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ひだまりの唄

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約十年前にラノベ風に作った学園青春物語です。貴方の暇のお相手に。
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2022年8月の記事一覧

ひだまりの唄 1

ひだまりの唄 1

四月九日

『アーッ アーッ アーッ』

窓を見たその光景が、何時もよりも高くから眺めている事にも気がつかない程、ボーッとしていた。

『何、ボーッと外眺めてんだよ』

こいつは横室岸弥。日ノ出学園の二年生で、俺の同級生。幼稚園からのくされ縁で、その頃から玩具のギターを弄って遊んでいた。

そうして気がつけば、中学、高校といつも一緒だ。

だが、いつも一緒にいた俺と違うモノが岸弥にはあった。それ

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ひだまりの唄 2

ひだまりの唄 2

四月二十八日

それから暫く経ち、東のしたけを感じる頃、俺とYは、それぞれギターバッグを肩に背負い、学校へと向かっていた。

その時の会話で『始まっちゃえば、あっと言う間だよなぁ~』なんて、Yが言うのも無理もなく、始業してから二週間が経っていた。

『しっかし、何時からかマリーはその髪型だよなぁ…。その髪型、いつかやめるの?』

『うるせぇな。Yだってそのツンツンとした髪型、変わってないだろ。…

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ひだまりの唄 3

ひだまりの唄 3

五月二日

待ちに待ったゴールデンウィーク。遮光カーテンから日射しが差しこみ、俺の顔を直接照らした。その眩しさに、俺は目を覚ました。

学校が休みであるほど、ガバッと勢いよく身体を起こせる。早く起きれた。

しかし、そう思っていたのだが、目覚まし時計を手に取ると、既に九時を回っていた。

『…寝すぎた…』

そう思い、くしゃくしゃに乱れた髪を整えに階段を下りた。

『麻利央?ご飯出来てるわよ?食べ

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ひだまりの唄 4

ひだまりの唄 4

五月八日

ゴールデンウィークもいつの間にか終わってしまった。そんな休み明けの学校初日の朝を迎えるが、中々身体を起こすことが出来ない。所謂五月病だ。そう自覚をした俺は、無理矢理にも身体を起こして、髪をセットし、朝食を済ませて、鞄を玄関まで持っていき、靴紐をきつく縛った。

『いってきまぁす』の声と同時に、扉の取手に手を掛け、外に出た。

暖かい日差しと、涼しい風が折り合い、心地がよく、一つ思いき

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ひだまりの唄 5

ひだまりの唄 5

 五月二十一日



それから二週間が経った。学校に着いた俺は、自分の机の上に鞄を置き、窓を眺めた。

枝葉が小さく茶色が目立っていたその窓の向こうは、今日は青々としていて、風に乗って左右に踊っている。

一日経ったのにも関わらず、まだ高揚が沈まっていないのに、この時やっと気が付いた。

『マリー!ギター置きに行こうぜ!』と、Yは俺の肩を一つ叩いて手招きした。

俺はそれに頷いて教室を出ていった

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