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【読書】マーケティングの力「USJの劇的変革をもたらした一つの考え方」

マーケティング力

こんにちは、知識の百貨店です。今日は、日本を代表するマーケティングの専門家、森岡毅氏がその才能を最大限に発揮して、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を劇的に変えた考え方について解説します。

森岡氏の著書「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」の要約抜粋になります。

ビジネスで成功を収めるためには、欠かすことのできない要素があります。それは何だと思いますか?運や才能かと思われるかもしれませんが、答えは違います。才能は大切ですが、それだけでは人々の心をつかみ、商品やサービスを売り出すことは難しいのです。では、その欠かせない要素とは何でしょうか。

答えは、「マーケティング」です。マーケティングとは、一言で説明するなら、商品やサービスが売れる仕組みを作ることなのです。才能があっても、どんなに魅力的なアイドルがいても、マーケティングができなければ、見つけてもらうことすら困難になります。全ては、マーケティングの力が働いているのです。

例えば、YouTubeの動画や、お菓子、そしてAppleの新商品など、我々が日常的に目にしたり、手に取っているものも、全てはマーケティングの力を駆使して人々の目に触れるようになっているのです。

さて、森岡氏は、そのマーケティングの力を用いて、低迷していたUSJの業績をV字回復させた人物なのですが、彼が用いたマーケティングの戦略は本当に驚くべきものでした。それがどれほど強力なツールであるかを解説していきます。

この記事を読むことで、皆さんもマーケティングの真髄について理解し、様々な仕事やプロジェクトに活かすことができるでしょう。

USJの蘇生とアイデアのセンターピン

USJの驚くべきV字回復の物語、その中心にあるのは、アイデアの"センターピン"という戦略です。それは、即ち、最も重要な改善点を見つけるということなのです。

USJがオープンしてから数年間は絶好調でしたが、2004年以降、来場者数が伸び悩み始めました。そこでUSJにマーケティングの責任者として入社した森岡氏がまず行ったのは、映画だけにこだわるのを止め、アニメやゲームなど多様なエンターテイメント要素を取り入れることでした。

USJはもともと映画専門のテーマパークでしたが、今ではエヴァンゲリオン、進撃の巨人、バイオハザード、モンスターハンター、マリオなど、様々なアニメやゲーム、そして芸能人とのコラボレーションを展開しています。この映画専門からの転換が、USJの驚くべきV字回復を実現させたのです。

しかし、なぜUSJはそもそも映画にこだわり続けていたのでしょうか?

それは、競争相手である東京ディズニーランドを意識した結果でした。映画に特化したテーマパークとしてディズニーランドと差別化を図ろうとしたのです。

しかし、USJとディズニーランドは地理的に500km(本書の中では3万円(交通費)の川が流れてると表現されています)も離れています。関東の人々はディズニーランドに、関西の人々はUSJに行くという地域性があるにも関わらず、USJは映画に特化することで、関西の映画好きの大人をターゲットに限定してしまっていました。

そこで森岡氏はUSJを映画専門店から、最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップへと変え、大人から子供まで幅広い客層に訴えるテーマパークに生まれ変わらせたのです。これがマーケティングでの最初の一歩、問題解決の"センターピン"の見つけ方です。もし映画に特化したままだったら、USJはとっくに閉鎖されていたかもしれません。

次に森岡氏が取り組んだのは、全ての活動を徹底的に「お客様目線」で見直すことでした。USJが映画からアニメやゲームなどの多様なエンタメに移行できたのも、お客様目線に立った結果なのです。

一見すると「お客様目線」は商売の基本で、当然のことのように思えます。しかし、それは意外と難しく、確固たる意識を持って行わなければ実現しないものです。

では次に「お客様目線」について詳しく見ていくことにしましょう。

お客様に満足してもらうための戦略とマーケティング

一般的に、製品やサービスを提供する全ての企業や個人の目標は、お客様が喜ぶものを作り出すことです。しかし、その実行はなかなか難しい、なぜでしょうか?

それは、私たちが想定しているお客様の喜びと、実際のお客様の反応が必ずしも一致しないからです。

例えば、YouTuberは視聴者を喜ばせようと思いながら動画をアップロードしますが、予想外の反応が返ってきて炎上してしまうことがあります。また、ミュージシャンも自身の音楽がますますマニアックになると、初期のシンプルな曲の方が良かったとの意見を受けることがあるでしょう。これは、クリエイター自身が普通のものに飽きてしまい、新たな挑戦を試みるためにより深い領域へと進んでしまうからです。

この点で、USJはお客様目線に立つことに重きを置きました。具体的には、お客様からの意見をもとに、クリエイターが好きなものを作るのではなく、お客様が好きなものを作るという原則を徹底しました。そのために、モンスターハンターやドラゴンクエストを導入する際には、ゲームファンの心理を理解するために森岡氏は何百時間もこれらのゲームをプレイしたそうです。これは、クリエイターが一度消費者の目線に合わせて、消費者の心理を体験することの重要性が垣間見えるエピソードです。

次に、マーケティングの視点から重要なのは、視聴者の頭の中に良いイメージを植え付けること、いわゆるブランディングです。自社の製品やブランドを知ってもらい、知ってもらった商品やブランドに対して良いイメージを持ってもらうことでリピーターになってもらいやすくなります。

例えば、Appleに対して人々が持つイメージは「革新的」「使いやすい」「かっこいい」などでしょう。ベンツに対するイメージは「かっこいい」「高級」「お金持ち」などとなります。ブランド名を聞いたときに頭に良いイメージを浮かべられるようにすること、それこそがマーケティング(ブランディング)の真髄なのです、言葉で表現するのは簡単ですが、その実現には膨大な時間と労力が必要です。それでも、お客様の喜びを追求し続けることが、最終的な成功につながることを忘れてはいけません。

魅力的なイメージの構築とその超越

次に理解すべきは、消費者がブランドや場所、製品に対して抱く"イメージ"の力です。消費者が本当に喜ぶものを最初からしっかりと作り、イメージを形成し、それを超越することが成功への鍵です。

USJはもともと、ハリウッド映画専門のテーマパークです。それは大人だけが楽しめるような、もっと言えば30代以上の映画好きが訪れる少々限定的な場所というイメージがありませんか?

しかし、ある時点で、そのイメージが一新され、「多種多様な楽しいエンターテイメントが集まった場所」という新しいイメージが浮かび上がりました。ここでのポイントは、"誰でも楽しめる"という部分です。この新たなイメージは、それ以前のものよりもずっと魅力的で、幅広い層に受け入れやすくなります。

なぜなら、我々消費者は、具体的な良いイメージを掴むことで、選択をしやすくなるからです。しかし、単に魅力的なイメージを形成するだけでは足りません。

次のステップは、「想像を超えた価値」を提供し、口コミを生み出すことです。私たちが何度も利用したくなったり、他の人にすすめたくなったりするのは、必ずと言っていいほど、私たちの期待を超えたときです。これは食事であったり、テーマパークであったり、YouTubeの動画であったり、いろいろな形で体験できます。

例えば、あなたがとても美味しい焼肉屋を見つけたとき、あなたの友人、家族にその味を絶対に試してもらいたいと思いませんか?これがまさに口コミの力です。魅力的なイメージを持ってもらい、それからその期待を超えて満足させることができれば、顧客は間違いなくリピートしてくれます。

しかし、その逆に、顧客の期待を下回ってしまった場合、そのお店やコンテンツには否応なく悪いイメージが付いてしまいます。そして、その場所を再訪することはなくなるでしょう。

だからこそ、初めに述べたように、お客様が本当に喜ぶものを最初からしっかりと作っておくことが必要なのです。そして、忘れてはならないことは、お客様は決して騙されない、そしてごまかされないということです。常に透明性と品質を保つことが、ビジネスにおける最良の戦略であると断言します。

顧客満足度がビジネス成功の鍵

顧客満足度は、どのビジネスにおいても極めて重要な要素と言えます。負の体験を持った顧客は二度と戻ってこないばかりか、悪口を広めてしまう可能性があるからです。これを避けるためには、顧客が何を求めているのかをしっかりと把握し、それを提供することが肝心となります。

想像してみてください。顧客の期待を僅か1%でも超える体験が提供できたら、その顧客はきっと再度訪れてくれると思いませんか?

この理念を具現化した一つの例が、USJが取り組んだハロウィンイベントとハリーポッターのアトラクションです。

これらは当然、ただ偶然に生まれたものではありません。USJは、より良いエンターテイメントを提供するために、大量の情報収集と分析に取り組んできました。

例えば、USJが毎年行っているハロウィンイベント。あのリアルに再現されたゾンビたちは、ただの思いつきで生まれたわけではなく、ここにはUSJの深い顧客理解と詳細なデータ分析がありました。その結果、彼らは若い世代が何を求めているのかを的確に把握し、その期待を満たすイベントを創り上げていったのです。

その結果、顧客はストレス解消の場としてUSJを訪れ、その興奮とスリルを満喫することができました。毎年のハロウィンイベントは、まるで「ウォーキング・デッド」の世界に迷い込んだかのようなリアルなゾンビによるパフォーマンスが展開されます。そして、そのイベントは若者にとって最高のエンタメ体験となり、2015年10月には、なんと東京ディズニーランドを超える175万人の集客を達成しました。

資源の集中 「不要なものを捨て、価値を創造する」

少し資源(リソース)の集中について話をしようと思います。自身の有する資源を、重要な一点に集中することの重要性を考えていきましょう。

ここでの資源とは何でしょうか?それはお金、人材、時間などを指します。具体的な事例を通して、その考え方を探ってみましょう。そのために、私たちがよく知る企業、Appleの事例を挙げたいと思います。皆さんもAppleの製品を好きな人は多いのではないでしょうか?

1997年、財政的に苦境に立たされていたAppleにスティーブ・ジョブズが復帰しました。彼がまず行ったのは、企業内の無駄を徹底的に切り捨てることでした。プリンターやモニターの開発を止め、不要な製品ラインを削減し、さらにはリストラまで行いました。これにより、彼は企業内の資源をパソコンとOSの開発に集中しました。そして、その結果、iMac、iPod、iPhoneといった大ヒット商品を世に送り出すことができたのです。

この事例から学ぶべきことは、資源は常に限られているという事実です。それゆえ、価値を生むためには、重要なことに集中し、他の二の次なことは捨てるべきだということです。

では、USJでの事例を見てみましょう。USJは、当時、投資に使える資金は限られてました、あれもこれもと試す余裕がなかったのです。森岡氏はハリーポッターのアトラクション一点に450億円を投じる決断をするのです。結果として、そのハリーポッターのアトラクションは大成功を収め、USJのV字回復に大いに貢献しました。

これらの事例は、企業経営だけでなく、日々の仕事や試験勉強など、私たちの生活全般に適応できます。何が一番大切なのかを理解し、それにもてるリソースの全てを注ぐ。そして、それ以外の余計なものは捨てる。これが、最良の結果を生むための一つの方法です。

差異を最大限に活用する

USJにできて、ディズニーランドにできないことは何か。それは、ゲームや漫画とのコラボレーションです。一見、思いつきに思えるが、なるほどと思わせる筋道があります。

ディズニーランドが『進撃の巨人』や『モンスターハンター』、あるいは『バイオハザード』といった作品とコラボレーションするとは思えません。なぜなら、そのようなコラボレーションはディズニーランドのブランドイメージを揺るがす可能性があるからです。ディズニーランドのキャッチフレーズは、「夢と魔法の王国」。その王国に進撃の巨人やゾンビが登場するとは想像できませんよね?世界観が一気に崩れてしまいます。

だからこそ、森岡氏はこの差異を巧妙に活用し、相手と自分の違いを有利に活用して多くの顧客をUSJに呼び込むことに成功したのです。

最終的に、価値を向上させれば価格を上げることができる。ライバルとの差異化は、その価値を向上させる一つの手法で、USJが独自のコラボレーションを通じて、自分たちのブランド価値を高めることで、その差異化は大きな結果を生み出しました。

チケット価格と価値に関するマーケティング

知っていましたか? USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の初期のチケット価格は5,500円でしたが、現在は税込みで8,600円に上がっています。驚くほどの価格上昇ですよね、しかし、この価格改訂は、実は森岡氏が担当したものだったのです。

値上げにはネガティブなイメージが付きまといますが、ではなぜこのような決定を下す必要があったのでしょうか? 答えはシンプルです、お客様がテーマパークを訪れるかどうかは、チケットの価格ではなく、その体験が「楽しいかどうか」によると森岡氏は確信していたからです。

よくある誤解として、「人々が来ないから価格を下げよう」「売れないから価格を下げよう」などと考え、顧客のために限界まで価格を下げるという方法をとることがあります。確かに、価格を下げるのは難しくないし、一見すると顧客にとっては嬉しいことのように見えるかもしれません。しかし、それは短期的な解決策に過ぎず、長期的には利益率を圧迫し、サービスの質を下げ、新しい商品やサービス、テーマパークで言えばアトラクションの開発が難しくなるという悪循環を引き起こします。更に、従業員の賃金の上昇も阻害し、結果的には日本の経済全体に影響を及ぼします。

マーケティングの本質は、お金を払う価値があるということをお客様に伝えることです。USJは、実際にチケット価格を3000円以上あげたにも関わらず、訪問者の数を増やすことに成功しました。その理由は、USJが提供する価値が3,000円の価格上昇を上回っていたからです。例えば、ハリーポッターのアトラクションに乗る体験は、多少高くてもその価値があるとお客様は感じるでしょう。逆に、いくら安くても楽しくないテーマパークには誰も訪れません。

値下げ競争に走るのは簡単です。しかし、マーケティングはただ売ること以上に、売れる仕組みを作り出す芸術でもあります。それは、視聴者の心に良いイメージを植え付ける広告を作成し、素晴らしい商品やサービスを提供して口コミを生むことで、積極的に情報収集を行い、持っている資源を最大限に活用し、ライバルとの差異を上手く活用することにより達成されます。

そして、価格を上げることで、提供する価値をさらに高めることが可能になるのです。

日本は技術力が高い国として知られていますが、これまでマーケティングの重要性を見落としてきました。どんなに良質な製品を作れてもその価値を多くの人に知ってもらえなければ無いのと同じです、逆にそこそこの品質でも多くの人が使ってくれたらそれは素晴らしい商品と認識されるのです。ですから、我々は価値を伝え、その価値に見合う価格を設定することで、顧客からの支持を獲得しなければならないのです。

最後に

最後にスマートフォンの話しをしてまとめたいと思います。スマートフォンの選択においては、性能が最優先事項となることが多いでしょう。しかし、ある事実を皆さんはご存知でしょうか。それは、iPhoneが厳密に見れば最高の性能を持つスマートフォンではない、という事実です。さらに驚くべきことに、もっと低価格で優れた性能を備えたスマートフォンが数多く市場に出回っているということ。

にもかかわらず、なぜiPhoneがこれほどまでに売れているのでしょうか。その答えは、マーケティングにあります。

実は、製品が売れるためには、その性能や技術力以上に重要な要素があるのです。それは、まさにマーケティング。その製品をどのように顧客に紹介し、どのように魅力を伝えるか。それが売上げを左右する、重要な要素となるのです。

そして、この考え方はiPhoneに限った話ではありません。この世の全てのビジネスにおいて、マーケティングの重要性は変わらないのです。

それでは、この辺で今日の記事を終えることにしましょう。しかし、学びの旅はここで終わりではありません。さあ、次の探求のために旅に出ましょう。


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