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【映画感想】 『怨泊 ONPAKU』〜日本怖い!日本キモい!訪日した外国人が体験する厭ホラー

『怨泊 ONPAKU』監督 藤井秀剛
新宿武蔵野館で2024年7月に観賞


外国訪問映画が好き

 私の好きな種類の映画に「別の国の人が異国を訪れる映画」があります。洋画では、冒険映画やヨーロッパのバカンス映画などにも多いジャンルです。
 
 僕らの巨匠 黒沢清監督も、前田敦子がロシアに行く『Seventh Code』(2014)や、これまた前田敦子がウズベキスタンをウロウロする『旅のおわり世界のはじまり』(2019)。柴咲コウがフランスで復讐に手を貸すリメイク版『蛇の道』(2024)など複数の作品を撮っています。

途中で怪魚が出るホラーかと思ったら旅映画だった奴

 この記事で紹介する『怨泊』は、そのジャンルの中でも、日本人だからこそ楽しみやすい「外国人が日本に訪問する」タイプの映画です。 

 訪日映画の有名な作品のひとつに、アメリカの高校生が日本の高校に転校してヤンキー走り屋のドタバタに巻き込まれる『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(2006.ジャスティン・リン監督)があります。

 ヤクザ映画。学園モノ。渋谷や歌舞伎町のネオン。ゲームの首都高バトル。イニシャルD。みたいな日本要素を、ワイスピ的価値観で圧縮。

新海誠やHiGH&LOW以後の今になって観直すと「僕達が憧れたこういう日本」に仕上がっていてSF映画みたいな感動も覚える、外国人訪日映画の名作です。

 他にも、私の好きな訪日映画には、あの沈黙の男スティーブン・セガールが実際に新宿や浜離宮でロケ撮影をして日本ヤクザと戦うアクション映画(本当)『イントゥ・ザ・サン』(2005)や、呪怨を清水崇監督自身がハリウッドリメイクし、日本に住んだ白人が呪怨な目に合う『THE JUON/呪怨』(2005)などがあります(名作)

セガール、来日。(本当)

 いずれも、外国人が日本を訪れて実感する、文化の違いや戸惑い、不安などを描き、訪日映画ならではの魅力があります。

 『怨泊』は『THE JUON/呪怨』とも通じる所のある、日本に来た外国人が恐怖体験をするタイプの作品です。

 容赦無いおぞましさ!

冷やかしで観ると後悔するぞ…

因縁に狂気が宿る


 香港の女性CEOサラは日本に、開発計画に適した物件を探しに訪問します。サラは日本語が喋れませんが、通約兼スタッフ?の男がタクシーや宿を手配する役割。

 しかし、男の予約手違いで、ちゃんとしたホテルは予約が通っていない。サラは仕方なく、ボロボロすぎて日本人でも入りたくないイヤ〜な感じの民家に、まさかの違法民泊することになってしまいます…

 まだ序盤、その民家に入る前から謎の双子の幽霊?や虚無僧?など、和風の怪異がじゃんじゃん登場。ホラーファンを喜ばせてくれます。

幽霊か単なる不気味な子供か分からないが怖い

 ホラー映画における心霊は、本当に幽霊が襲ってきている場合と、人物の精神的不安が見せる心理描写や幻覚の場合があります。 

 サラは、異国での宿手配の不手際で既に大きな不安を感じているので、現れる怪異がガチ幽霊か不安感の表れのどちらなのかは、この段階では分かりません。 

その上、泊まる違法民泊の家は照明が暗すぎて、ほとんどお化け屋敷。せっかくの日本料理も薄暗い照明の下では気持ち悪い食べ物に見えます… 

さらに、宿の女将のおばあさんも他の宿泊客も、優しい人かと思いきや、まるでお化けみたいに不気味な瞬間があるのです… 

ちなみに怪異は民泊中も遠慮なくバンバン出ます。

不気味な女将

日本に来た外国人が、言葉の通じぬ異国のディスコミュニケーションと不気味さを感じながら、ガチの和風怪異に遭遇するという、これまでありそうで無かったホラー映画です。

ホラー映画好きとして「不気味で怖い純ホラー映画だ!やったー!」と喜んでいると、怪異とそれにまつわる事件はさらに予想もつかない方向に二転三転。日本人の持つ様々な差別意識が浮き出されていくような、厭な厭な終わらない地獄の展開が待っています…

幽霊も、幻覚も、呪いも、ただのおかしな人も襲ってくる恐怖の波状攻撃。

まるで『呪怨』と『悪魔のいけにえ』が共存。幽霊と狂人の見分けがハッキリとはつかない、おぞましいホラー映画です。

かなり強烈なので、ホラーが苦手な人には厳しいと思いますが、ホラー映画好きには観てほしい作品です。

そんな稀有な作品ですが、劇場公開からひと月が経過した8月21日現在、既にどの映画館でも上映していません… 。

全国の二番館やミニシアターのみなさま、夏の暑いうちに上映してみるのはいかがでしょうか? 『THE JUON/呪怨』と二本立てにするのも面白いと思います。

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