見出し画像

鉛温泉(岩手県花巻市)へ行ったあとは 宮沢賢治を訪ねる

岩手県花巻市にある鉛温泉へ行ってきた。

その帰り、どうしても立ち寄りたいところがあった。それは「宮沢賢治記念館」
今回はその賢治先生の話。


小学生の頃、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」を読んだ衝撃はいまだ忘れられない。
物語の中に迷い込んでしまう美しい景色の描写、独特のオノマトペ、そしてなんとも言えない心のざわつき感…そこから、わたしの宮沢賢治好きははじまった。

初版復刻版を集めるのが好き。
装丁が美しすぎる。

岩手県花巻に行くことが決まってから、どうしても賢治先生が見た景色を見たかった。どうしてもどうしても賢治先生の頭ん中をのぞいて見たかった。
ふふふ。すごくすごく楽しみだなー。

宮沢賢治記念館

記念館へは新花巻駅から向かう。
歩いてでも行けるが、山の上にあるからタクシーで行くのが楽よーと地元の方に言われたのでタクシーで。

到着。
タクシーで5分程。
「よだかの星」碑
「夜だかが思ひ切って飛ぶときは、
そらがまるで二つに切れたやうに
思はれます。」という一文を
あらわしているかのよう。

記念館は宮沢賢治の心象世界や作品世界を5分野に分類し、作品に至る創作過程などを展示している。
この展示はまさに宮沢賢治の頭ん中を探っていくもの。非常に興味深かったし、知識の豊富さにただただ驚くばかりだった。

科学、芸術、宇宙、宗教、農
に分かれている。
どの分野でも長けていることに
ただただ驚く。
子どもの頃この絵を見たときは
めちゃくちゃこわかったなー。
賢治先生はいくつか絵を描いているが、
このミミズクのラフなタッチが好き。
生前愛用したチェロ。
f字孔から「1926.K.M」と記入が見られる。
ここから「セロ弾きのゴーシュ」が
生まれたかと思うとぐっとくる。
「銀河鉄道の夜」自筆原稿(複製)
野口聡一宇宙飛行士と共にスペースシャトル
「ディスカバリー」に搭乗し、国際宇宙
ステーション(ISS)に滞在した原稿。
約13日にわたり銀河に近い場所を
旅してきたという。
まさに賢治先生と宇宙がつながった瞬間。


宮沢賢治作品は正直難しい。
「銀河鉄道の夜」は童話といわれているが、どれくらいの子どもたちがこの内容を理解しているのだろうかといつも思っていた。
大人になって多くのことを学び感じるようになってから、はじめて情景のつながりや意味がわかり、そしてこれは天文学的な宇宙をあらわしつつも哲学的な宇宙もあらわしていたんだなーと気付く。

読者モデル時代から大ファンの
清川あさみさんが刺繍による絵を描いている
絵本「銀河鉄道の夜」

「銀河鉄道の夜」を読んでから今まで賢治先生とともに考えている言葉がある。
たびたび物語にでてくる「ほんとうの幸い」

ジョバンニは聞いている。
「ほんとうのさいわいは一体何だろう」と。

カムパネルラが「わからない」と言ったように、「ほんとうの幸い」なんて死ぬまでわからないだろうし死んでもわからないと思う。見つけるためには迷い悩み続けることになるだろうから、幸いを見つけるために苦しさをともなうなんてただただつらいことだ。

物語ではそのつらいこと悲しいことは
おぼしめし
と書かれている。

だけども、それを見つけるために考え行動をしていかないと、なにかが壊れるような気がする。それは自分自身だったり、まわりの世界だったり。
だからわたしはこの言葉をいつも問い続けながら行動をしてく。そう「ミンナニデクノボートヨバレテ」もだ。

求道すでに道である


さすがに頭をつかうとおなかが空く。
さてお昼ごはんにしましょうか。

Wildcat House山猫軒

宮沢賢治作品「注文の多い料理店」をイメージしたレストラン「Wildcat House山猫軒」
ここも楽しみにしていたよー。

遠慮しなくてもいいってよ。
肥った方や若い方は大歓迎だって。

店内には物語同様あちこちに注文が書かれています。

物語と違うのはちゃんと注文して食事ができること。

すヰとん
当軒特製みそ焼きおにぎり
味噌焦げ具合が完璧で、
むちゃくちゃうまい‼︎

化け猫に食べられず、無事食事ができ、無事レストランを出ることができました。よかったねー。

さて、宮沢賢治記念館や山猫軒は胡四王山(こしおうざん)の頂にあるため、ここから山をおりる。

367段の階段を降りていくよ。
のぼりはちょっと大変かもね。

漫画「ざつ旅」3巻でもこの場所が描かれている。

再び登場。
「ざつ旅」3巻  石坂ケンタ

宮沢賢治賢治童話村

山をおりると宮沢賢治童話村が広がる。
賢治先生の童話の世界をビジュアルと音響で体験できるアミューズメント施設になっている。

賢治の学校

ここは賢治先生のように空想の世界に入り込むための施設。賢治先生の世界を5つのテーマゾーンで表現されている。

ファンタジックホール
代表的な童話作品に合わせて、
賢治の椅子が置かれている。
宇宙の部屋
3枚の鏡で構成された巨大な万華鏡空間。
星が流れ落ちたり、
星の瞬く音が聞こえたり…
まさに宇宙空間!
天空の部屋
イーハトーブ(宮沢賢治による造語。
賢治先生の心の中で描く理想郷を指す言葉)の
風や雲を感じられる空間。
大地の部屋
イーハトーブに生きる昆虫や草木を
巨大なオブジェであらわしている空間。
ここを歩くと小人になったみたい‼︎
水の部屋
青い水のゆらめきがまさに
宮沢賢治作品「やまなし」の世界。

外に出ると、広場やログハウスの展示施設が広がる。

このログハウスの展示施設が
賢治の教室

ここは賢治先生の童話に登場する植物・動物・星・鳥・石について学べる施設。

あーーー。
本当に本当に楽しかったーーー。
すべてを知ることは到底できないけれど、ちょっとだけでも賢治先生に近付けたのは本当によかった。

「雨ニモマケズ」複製手帳

宮沢賢治の詩「雨ニモマケズ」は、没後に発見された手帳に書かれていたメモ書きである。亡くなる約2年前の1931年11月に病床で鉛筆書きされたという。
その手帳の複製をお土産で購入した。

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾(よく)ハナク
決シテ瞋(いか)ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ影ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

青空文庫「雨ニモマケズ」より

寄り添うことは自己満足の行動だって言われるかもしれない。
けれども、誰かが笑っていたり喜んでいたり、涙を流したり怒っていたらそばで一緒に笑ったり喜んだり、涙を流したり慰めたりしていたい。賢治先生みたいにまっすぐな心をもった人間じゃないけれど、この手帳を胸にまっすぐに生きていきたいな。
また賢治先生に会いに来よう。そのときは少しでも誰かの希望になれていますように。

この記事が参加している募集

旅のフォトアルバム

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?