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ひとつ、質問。【超短編小説】

魔法は、ありとあらゆる所に在る。
魔法は、ありとあらゆる人に宿る。
魔法が単なる想像でしかなく、不存のものであるとされているのは、"夢"を見ることのない者、諦めた者、捨てた者が多いからだ。
よく目を凝らして見れば、それは足元にさえ転がっている。よく耳を澄ましてみれば、それは風の音にさえ混じっている。
「不思議に思ったことはないかな。電車の中にいる、何の本だかわからないものを読んでいる人。町中で見かける、瞬きの間にどこかへ歩き去ってしまった人。ふとした時に感じる、背後を通り過ぎる気配。彼らは、信じない者から遠ざかった、魔法と手を取り合って、世界中で魔法と共に生きている」
科学の進歩した現代において、魔法と区別のつかない技術は数多い。だからこそ、余計に魔法などというものは子どもの空想扱いを受ける。だが、確かに存在している。
何にしてもそうだが、見ようとしない者には、何も見えない。人を選ぶのだ。心から必要としていなければ、自分の想像力を信じていなければ、それは目の端に追いやられて忘れられる。
「信用なんだ。魔法なんてものは、それを信じていればいつだって使える」
手の内に花を咲かせるなんて、あまりにも簡単すぎる。その気になれば、鳥になって大空を飛ぶことも、魚になって大海を泳ぐことも、足の速い獣になって草原を走ることも、そう、不可能ではないのだから。
難しいのは、それを信じることだけだ。

「どうだろう。覚めない夢に飛び込む勇気と子供心は、まだ君に残っているかい?」

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