問いかけに黙って頷くと、黒の高級車は場違いであろう公園に向かった。
公園につくと、大きな噴水の周りに親子が群がり戯れている。
「なんか、いいな。ここ」
エドワードがほのぼのしてベンチに腰掛けようとすると、何やら噴水の奥の方で自分と同じくらいの年の少年が大人ともめているではないか。噴水の水で見えにくいが、その少年の髪の毛は青色で染まっていた。
「じいじ、行ってみよう」
「そうだな」
二人はゆっくりと噴水の裏へと回ると、女性が少年に怒り狂っている様子がはっきりと目に入った。
「あのね!私の息子があなたに殴られたと泣きついてるのよ!認めなさいよ」
「はぁ?このガキが俺のことバカ呼ばわりしたから、頭をつついてやっただけだ」
「くー!これだから、正義屋の養成所生の評判は悪くなるのよ」
喧嘩する少年と女性、その近くで大泣きしている子供が頭を押さえていてこの会話。理解できない方が不思議なくらいだ。噴水が一時的に止まり息子の泣き声がより鮮明に耳に入ると、女性の怒りはますます熱を帯び遂には
「この、クソガキが!」
と叫び手を上げようとした。その時、すかさず仲裁に入ったハリソンによって女性の手は空中でピタリと止まった。
「その辺で辞めておきなさい」
「ハリソン大臣⁈」
女性は突然の男の登場に思わず腰を抜かした。
「ハリソンって、あの政府の…」
少年も咄嗟に顔を上げハリソンの顔を見つめる。ハリソンはカルム国の政府の一大臣、いわば国の幹部のような役職に就いていたのだ。
「正義屋養成所生だからという𠮟り方は止めてもらおうか、あとは俺が指導するからあなたはお子さんを連れて引き取りなさい」
ハリソンが強い口調を放つと、女性は情けないほど慌ただしく息子の手を握り、遠くへと走り出した。思いもよらない救世主に少年はしばらく固まったままだった。エドワードはそんな少年の顔を一目見ようと顔を覗き込むと、その少年の両目は緑色で染まっていた。
「え!」
エドワードはつい声を出してしまうと、少年は正気を取り戻し
「…ありがとう」
と呟いた。
「いやいや、いいんだ。こんな世の中になってしまっているのは僕ら政府の責任なのだから。君は自信をもって生きてくれよ。少年」
ハリソンはそう笑顔を残すと、エドワードの肩を叩き背中を向けて歩き出した。エドワードは小さくお辞儀をして、ハリソンの元へ戻ろうとすると背中から何やら声が聞えてきた。
「君名前は?」
と。エドワードは咄嗟に
「エドワード…です。君は?」
と返すと、少年は小さく答えてくれた。
「ラス・バリトン。」
と…


  To be continued…       【第5話・意地悪な】



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